裏世界の蕀姫

黒蝶

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春人ルート

第53話

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やっぱり具合が悪かったんだ。
それとも、秋久さんが言ったように怪我をしているから…だろうか。
「…どうして分かったの?」
「さっきから足を庇って歩いてる。それと、お嬢ちゃんの言うとおり顔色がよくない」
その言葉に冬真さんは息を吐いて、苦しそうに答えた。
「…分からない。暗闇に隠れてて油断した。多分、ふたり組だと思うんだけど…」
その言葉に春人が一瞬変な反応をする。
気のせいだと思おうとしたけれど、なんだか怒りと悲しみを抑えているように見えた。
それは一体、誰に向けられたものなのだろう。
「そちらの部屋をお使いください」
「悪いな、助かる」
そうしてふたりが近くの部屋に入っていった瞬間、春人はその場に崩れ落ちた。
「大丈夫ですか?」
「…ごめん、なんでもないから」
傷が痛むのではないかと不安に思っていると、優しく頭を撫でられる。
「そんなに心配しなくても、俺は本当に大丈夫。傷はそんなに痛んでいないから」
「それじゃあ、どうしてそんなに苦しそうにしているんですか…?」
「それは…」
多分、本当に具合が悪い訳じゃない。
それならどうしてそんな苦しそうな顔をしているのか、見当がつかなかった。
「教えてください」
春人はしばらく黙っていたけれど、やがて少しずつ話してくれた。
「…ふたり組」
「え?」
「俺は多分、そのふたり組を知ってる」
「どういうことですか?」
「…事件について調べているのを嗅ぎつけられたのかもしれない」
その一言でなんとなく理解した。
多分、春人が住んでいる場所が分からないから冬真さんが狙われてたのだろう。
けれど、もしそうなら相手は春人と関わりがある人を知っていることになる。
「俺のせいだ。あの人みたいに誰かが傷つけられたり消されたら、俺は…」
「…大丈夫です。そんなことには、なりません」
そんなことをさせるわけにはいかない。
そしてなにより、彼の心に寄り添いたいと思った。
「私、やっと役にたてそうです」
「待って、君は一体何を、」
そこまで聞いたところで、玄関がゆっくり開かれる。
「あれ、他のみんなは…」
「すみません、夏彦。少しこちらにお願いします」
「それはいいけど…」
ふたりは話しながら秋久さんたちがいる部屋へ行ってしまった。
その間にゆっくりバラバラになったティーカップの破片を集める。
1度壊れてしまうと全く同じ形には戻らない。
それを分かっていても、なんとか少しでも形に残したいと思った。
…それに、この時間があれば軽く忍ばせることくらいはできるはずだ。
「──お願い、蕀さんたち」
手のひらにはしる痛みより、優しくしてくれる春人たちの安全の方が心配だ。
お守り程度にしかならないけれど、分かりづらい位置に上手くつけることができたと思う。
「ここなら分かりませんよね。…勝手にごめんなさい」
誰もいない部屋でそんな言葉を呟く。
ただ、この力で誰かを護れるかもしれないなら頑張ってみようと思った。
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