裏世界の蕀姫

黒蝶

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春人ルート

第60話

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「どうしてそのことを…」
そこまで話すと、春人ははっとしたようにこちらを見つめた。
ずっと確信が持てなかったけれど、今のではっきりと理解する。
「もしも本当に危なくない仕事なら、帰ってくる度に少しずつ傷が増えているはずありません」
ずっとひとりで怪我の手当てをしているのを知っていた。
はじめは何をしているのかなんて分からなかったけれど、消毒液のにおいや少しずつ増えていく絆創膏でなんとなく気づいていたんだ。
「君は鋭いね」
「教えてください。詳しく言えないって前に言っていたけど、やっぱり危ないお仕事なんですよね…?」
「…分かった、もう少し詳しく話す。【便利屋】は元々あの人がやっていたことで、俺なんかじゃ足元にも及ばない。依頼を受けてこなすことに意味があるけど、犯罪者の依頼は断って捕まえることにしてる。
基本的には身分を捨てて逃げたい人や盗まれたものを取り返すときに小道具を作ってる。…内容については守秘義務があるから言えないけど、そこには当然犯罪者が絡んでくることもある」
相手が平気で人を傷つけるような人ということもある、ということだろうか。
だからあんなふうに沢山の傷を負って、それでもまだ戦い続けて…だから彼らは強いのかもしれない。
「だけど、俺には誰かを逮捕する権利はない。…その為にあるのが【カルテット】だ」
「秋久さんがいれば、捕まえられるからですか?」
「そう。夏彦や冬真にも色々手伝ってもらってる。【カルテット】についてもあんまり詳しくは言えないけど、俺たちが目をつけた相手は必ず大変なことになるとだけ言っておく」
「それじゃあ、今ひとりで調べているものを皆さんに協力してもらうのは駄目なんですか?」
春人はきっと、迷惑をかけたくないから他の人たちに話さないようにしている。
ただ、これ以上ひとりで傷ついてほしくない。
「それは俺個人の問題だ。…だけど、みんなが巻きこまれている以上、もうそう言っていられる余裕はないのかもしれない」
「やっぱり、私にも手伝わせてください。どれだけやれるかなんて分からないけど、何もできないのは嫌なんです。
私は春人の力になりたい…。お願いします、無理はしないので、やらせてもらえませんか?蕀さんたちと一緒に頑張ってみたいんです」
断られてしまうかもしれない…そう思っていたけれど、頭をぽんぽんと撫でられる。
「分かった、俺の負け。その代わり、痛くて限界だと思ったらすぐやめて」
「ありがとうございます」
「これから危険なことに巻きこまれるのに、君は怖くないの?」
「誰かを護りたいって、ずっと思っていたので…役に立てるならそれが1番嬉しいです」
春人は一言、そう、と呟いた。
こちらから表情を確認することはできなかったけれど、今は何を考えているのだろうか。
「あいつらは近々直接俺を狙ってくるはずだ。…月見、君にはそのときに手を貸してほしい」
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