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夏彦ルート
第37話
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「月見ちゃん、まだ起きてたの?」
「あの、えっと…」
「大丈夫、怒ってる訳じゃないから」
夏彦の言葉はやっぱり優しくて、とても安心する。
どうして私なんかにここまでしてくれるんだろうというほど、いつも気を遣わせてしまっているのが申し訳ない。
「ソルトはどうしてる?」
「じ、自分の寝床で休んでいます」
「そっか…」
自分が紅茶を淹れている音だけがその場に響いて、少しだけ気まずさを感じた。
「それ、俺ももらっていい?」
「あ、はい…」
できるだけ手早く淹れると、少しだけ指にかかってしまった。
「大丈夫?」
「はい。すみません、なんとか淹れられたと思うんですけど…」
「そんなに謝らないで。誰が悪いわけでもないんだから…ね?」
実は今夜、夏彦に渡したいものがあった。
見よう見まねで作ったものだし、綺麗に作れた自信なんて全くない。
やっぱり渡すのをやめようと思ったそのとき、ぐっと腕を掴まれる。
「あ、あの…」
「さっきから後ろ手で隠しているもの、何?」
「あの、これは、えっと、」
「ゆっくりでいいから、落ち着いて話してみて?」
もうこうなってしまっては隠しきれない。
「余った糸を、いただきましたよね?」
「そういえばそうだったね。切れ端ばかりだったけど、あれでよかったの?」
「……それで、作ったんです。受け取ってもらえませんか?」
ミサンガを前に差し出すと、返ってきた反応は沈黙だった。
その時間が怖くて話を続ける。
「私は、特別気が利いたことができるわけでも、誰かの役にたてるわけでもありません。
でも、夏彦が危ない目に遭わないか不安なんです。迷信でもなんでもいいから、縋りたくなって…要らなかったら捨ててください」
そうして頭を下げると、温かい手が髪に触れる。
「こうして誰かに作ったのは初めて?」
「…はい」
「俺は君から、沢山初めてをもらっちゃってるね。ありがとう。
ミサンガってこんなに上手く作れる人、少ないんだよ。というより、俺が初めて作ったのはもっとぐちゃぐちゃだった。
月見ちゃんは本当に器用だね。それに、俺言ったでしょ?君が作ったアイテムひとつでお客さんを笑顔にできるって」
「私が、笑顔に…」
そういえば、少し前にそんなことを言われたような気がする。
どうして忘れてしまっていたんだろう。
「月見ちゃんが作ったコサージュ、色んな人が欲しいってやってくるんだ。
それは君にしかできないことで、君が誰かを笑顔にできてるってことになるんじゃないかな?」
「そう、でしょうか?そうなるように、頑張ります」
夏彦は一瞬微笑んで、こちらを真っ直ぐ見つめながら遠慮がちに訊いてきた。
「夜眠れないのは、何か事情があるの?」
「あの、えっと…」
「大丈夫、怒ってる訳じゃないから」
夏彦の言葉はやっぱり優しくて、とても安心する。
どうして私なんかにここまでしてくれるんだろうというほど、いつも気を遣わせてしまっているのが申し訳ない。
「ソルトはどうしてる?」
「じ、自分の寝床で休んでいます」
「そっか…」
自分が紅茶を淹れている音だけがその場に響いて、少しだけ気まずさを感じた。
「それ、俺ももらっていい?」
「あ、はい…」
できるだけ手早く淹れると、少しだけ指にかかってしまった。
「大丈夫?」
「はい。すみません、なんとか淹れられたと思うんですけど…」
「そんなに謝らないで。誰が悪いわけでもないんだから…ね?」
実は今夜、夏彦に渡したいものがあった。
見よう見まねで作ったものだし、綺麗に作れた自信なんて全くない。
やっぱり渡すのをやめようと思ったそのとき、ぐっと腕を掴まれる。
「あ、あの…」
「さっきから後ろ手で隠しているもの、何?」
「あの、これは、えっと、」
「ゆっくりでいいから、落ち着いて話してみて?」
もうこうなってしまっては隠しきれない。
「余った糸を、いただきましたよね?」
「そういえばそうだったね。切れ端ばかりだったけど、あれでよかったの?」
「……それで、作ったんです。受け取ってもらえませんか?」
ミサンガを前に差し出すと、返ってきた反応は沈黙だった。
その時間が怖くて話を続ける。
「私は、特別気が利いたことができるわけでも、誰かの役にたてるわけでもありません。
でも、夏彦が危ない目に遭わないか不安なんです。迷信でもなんでもいいから、縋りたくなって…要らなかったら捨ててください」
そうして頭を下げると、温かい手が髪に触れる。
「こうして誰かに作ったのは初めて?」
「…はい」
「俺は君から、沢山初めてをもらっちゃってるね。ありがとう。
ミサンガってこんなに上手く作れる人、少ないんだよ。というより、俺が初めて作ったのはもっとぐちゃぐちゃだった。
月見ちゃんは本当に器用だね。それに、俺言ったでしょ?君が作ったアイテムひとつでお客さんを笑顔にできるって」
「私が、笑顔に…」
そういえば、少し前にそんなことを言われたような気がする。
どうして忘れてしまっていたんだろう。
「月見ちゃんが作ったコサージュ、色んな人が欲しいってやってくるんだ。
それは君にしかできないことで、君が誰かを笑顔にできてるってことになるんじゃないかな?」
「そう、でしょうか?そうなるように、頑張ります」
夏彦は一瞬微笑んで、こちらを真っ直ぐ見つめながら遠慮がちに訊いてきた。
「夜眠れないのは、何か事情があるの?」
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