2 / 385
共通話
しおりを挟む
私はただ走っていた。
あの家から逃げるには、この方法しかない。
愛なんてものとは無縁の場所でほぼ監禁状態で育った私に頼れる人なんかいるはずもなく、とにかく隙を見て逃げ出すしかなかった。
「…神様なんていない」
しとしとと降っている雨粒を見つめながら、意識が遠退くのを感じる。
このまま死んでしまうなら、何の為に生まれてきたのだろう。
そんなことを考えている間にも、どんどん瞼が重くなっていく。
こんなことになってしまうのなら、最期に抱きしめてくれる人を見つけたかった。
ぼんやりと考えているうちに、そのまま目の前が黒で染まる。
*******
「あの、大丈夫ですか?救急車は...呼ばない方がいいか」
「アッキーに連絡してみる?」
「…そうですね、どうやら訳ありのようですので」
ふたりの男はある場所へとその女性を運ぶ。
その場所にはまた別の男性ふたりが待っていて、やれやれといった様子で見つめていた。
*******
「ん…」
目を開けると、そこには真っ白な天井と同じ色のカーテンがあった。
ここが天国というものなのだろうか。それとも地獄…?
人の気配がして、思わず身構えてしまう。
両手につけたままだった手袋を外して、思いきり念じてみる。
「お願い、蕀さんたち…」
私は『普通』ではない。
だからこそ誰からの愛情も受けられなかったのだろう。
蕀や蔦を上手く使いながら周りの状況を把握していく。
気配は全部で4人分、敵意が向けられているわけではない…。
他にも何かないか探ろうとすると、いつの間にか隣に人影ができていた。
音もたてずに一体どうやって近づいてきたのだろう。
不思議に思っていると、焦げ茶色の髪の男性に声をかけられた。
「あの、大丈夫ですか?」
「大丈夫です、けど…あなたが助けてくれたんですか?」
「正確に言えば、僕の友人が助けてくれました。あなたが倒れているのを放っておけなかったので」
ぞろぞろと残りの人たちもやってきて、順番に挨拶してくれる。
「そっちのが春人。君を見つけたのはそいつだよ」
「夏彦、いきなりでは相手が困ってしまいますよ」
ハルトさんが私を見つけてくれた人で、ナツヒコさんがムードメーカー…なのだろうか。
「俺は秋久。悪いな、夏彦は特にテンションが高いから…。多目に見てやってくれ」
「え、あ、はい…?」
「それから、そっちの無口な奴が冬真」
「…どうも」
アキヒサさんがお兄さんみたいな人で…トウマさんが、大人しい人。
初対面の相手に抱けるのはそれが限界だった。
「突然で悪いが…あんたに行く宛がないなら俺たちのうちの誰かの家で匿おう」
「いいん、ですか?」
「その代わり、何があってそんなに酷い怪我を負ったのかは話してもらえねえか?」
「それ、は…」
戸惑っていると、トウマさんが語りかけるように私に告げる。
「大丈夫だよ。僕たち『カルテット』はそんな簡単に人に話したりしないから」
『カルテット』とは一体何だろう。
4人だからという意味でそう呼ばれているのだろうか。
色々迷って話してもいいのかと迷っていたはずなのに、不思議と嘘を吐く気にもなれなかった。
暴力や暴言に疲れたこと、閉じこめられて育ったこと…そして、人にはあまり言えない力があることを大雑把に話す。
「それはまた随分とわけありだね…」
ナツヒコさんの呟きはもっともだ。
…誰かを不幸にしてしまうくらいなら、早くここから出てしまおう。
「すみません。迷惑なようならすぐ出ていきます。助けていただきありがとうございました」
拒絶されてしまうのが怖くて、一礼してそのまま外に出ようとする。
そのとき私の腕を掴んだのは『彼』だった。
あの家から逃げるには、この方法しかない。
愛なんてものとは無縁の場所でほぼ監禁状態で育った私に頼れる人なんかいるはずもなく、とにかく隙を見て逃げ出すしかなかった。
「…神様なんていない」
しとしとと降っている雨粒を見つめながら、意識が遠退くのを感じる。
このまま死んでしまうなら、何の為に生まれてきたのだろう。
そんなことを考えている間にも、どんどん瞼が重くなっていく。
こんなことになってしまうのなら、最期に抱きしめてくれる人を見つけたかった。
ぼんやりと考えているうちに、そのまま目の前が黒で染まる。
*******
「あの、大丈夫ですか?救急車は...呼ばない方がいいか」
「アッキーに連絡してみる?」
「…そうですね、どうやら訳ありのようですので」
ふたりの男はある場所へとその女性を運ぶ。
その場所にはまた別の男性ふたりが待っていて、やれやれといった様子で見つめていた。
*******
「ん…」
目を開けると、そこには真っ白な天井と同じ色のカーテンがあった。
ここが天国というものなのだろうか。それとも地獄…?
人の気配がして、思わず身構えてしまう。
両手につけたままだった手袋を外して、思いきり念じてみる。
「お願い、蕀さんたち…」
私は『普通』ではない。
だからこそ誰からの愛情も受けられなかったのだろう。
蕀や蔦を上手く使いながら周りの状況を把握していく。
気配は全部で4人分、敵意が向けられているわけではない…。
他にも何かないか探ろうとすると、いつの間にか隣に人影ができていた。
音もたてずに一体どうやって近づいてきたのだろう。
不思議に思っていると、焦げ茶色の髪の男性に声をかけられた。
「あの、大丈夫ですか?」
「大丈夫です、けど…あなたが助けてくれたんですか?」
「正確に言えば、僕の友人が助けてくれました。あなたが倒れているのを放っておけなかったので」
ぞろぞろと残りの人たちもやってきて、順番に挨拶してくれる。
「そっちのが春人。君を見つけたのはそいつだよ」
「夏彦、いきなりでは相手が困ってしまいますよ」
ハルトさんが私を見つけてくれた人で、ナツヒコさんがムードメーカー…なのだろうか。
「俺は秋久。悪いな、夏彦は特にテンションが高いから…。多目に見てやってくれ」
「え、あ、はい…?」
「それから、そっちの無口な奴が冬真」
「…どうも」
アキヒサさんがお兄さんみたいな人で…トウマさんが、大人しい人。
初対面の相手に抱けるのはそれが限界だった。
「突然で悪いが…あんたに行く宛がないなら俺たちのうちの誰かの家で匿おう」
「いいん、ですか?」
「その代わり、何があってそんなに酷い怪我を負ったのかは話してもらえねえか?」
「それ、は…」
戸惑っていると、トウマさんが語りかけるように私に告げる。
「大丈夫だよ。僕たち『カルテット』はそんな簡単に人に話したりしないから」
『カルテット』とは一体何だろう。
4人だからという意味でそう呼ばれているのだろうか。
色々迷って話してもいいのかと迷っていたはずなのに、不思議と嘘を吐く気にもなれなかった。
暴力や暴言に疲れたこと、閉じこめられて育ったこと…そして、人にはあまり言えない力があることを大雑把に話す。
「それはまた随分とわけありだね…」
ナツヒコさんの呟きはもっともだ。
…誰かを不幸にしてしまうくらいなら、早くここから出てしまおう。
「すみません。迷惑なようならすぐ出ていきます。助けていただきありがとうございました」
拒絶されてしまうのが怖くて、一礼してそのまま外に出ようとする。
そのとき私の腕を掴んだのは『彼』だった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる