142 / 385
夏彦ルート
第18話
しおりを挟む
「月見ちゃん、こっちを手伝ってもらってもいい?」
「は、はい…」
この日はお店がお休みで、商品を並べ替える手伝いをしていた。
ソルトは別の部屋で大人しく遊んでいる…らしい。
「お疲れ様。一旦休憩にしようか」
「は、はい」
疲れているのは夏彦の方なはずなのに、冷たい飲み物とアイスクリームを持ってきてくれた。
「塩バニラ味だって。テレビでしか見たことなかったから、どんな味なのか気になって買っちゃった」
「たしかにそれは気になりますね…」
「でしょ?」
夏彦が一口食べるのを見てから、恐る恐る口に運ぶ。
しょっぱい味がすると思っていたそれはとても美味しくて、慎重に食べ進めていく。
「月見ちゃんも美味しいって思った?」
「…さっぱりしていて、すごく食べやすいです」
「だよね、俺も思った!もっと塩気が強いのかと思ったけどそうでもないし…どうやって作ったのかちょっと気になるかも」
ふたりで話していると、じっとこちらを見つめる視線を感じる。
この部屋には私と夏彦しかいないはずなのに、どうしてそんなものを察知してしまったのか。
そのとき、にゃんと鳴き声がした。
「ソルト…」
「え、ソルト!?もしかして、あんなちっちゃな隙間から出てきたの?
ちょっと身体能力を甘く見てたな…」
視線の正体はソルトだったようだ。
心の底からほっとしたと同時に、なんだか微笑ましく思えてくる。
「月見ちゃん。今の生活、楽しい?」
「今まで私が持っていなかったものを、全部経験しているような気分になります。多分、楽しいです」
楽しいとか嬉しいとか、とっくの昔に忘れかけていた感情だ。
これがそうだったのか少し疑問を感じるところもあるが、恐らくそういうものなのだろう。
「そう思ってもらえているなら光栄だな。ずっと辛い思いをしてきたんだから、これからもっと楽しい時間が増えていくはず。
これから俺も、その手伝いをしていくよ」
「…その先に、夏彦もいますか?」
「え?」
夏彦がいないのであれば意味がない。
彼はいつも人の幸せを願える優しい人ではあるけれど、なんとなく約束しておかないといけないような気がした。
「わ、私のことばっかりじゃなくて…私は夏彦に、幸せでいてほしいです」
「…ありがとう。そんなふうに言われたの初めてだよ!」
夏彦にわしわしと頭を撫でられる。
他の人が相手だと感じないこれは一体なんだろう。
喜びとも違うそれがあまり理解できていなくて、少しだけ不安になりつつ楽しく過ごせたのだった。
この気持ちに名前があるなら教えてほしい。
「は、はい…」
この日はお店がお休みで、商品を並べ替える手伝いをしていた。
ソルトは別の部屋で大人しく遊んでいる…らしい。
「お疲れ様。一旦休憩にしようか」
「は、はい」
疲れているのは夏彦の方なはずなのに、冷たい飲み物とアイスクリームを持ってきてくれた。
「塩バニラ味だって。テレビでしか見たことなかったから、どんな味なのか気になって買っちゃった」
「たしかにそれは気になりますね…」
「でしょ?」
夏彦が一口食べるのを見てから、恐る恐る口に運ぶ。
しょっぱい味がすると思っていたそれはとても美味しくて、慎重に食べ進めていく。
「月見ちゃんも美味しいって思った?」
「…さっぱりしていて、すごく食べやすいです」
「だよね、俺も思った!もっと塩気が強いのかと思ったけどそうでもないし…どうやって作ったのかちょっと気になるかも」
ふたりで話していると、じっとこちらを見つめる視線を感じる。
この部屋には私と夏彦しかいないはずなのに、どうしてそんなものを察知してしまったのか。
そのとき、にゃんと鳴き声がした。
「ソルト…」
「え、ソルト!?もしかして、あんなちっちゃな隙間から出てきたの?
ちょっと身体能力を甘く見てたな…」
視線の正体はソルトだったようだ。
心の底からほっとしたと同時に、なんだか微笑ましく思えてくる。
「月見ちゃん。今の生活、楽しい?」
「今まで私が持っていなかったものを、全部経験しているような気分になります。多分、楽しいです」
楽しいとか嬉しいとか、とっくの昔に忘れかけていた感情だ。
これがそうだったのか少し疑問を感じるところもあるが、恐らくそういうものなのだろう。
「そう思ってもらえているなら光栄だな。ずっと辛い思いをしてきたんだから、これからもっと楽しい時間が増えていくはず。
これから俺も、その手伝いをしていくよ」
「…その先に、夏彦もいますか?」
「え?」
夏彦がいないのであれば意味がない。
彼はいつも人の幸せを願える優しい人ではあるけれど、なんとなく約束しておかないといけないような気がした。
「わ、私のことばっかりじゃなくて…私は夏彦に、幸せでいてほしいです」
「…ありがとう。そんなふうに言われたの初めてだよ!」
夏彦にわしわしと頭を撫でられる。
他の人が相手だと感じないこれは一体なんだろう。
喜びとも違うそれがあまり理解できていなくて、少しだけ不安になりつつ楽しく過ごせたのだった。
この気持ちに名前があるなら教えてほしい。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる