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春人ルート
第21話
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「…?」
春人は首を傾げ、そのままこちらに視線を向けている。
今目の前でおきようとしていることに、頭が追いつかないのかもしれない。
「な、なんだこの草は!?」
私は蕀さんたちに男を拘束させた。
春人と男の間に蕀を忍ばせることなど簡単だ。
男はぎょっとした顔で私を見つめる。
「ば、化け物…」
やっぱり私は化け物と呼ばれてしまうのか。
いつものことではあったけれど、だんだん悲しくなってくる。
できれば人を傷つける為に使いたくなかった。
…ただ春人を護りたかっただけだ。
後先考えずに行動した結果何も言えなくなっていると、突然後ろから抱きしめられる。
「このお店には本当に時計がないんです。…常連の僕が保証しますよ」
いつの間に私の後ろまできたんだろう。
振り返りたいけれど、どんな表情をしているのか見るのが怖い。
相手が戦意喪失したのを確認して、蕀の鎖をゆっくり解いた。
手のひらからはぽたぽたと血が流れ、どんどん意識が遠くなっていく。
「…帰ったら事情を聞かせてもらう」
耳許でそう囁かれたのを最後に、そのまま闇へと落ちていった。
──昔の夢なんか見たくないのに、こんなときに限って出てくるのはあの人たちだ。
〈おまえなんか要らないんだよ、化け物!〉
…自分でも分かっているからもうやめて。
お願いだからそっとしておいてよ…。
首に誰かの手がかかりそうになったそのとき、別の誰かが呼ぶ声が聞こえた。
「……月見」
「私、ここ、アパート…?」
「そんなに混乱しなくてもいい。取り敢えず、落ち着いて聞いてほしい」
私の隣にいるのは間違いなく春人で、事件がどう終わったのか説明してくれた。
あのあと雪乃がレジから戻ってきて、警察がやってきたのだという。
犯人が油断していたおかげで彼女が通報したらしい。
そして、逮捕された男は自分がやったことをすぐに認めたのだとか。
「そして彼は、襲う店を間違えていたことに気づいたらしい」
「……どういう、ことですか?」
「時計を格安で売っている店があの近くにあるんだ。近所付き合いも少ない人だったらしいから、本気で間違えてたみたい。
『俺は取り返しがつかないことをした』ってかなり焦ってたみたいだよ」
「そう、なんですね…」
そこから少し沈黙が流れる。
どんなものよりも重く感じて何か話そうとしたけれど、自分の両手を見てはっとした。
「…ごめんなさい」
「どうして謝るの?君は俺を助けてくれただけなのに」
「それは、」
「ただ、さっきのが何だったのか説明がほしい。好奇心とかその程度の軽い気持ちで訊いていい話じゃないことは分かってる。
君が気を失ったすぐ後に蕀が消えたからよかったけど、もしまた何かあったときに何も知らないと対処のしようがないから…教えてほしい」
真っ直ぐな瞳にできるだけ優しく語りかけようとする声…これはもう、覚悟を決めるしかない。
春人は首を傾げ、そのままこちらに視線を向けている。
今目の前でおきようとしていることに、頭が追いつかないのかもしれない。
「な、なんだこの草は!?」
私は蕀さんたちに男を拘束させた。
春人と男の間に蕀を忍ばせることなど簡単だ。
男はぎょっとした顔で私を見つめる。
「ば、化け物…」
やっぱり私は化け物と呼ばれてしまうのか。
いつものことではあったけれど、だんだん悲しくなってくる。
できれば人を傷つける為に使いたくなかった。
…ただ春人を護りたかっただけだ。
後先考えずに行動した結果何も言えなくなっていると、突然後ろから抱きしめられる。
「このお店には本当に時計がないんです。…常連の僕が保証しますよ」
いつの間に私の後ろまできたんだろう。
振り返りたいけれど、どんな表情をしているのか見るのが怖い。
相手が戦意喪失したのを確認して、蕀の鎖をゆっくり解いた。
手のひらからはぽたぽたと血が流れ、どんどん意識が遠くなっていく。
「…帰ったら事情を聞かせてもらう」
耳許でそう囁かれたのを最後に、そのまま闇へと落ちていった。
──昔の夢なんか見たくないのに、こんなときに限って出てくるのはあの人たちだ。
〈おまえなんか要らないんだよ、化け物!〉
…自分でも分かっているからもうやめて。
お願いだからそっとしておいてよ…。
首に誰かの手がかかりそうになったそのとき、別の誰かが呼ぶ声が聞こえた。
「……月見」
「私、ここ、アパート…?」
「そんなに混乱しなくてもいい。取り敢えず、落ち着いて聞いてほしい」
私の隣にいるのは間違いなく春人で、事件がどう終わったのか説明してくれた。
あのあと雪乃がレジから戻ってきて、警察がやってきたのだという。
犯人が油断していたおかげで彼女が通報したらしい。
そして、逮捕された男は自分がやったことをすぐに認めたのだとか。
「そして彼は、襲う店を間違えていたことに気づいたらしい」
「……どういう、ことですか?」
「時計を格安で売っている店があの近くにあるんだ。近所付き合いも少ない人だったらしいから、本気で間違えてたみたい。
『俺は取り返しがつかないことをした』ってかなり焦ってたみたいだよ」
「そう、なんですね…」
そこから少し沈黙が流れる。
どんなものよりも重く感じて何か話そうとしたけれど、自分の両手を見てはっとした。
「…ごめんなさい」
「どうして謝るの?君は俺を助けてくれただけなのに」
「それは、」
「ただ、さっきのが何だったのか説明がほしい。好奇心とかその程度の軽い気持ちで訊いていい話じゃないことは分かってる。
君が気を失ったすぐ後に蕀が消えたからよかったけど、もしまた何かあったときに何も知らないと対処のしようがないから…教えてほしい」
真っ直ぐな瞳にできるだけ優しく語りかけようとする声…これはもう、覚悟を決めるしかない。
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