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約束のスピカ
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「あの、先生…」
「もうすぐ流星群だな」
「…うん」
現れた流山の姿はいつも以上にぼろぼろで、この接し方でいいのか分からない。
一先ず手当てが先だと救急箱を開けると、流山がすぐ近くに腰を下ろした。
「…先生、怒られなかった?」
「怒られてない。理不尽なことをおかしいっていうのが間違ってるなら、そんな世界が間違ってる」
酷い目に遭わされた流山が責められるという事態だけは避けたい。
職員室に入った瞬間校長からぶつくさ言われたが、何を話していたか全く覚えていない。
副校長が出張でいないのをいいことにでしゃばってきた教頭にも相手は良家の子供でどうのと言われたが、そんなことが重要だとは思えなかった。
「傷の手当ては終わった。…また作りすぎたから、取り敢えずこれでも食べてくれ」
ミニハンバーグにサラダ、ひじき…白米に海苔を添えて弁当箱に詰めたものを渡す。
それを見た途端、流山は目をきらきら輝かせた。
「すごい、美味しいそう…!」
「できるだけ残さず食べてもらえるとありがたい」
はしゃぎすぎたと思ったのか、流山はいつものように真顔になる。
「…本当にいいの?」
「ああ」
余り物で作ったものだが、これだけ喜んでもらえると嬉しい…なんて思うのは変だろうか。
妖だからか、俺は本来食事の摂取をほとんど必要としない。
それでも、流山と食べるご飯は特別美味しい気がしている。
「いただきます。…うん、美味しい」
ほっとしたように話す姿は、どこにでもいる少年だ。…体中にある傷以外は。
「七夕が近いから今夜はそれでいい?」
「それってどういうことだ?まあ、話してもらえるならなんでもいいけど」
「大切な人と引き裂かれた人の話だよ。七夕のモデルになったって言われてるんだ。
…ミケランっていう青年が水浴びをしているところに天女が降りてきて、その子に恋をしちゃったんだ。それで、帰らせないために羽衣を隠した。天女は羽衣がないと帰れない…」
やはり初めて聞く話ばかりで興味深い。
──やがてミケランと結婚し子どもが生まれて幸せに暮らしていたが、天井裏に隠された羽衣を子どもが見つけてしまう。
元の世界が恋しくなった天女は子どもを連れて天の国に帰ってしまった。
「不思議な話だな」
「この話には続きがあるんだけど、また明日でもいい?」
「俺はいつでも構わない」
流山はありがとうと小さく言った後、無垢な瞳を向けながら問いかけてきた。
「ねえ、先生。神様って人間を幸せにしてくれるのかな?」
「それは分からないな…。だが、今夜も星と月が綺麗だってことは分かる」
「そうだね。流星群も見られるといいな…」
だいぶ傷が痛むのか、時折腕を押さえる仕草を見せる。
「僕、そろそろ行くね」
「気をつけて帰れよ」
「ありがとう、先生」
流山はそのままふりかえることなく教室から去っていく。
もし神なんてものがいるなら、今すぐ流山を救ってほしい。
…必死にもがいた奴が報われる瞬間があったっていいだろ。
そんなことを考えてしまっているあたり、俺は人間に関わりすぎているのかもしれない。
「もうすぐ流星群だな」
「…うん」
現れた流山の姿はいつも以上にぼろぼろで、この接し方でいいのか分からない。
一先ず手当てが先だと救急箱を開けると、流山がすぐ近くに腰を下ろした。
「…先生、怒られなかった?」
「怒られてない。理不尽なことをおかしいっていうのが間違ってるなら、そんな世界が間違ってる」
酷い目に遭わされた流山が責められるという事態だけは避けたい。
職員室に入った瞬間校長からぶつくさ言われたが、何を話していたか全く覚えていない。
副校長が出張でいないのをいいことにでしゃばってきた教頭にも相手は良家の子供でどうのと言われたが、そんなことが重要だとは思えなかった。
「傷の手当ては終わった。…また作りすぎたから、取り敢えずこれでも食べてくれ」
ミニハンバーグにサラダ、ひじき…白米に海苔を添えて弁当箱に詰めたものを渡す。
それを見た途端、流山は目をきらきら輝かせた。
「すごい、美味しいそう…!」
「できるだけ残さず食べてもらえるとありがたい」
はしゃぎすぎたと思ったのか、流山はいつものように真顔になる。
「…本当にいいの?」
「ああ」
余り物で作ったものだが、これだけ喜んでもらえると嬉しい…なんて思うのは変だろうか。
妖だからか、俺は本来食事の摂取をほとんど必要としない。
それでも、流山と食べるご飯は特別美味しい気がしている。
「いただきます。…うん、美味しい」
ほっとしたように話す姿は、どこにでもいる少年だ。…体中にある傷以外は。
「七夕が近いから今夜はそれでいい?」
「それってどういうことだ?まあ、話してもらえるならなんでもいいけど」
「大切な人と引き裂かれた人の話だよ。七夕のモデルになったって言われてるんだ。
…ミケランっていう青年が水浴びをしているところに天女が降りてきて、その子に恋をしちゃったんだ。それで、帰らせないために羽衣を隠した。天女は羽衣がないと帰れない…」
やはり初めて聞く話ばかりで興味深い。
──やがてミケランと結婚し子どもが生まれて幸せに暮らしていたが、天井裏に隠された羽衣を子どもが見つけてしまう。
元の世界が恋しくなった天女は子どもを連れて天の国に帰ってしまった。
「不思議な話だな」
「この話には続きがあるんだけど、また明日でもいい?」
「俺はいつでも構わない」
流山はありがとうと小さく言った後、無垢な瞳を向けながら問いかけてきた。
「ねえ、先生。神様って人間を幸せにしてくれるのかな?」
「それは分からないな…。だが、今夜も星と月が綺麗だってことは分かる」
「そうだね。流星群も見られるといいな…」
だいぶ傷が痛むのか、時折腕を押さえる仕草を見せる。
「僕、そろそろ行くね」
「気をつけて帰れよ」
「ありがとう、先生」
流山はそのままふりかえることなく教室から去っていく。
もし神なんてものがいるなら、今すぐ流山を救ってほしい。
…必死にもがいた奴が報われる瞬間があったっていいだろ。
そんなことを考えてしまっているあたり、俺は人間に関わりすぎているのかもしれない。
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