裏世界の蕀姫

黒蝶

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夏彦ルート

第41話

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「…何をした?」
「さあ?というか、どういう状況なんだ?」
「夏彦、これを抜きなさい」
「断る。偶然隙間に入って抜けなくなってくれたならありがたいね。
…あんたに刃物で攻撃されることがなくなったんだから」
夏彦は必死に話して自分の方に注目を向けさせている。
私は刃物を止めながら、ぎりぎり繋がった箱に小声で話しかけた。
「…また不審者がいるみたいなんです。多分夏彦が怪我をしています。どうしたらいいですか?」
『…了解した。お嬢ちゃんはその場で待機。あとは任せな』
震える声で話したにも関わらず、電話の相手にはしっかり伝わったらしい。
あとどれくらい刃物を止めておけるか不安になったけれど、どうやら杞憂だったみたいだ。
「…そこの男、武器を捨てろ」
「もう時間切れか。…また来るよ」
その瞬間、あたりが真っ白な煙に包まれる。
扉越しでも煙が入ってくるくらいだから、夏彦たちがいる場所はもっと大変なことになっているに違いない。
警報に驚くソルトを落ち着かせながら、なんとかおさまるのを待った。
蔦をほどききった頃、がちゃんと音がして扉が開かれる。
「月見ちゃん…ごめん」
「私は平気です」
怪我ひとつないのは夏彦が護ってくれたおかげだ。
…手のひらに怪我はあるけれど、これは自分でつけたものであって誰かのせいではない。
「こっちで手当てするから、来てもらってもいい?」
「…はい」
外していたグローブを持って、そのまま後をついていく。
「秋久さん、ありがとうございました」
「ごめん、アッキー…」
「気にするな。この場は調べておくから、ふたりとも別室で休んでな」
秋久さんに一礼してその場を離れる。
なんだか夏彦の瞳が闇を帯びているような気がした。
「本当にごめん。まさかここまで直接出向いてくるなんて予想外だった」
「私は、その…怪我、しなかったので。夏彦の手当てをしてもいいですか?」
「俺は構わないけど、生傷だらけの体だよ?」
「自分の手で見慣れているので大丈夫です」
思ったとおり刺し傷があって、包帯やガーゼで応急処置を施していく。
「あ、あの…お相手のこと、訊いてもいいですか?」
夏彦は驚いたように顔をあげたけれど、やがてふっと息を吐いた。
「そうだね、ここまでのことになっちゃったんだし…」
彼は脇腹を押さえて小さく呻きながら立ちあがる。
慌てて支えようとしたけれど、上手くいかなかった。
「大丈夫だよ。ただ…これからする話はものすごく重いと思う。それでも大丈夫?」
少し迷ったけれど、ここで話を聞かないときっと後悔することになる。
そう考えると頷く以外の選択なんてなかった。
「さっきのは俺の父親。──ただ、もう家族だとも思っていないけどね」
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