君と30日のまた明日

黒蝶

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16日目

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最近、死ぬことについてあまり深く考えていない…今更ながらそんなことに気づいた。
相変わらずヘッドホンで世界と遮断して過ごす日々ではあるものの、僕の中で何かが変わっているのは違いない。
「穂村、少しいいか?」
「…はい」
先日階段から突き落とされたことだろうか。面倒だから行くしかない。
「おまえ、最近特に怪我が多いけど何かあったのか?」
「何もありません。失礼します」
「待て、まだ話は…」
そんな言葉に奇跡を信じて縋り、絶望するのはもううんざりだ。
だったらこのまま、独りでいた方がずっと気楽でいられる。
教室でミスをしたことに気づいた僕はそのまま風に身を任せ走り抜けた。
「……」
その場所には、僕にとって1番おこってほしくなかったことがおこっていた。
無意識のうちに鞄に荷物を詰めこみ、そのまま教室を出る。
走って走って、ひたすら走り続けて…しとしとと雨が降る中、気づいたときには屋上のど真ん中に立っていた。
「あれ、奏多さん?」
「…こんな雨の日に傘もささずに立っていたら風邪をひく」
「さっき来たところだったんですけど、まさか降り出すとは思いませんでした。
それに、奏多さんに会えるとも思っていませんでした」
僕が俯くと、森川は何も訊かずにタオルを渡してくれた。
その表情はいつもどおりで、見ているだけで泣きそうになる。
「…ごめん。歌詞、もう書けないかもしれない」
「どういうことですか?」
「ノートが散り散りになってた。今、感情がぐちゃぐちゃで自分でもどういう状態なのか分からない」
あれだけ大切にしていたのに、書きながら机に出しっぱなしで職員室へ行ってしまった。
あそこには様々な想い出がつまっていたのに、全頁でないとはいえ心が抉られる。
「大切なものを壊されてしまうのは、本当に辛いですね…。たとえ奏多さんが書けなくても、私が書いてみせます。
私があなたに心を救われたように、私もあなたを救える言葉を紡いでみせます。だから…また歌を聴かせていただけませんか?」
森川はすごい。人を救うことができるし、恐らく周囲をよく見ている。
それに、今の僕の心は軽やかだ。
「ごめん。僕、もう少しだけ頑張ってみるよ。決して自信があるわけじゃないんだけど、森川が笑ってくれるならまだやれる」
「それでは楽しみにしていますね」
「…その前に病室に戻った方がいいよ。後でちゃんと行くから、それまでに色々済ませておいて」
「歌ってくれますか?」
「君が望んでくれるなら」
「ありがとうございます!」
学校にどんなことを言われるかなんてどうでもいい。
大人より今は目の前の彼女と過ごす時間の方が大切だ。
それから僕は雨に濡れた体を乾かしに近くの銭湯に向かう。
森川と一緒に歌詞を考えることを想像しただけで、心が羽のように軽やかだ。
彼女もそう感じてくれているだろうか。

【今日はお昼から奏多さんと曲を完成に近づけました。何があったか聞いた瞬間、いても立ってもいられなくなりました。ただ抱きしめられてよかったです。
彼のぬくもりを離したくないなんて、欲張りでしょうか。…今日もまた明日を言えて本当によかったです】
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