裏世界の蕀姫

黒蝶

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春人ルート

第25話

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「それじゃあ行ってきます。眠れそうなら少しは寝ておいた方がいいよ」
「あ、ありがとうございます。いってらっしゃい」
ラビとチェリーを抱えたまま、春人の背中が見えなくなるまで見送る。
扉がひとりでに閉まり、抱きしめながら息を吐く。
「…今日もお話していましょう。みんなでいればきっと楽しく過ごせるから」
ふたりを座らせ、ノートに少しずつ今日あった出来事をまとめていく。
それからなんでもない絵で余白を埋めると完成だ。
「…レシピもちゃんと書いておかないと」
自力で勉強できることは限られているけれど、毎日欠かさず少しずつやることにしている。
別のノートには計算問題を解いて、眠れない時間を有意義に過ごしている…つもりだ。
「ふたりとも、今日はここまでできたよ」
返事があるわけではないけれど、ふたりに見てもらうと達成感のようなものを味わえる。
これはきっと、独りではできなかったことだ。
ラビとチェリーにひたすら話しかけながら、テーブルの掃除を少しずつやっていく。
「…春人ってどんなものが好きなんだろう」
先日聞きそびれて1番後悔しているのが、好きな食べ物の話だ。
何を作っても美味しいと言ってもらえるのは嬉しいけれど、どんなものが好きでどんなものが苦手なのか全く把握していない。
そんなとき、テーブルの上にあったものが電子音を響かせる。
「…夏彦さん?」
何かあったときに連絡がとれないと困るから、春人はそう言ってスマートフォンというものを渡してくれた。
携帯電話なんて使ったことがなかった私に、時間をかけて丁寧に教えてくれたことに感謝しかない。
《月見ちゃん、携帯はじめたんだよね?早く使い慣れるには話すのが1番だから、一先ず送ってみました!
返信は青いアイコンを1回押すとできるよ》
「青い、アイコン…」
会話をする為に作ったと春人は言っていたけれど、自分でこんなものを作れるなんてすごい。
夏彦さんなら知っているだろうか。
《夏彦さん、ひとつ質問してもいいですか?》
《どうしたの?》
《…春人の好きな食べ物って何ですか?ご飯をいつも美味しいって食べてもらえるのは嬉しいのですが、苦手なものとか全然分からないんです》
返信がくるまで少し間があった。
もしかしたらちゃんと送れていないのかもしれないと心配になったけれど、丁寧な文章が返ってくる。
《ハルは特に好き嫌いはないよ。強いて言うなら、甘いものが好きかな!
お菓子ばっかり食べてた時期もあったし、特に飴が好きなはずだよ。べっこう飴なら作れるかもね》
ありがとうございますと返信を打って、そのまま画面を閉じる。
…春人が帰ってくるまでに完成させられるだろうか。
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