裏世界の蕀姫

黒蝶

文字の大きさ
165 / 385
夏彦ルート

第39話

しおりを挟む
「ポーチ…」
ソルトが寝ているのを確認してから、今夜も私は作業する。
手縫いだけでできるのか不安ではあるけれど、どうしても完成させたい。
ファスナーをつけたりどこかに紫陽花の刺繍を入れたくて苦戦したり、何度も心が折れそうになっている。
「月見ちゃん、ちょっといい?」
「…?」
部屋の扉がノックされて、申し訳なさそうな夏彦の声が聞こえてくる。
「どうかしたんですか?」
「もし時間があるようなら、ちょっと手伝ってほしいんだけど…」
「私にできることなら、やってみたいです」
「今テーブルが悲惨な状態になってるから、来てもらってもいい?」
「分かりました」
意味がよく分からないまま後を追うと、そこにはバラバラになった小さいパーツが沢山転がっていた。
「100ピースでお願いしたはずなんだけど、1000ピースのが届いちゃったんだ。
全然終わらないから、組み立てるのを手伝ってほしくて…駄目?」
「が、頑張ります」
それはあまり経験がないものでどうしたらいいのかなんてほとんど分からないけれど、なんでもいいから役に立ちたかった。
「それじゃあ、まずは角のピースから探していこうか」
「…はい」
それは本当に細かくて、似たような色ばかりが集まっているのもあって全然分からない。
角にくるものを探すだけで、結構な時間を費やしたような気がする。
「月見ちゃん、次はそっちにはまりそうなものを探してみて」
「こう、ですか?それから、これとこれはくっつきそうです」
「よく分かるね…。途中のピースなのに、俺より早いかも」
「ぐ、偶然です」
見本の絵には沢山の紫陽花が描かれているけれど、微妙に色の濃さが違う。
見ていてなんとなく分かるのはそのおかげだ。
「…次は、これとこれだと思います」
「本当に早いね。でも、葉が難しそうだな…どれも同じに見えてくる」
たしかに花の部分はなんとかなりそうだけど、葉の部分を組み立てるのには苦戦しそうだ。
「俺、昔からパズルを組み立てるのが好きなんだ。これだけ細かいのをやるのは久しぶりだけど…」
「そうなんですね」
「月見ちゃんは初めて?」
「はい。完成したものを見たことはありますが、自分でやるのは初めてです。
…あの、どうしてパズルが好きなんですか?」
「そうだな…人の心みたいだから、かもしれない。
組み立てるのは簡単だけど、ばらばらになるのはあっという間だからね」
人間関係に似ている、という意味だろうか。
夏彦は誰かに傷つけられてきたのかもしれない。
小さく呟かれた一言が気になるけれど、何も言葉を返すことができなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

結婚する事に決めたから

KONAN
恋愛
私は既婚者です。 新たな職場で出会った彼女と結婚する為に、私がその時どう考え、どう行動したのかを書き記していきます。 まずは、離婚してから行動を起こします。 主な登場人物 東條なお 似ている芸能人 ○原隼人さん 32歳既婚。 中学、高校はテニス部 電気工事の資格と実務経験あり。 車、バイク、船の免許を持っている。 現在、新聞販売店所長代理。 趣味はイカ釣り。 竹田みさき 似ている芸能人 ○野芽衣さん 32歳未婚、シングルマザー 医療事務 息子1人 親分(大島) 似ている芸能人 ○田新太さん 70代 施設の送迎運転手 板金屋(大倉) 似ている芸能人 ○藤大樹さん 23歳 介護助手 理学療法士になる為、勉強中 よっしー課長 似ている芸能人 ○倉涼子さん 施設医療事務課長 登山が趣味 o谷事務長 ○重豊さん 施設医療事務事務長 腰痛持ち 池さん 似ている芸能人 ○田あき子さん 居宅部門管理者 看護師 下山さん(ともさん) 似ている芸能人 ○地真央さん 医療事務 息子と娘はテニス選手 t助 似ている芸能人 ○ツオくん(アニメ) 施設医療事務事務長 o谷事務長異動後の事務長 ゆういちろう 似ている芸能人 ○鹿央士さん 弟の同級生 中学テニス部 高校陸上部 大学帰宅部 髪の赤い看護師 似ている芸能人 ○田來未さん 准看護師 ヤンキー 怖い

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...