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27日目
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『届いた?』
「はい。ありがとうございます」
私が奏多さんにできそうなことはこれだけだ。
だから、先生にお願いして取り寄せてもらった。
『穂村とは仲良くやれてるか?』
「一昨日も同じことを言ってませんでしたか?」
画面の先生はそうだったかと苦笑いしていた。
奏多さんのことを本気で気にかけているような気がするから、冷たくあしらうこともできない。
「ごめんなさい。多分そろそろ奏多さんが来てくれる時間だと思うので…」
これで切りますね、と言おうとした。
ただ、私からその短い言葉は出てこない。
『森川?』
苦しい。息ができないし、とにかく胸のあたりが痛かった。
『病院に連絡する。もう少しだけ耐えてくれ』
どんどん意識が遠くなるなか、先生と看護師さんの声が聞こえる。
あともう少し生きていたかった。
「あ、れ…?」
目を開けると、手を握ったまま奏多さんがこちらを覗きこんでいる。
「…起きた?主治医の先生呼ぶね」
「すみません。迷惑をかけてしまいました」
「迷惑だなんて思ってない。今は痛くない?」
首を縦にふると、奏多さんは本当に安心している様子だった。
「それならいいんだ。そのまま横になってて」
それからどたばたと何人か看護師さんが入ってきて、悲しそうな顔で私を見つめた。
多分隠しているつもりなんだとは思うけど、誰ひとり…いや、奏多さん以外隠しきれていない。
「あの…もう少し、彼女と話していいですか?」
「勿論です。許可証もお持ちですし、私達に異論はありません」
「ありがとうございます」
「彩ちゃん、また後で来るね。具合が悪くなったらすぐ呼んで」
「分かりました」
どうしてみんなそんな顔をするんだろう。
私はまだ生きているのに、それじゃあまるで…。
本当は分かっている。ただ、今はそれを認めたくない。
「何か聞きたい歌はある?」
「奏多さんの好きなものでお願いします」
「それじゃあ…」
硝子のパレード終わらない きらきら空を舞い続け
君の心もきらきら 願いをこめた鶴の束
「その曲…」
「君が知りたがってたもの、この曲なんじゃないかって思ったんだ。…ねえ、森川」
「はい」
奏多さんは歌い終わった後、必死に作った笑顔を向けて手を握ってくれた。
「君のこと、救えるかな?」
「充分です。今も心がぱっと明るくなりましたし、奏多さんが話をしてくれるのがとても楽しいんです。
あなたがいたから生きられた…明日に光があると信じられるんです」
私の気持ちを沢山伝えたい。
奏多さんに迷惑をかけられないと思って言えなかった言葉を積み上げて、どうしても今すぐ伝えたかった。
「…奏多さん」
「どうかしたの?」
「また明日、会えますか?」
「勿論。明日は晴れるらしいから、屋上へ連れて行くよ」
「楽しみです」
それと同時に無慈悲なチャイムが鳴り響く。
ひとりきりになった部屋で、ただ咽び泣くことしかできない。
「…私は、死んだりしませんよ」
布団を握りしめる自分の手を見つめながら、そんな言葉を吐き出すのでせいいっぱいだった。
【今日病室に向かったら森川が倒れていた。先生が連絡したらしく、すぐに看護師さんたちも入ってきて…とにかく不安だ。
だが、今1番不安なのは森川なはずだ。だから僕にできることは笑っていることだけ。
…また明日、お茶でも買って会いに行こうと思う】
「はい。ありがとうございます」
私が奏多さんにできそうなことはこれだけだ。
だから、先生にお願いして取り寄せてもらった。
『穂村とは仲良くやれてるか?』
「一昨日も同じことを言ってませんでしたか?」
画面の先生はそうだったかと苦笑いしていた。
奏多さんのことを本気で気にかけているような気がするから、冷たくあしらうこともできない。
「ごめんなさい。多分そろそろ奏多さんが来てくれる時間だと思うので…」
これで切りますね、と言おうとした。
ただ、私からその短い言葉は出てこない。
『森川?』
苦しい。息ができないし、とにかく胸のあたりが痛かった。
『病院に連絡する。もう少しだけ耐えてくれ』
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あともう少し生きていたかった。
「あ、れ…?」
目を開けると、手を握ったまま奏多さんがこちらを覗きこんでいる。
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「すみません。迷惑をかけてしまいました」
「迷惑だなんて思ってない。今は痛くない?」
首を縦にふると、奏多さんは本当に安心している様子だった。
「それならいいんだ。そのまま横になってて」
それからどたばたと何人か看護師さんが入ってきて、悲しそうな顔で私を見つめた。
多分隠しているつもりなんだとは思うけど、誰ひとり…いや、奏多さん以外隠しきれていない。
「あの…もう少し、彼女と話していいですか?」
「勿論です。許可証もお持ちですし、私達に異論はありません」
「ありがとうございます」
「彩ちゃん、また後で来るね。具合が悪くなったらすぐ呼んで」
「分かりました」
どうしてみんなそんな顔をするんだろう。
私はまだ生きているのに、それじゃあまるで…。
本当は分かっている。ただ、今はそれを認めたくない。
「何か聞きたい歌はある?」
「奏多さんの好きなものでお願いします」
「それじゃあ…」
硝子のパレード終わらない きらきら空を舞い続け
君の心もきらきら 願いをこめた鶴の束
「その曲…」
「君が知りたがってたもの、この曲なんじゃないかって思ったんだ。…ねえ、森川」
「はい」
奏多さんは歌い終わった後、必死に作った笑顔を向けて手を握ってくれた。
「君のこと、救えるかな?」
「充分です。今も心がぱっと明るくなりましたし、奏多さんが話をしてくれるのがとても楽しいんです。
あなたがいたから生きられた…明日に光があると信じられるんです」
私の気持ちを沢山伝えたい。
奏多さんに迷惑をかけられないと思って言えなかった言葉を積み上げて、どうしても今すぐ伝えたかった。
「…奏多さん」
「どうかしたの?」
「また明日、会えますか?」
「勿論。明日は晴れるらしいから、屋上へ連れて行くよ」
「楽しみです」
それと同時に無慈悲なチャイムが鳴り響く。
ひとりきりになった部屋で、ただ咽び泣くことしかできない。
「…私は、死んだりしませんよ」
布団を握りしめる自分の手を見つめながら、そんな言葉を吐き出すのでせいいっぱいだった。
【今日病室に向かったら森川が倒れていた。先生が連絡したらしく、すぐに看護師さんたちも入ってきて…とにかく不安だ。
だが、今1番不安なのは森川なはずだ。だから僕にできることは笑っていることだけ。
…また明日、お茶でも買って会いに行こうと思う】
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