124 / 385
夏彦ルート
第2話
しおりを挟む
次に目を開けたとき、部屋の外から何かを話している声が聞こえた。
「…え、届出てないの?本当に吃驚なんだけど、これから出される可能性も否定できないよね。
調べるの大変だったでしょ?ありがと、アッキー」
部屋から出てもいいのか、それとも聞いてはいけない話なのか。
迷った末、扉に手をかけた。
「あの、おはよう、ございます…」
「おはよう!ごめん、煩かった?」
「いえ、そうじゃなくて、」
早く目が覚めただけなんです…そう続けようとした瞬間、じっと顔を見つめられる。
「あの…?」
「よかった。月見ちゃんからしたら知らない場所だからどうなんだろうって思ってたけど、昨日よりも顔色よさそうだね。…ちゃんと眠れた?」
「は…うん」
「よろしい。朝御飯、こんなのでも大丈夫?」
「基本的に何でも食べられます。ありがとう、いただきます」
手掴みで口に入れようとすると、夏彦は慌てた様子で私を止めた。
「これはコーンフレークっていうすごく便利な食べ物なんだけど、食べるときはスプーンかフォークを使うんだよ」
「え、あ、ごめんなさい」
「気にしないで。因みに俺のおすすめの食べ方は、こうやって牛乳にひたひたにすることかな」
本当に恥ずかしい。
今までの生活が滲みこんでいるのか、何でも素手で食べようとしてしまう。
どんなふうに受け取られてしまっただろうか。「そっち座って一緒に食べよう!」
「うん。…いただきます」
今度こそ間違えないように気をつけながら一口食べてみる。
「美味しい…」
「気に入ってもらえたならよかった。珈琲と紅茶、どっちが好き?」
「おまかせします」
「了解。それじゃあ紅茶かな」
夏彦はどこか慣れた手つきでグラスに注ぎはじめる。
ぼんやりと見つめていると、彼はただ笑って持ってきてくれた。
「アイスティー、飲んだことある?」
「ううん。…初めて、です。見たことはあるし作ったこともあるけど、飲んだことは…」
私が飲んでいいものなんて水以外なかった。
あの人たちにやれと言われたらやるしかなくて、淹れ方だけは無駄に覚えている。
「そっか。それじゃあ、月見ちゃんの初めてのアイスティーは俺がもらったってことで!」
「え…?」
変だとかそんなのおかしいだとか、そういう言葉なら沢山かけられてきた。
でも、今回みたいに笑って声をかけてもらえたのは初めてかもしれない。
「俺が作った飲み物って美味しいかどうか分からないけど、それでも誰かの初めてになるのはすごく嬉しい」
「変だって言わないんですか?」
「え、今の話に変なところなんてあった?」
ずっと笑顔を向けてくれて、少しだけほっとしてしまう。
こみあげてくる何かを抑えながら一口飲んでみると、それがとてつもなく甘く感じた。
「…え、届出てないの?本当に吃驚なんだけど、これから出される可能性も否定できないよね。
調べるの大変だったでしょ?ありがと、アッキー」
部屋から出てもいいのか、それとも聞いてはいけない話なのか。
迷った末、扉に手をかけた。
「あの、おはよう、ございます…」
「おはよう!ごめん、煩かった?」
「いえ、そうじゃなくて、」
早く目が覚めただけなんです…そう続けようとした瞬間、じっと顔を見つめられる。
「あの…?」
「よかった。月見ちゃんからしたら知らない場所だからどうなんだろうって思ってたけど、昨日よりも顔色よさそうだね。…ちゃんと眠れた?」
「は…うん」
「よろしい。朝御飯、こんなのでも大丈夫?」
「基本的に何でも食べられます。ありがとう、いただきます」
手掴みで口に入れようとすると、夏彦は慌てた様子で私を止めた。
「これはコーンフレークっていうすごく便利な食べ物なんだけど、食べるときはスプーンかフォークを使うんだよ」
「え、あ、ごめんなさい」
「気にしないで。因みに俺のおすすめの食べ方は、こうやって牛乳にひたひたにすることかな」
本当に恥ずかしい。
今までの生活が滲みこんでいるのか、何でも素手で食べようとしてしまう。
どんなふうに受け取られてしまっただろうか。「そっち座って一緒に食べよう!」
「うん。…いただきます」
今度こそ間違えないように気をつけながら一口食べてみる。
「美味しい…」
「気に入ってもらえたならよかった。珈琲と紅茶、どっちが好き?」
「おまかせします」
「了解。それじゃあ紅茶かな」
夏彦はどこか慣れた手つきでグラスに注ぎはじめる。
ぼんやりと見つめていると、彼はただ笑って持ってきてくれた。
「アイスティー、飲んだことある?」
「ううん。…初めて、です。見たことはあるし作ったこともあるけど、飲んだことは…」
私が飲んでいいものなんて水以外なかった。
あの人たちにやれと言われたらやるしかなくて、淹れ方だけは無駄に覚えている。
「そっか。それじゃあ、月見ちゃんの初めてのアイスティーは俺がもらったってことで!」
「え…?」
変だとかそんなのおかしいだとか、そういう言葉なら沢山かけられてきた。
でも、今回みたいに笑って声をかけてもらえたのは初めてかもしれない。
「俺が作った飲み物って美味しいかどうか分からないけど、それでも誰かの初めてになるのはすごく嬉しい」
「変だって言わないんですか?」
「え、今の話に変なところなんてあった?」
ずっと笑顔を向けてくれて、少しだけほっとしてしまう。
こみあげてくる何かを抑えながら一口飲んでみると、それがとてつもなく甘く感じた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる