裏世界の蕀姫

黒蝶

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夏彦ルート

第97話

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「月見ちゃん、そのまま真っ直ぐ進んで」
「は、はい」
次の日からも夏彦は優しく教えてくれた。
本当はもっと速く歩かないといけないのに、なかなか上手くいかない。
どうして私はいつも上手にできないんだろう。
「昨日より歩ける距離が伸びてるし、バランスもとれてきてるね」
「ありがとう、ございます」
心が折れそうになると、今みたいに夏彦が心に優しい色をつけてくれる。
そのおかげで今もなんとか立っていることができている状態だ。
「少し休憩にしようか」
「分かりました」
自分でも不格好なのは分かっているけれど、今はこれが限界だ。
本当はどうするのがいいんだろう。
いろいろなことを考えてみるものの、残念ながらいいアイデアは出てこない。
「あれ、ソルト?もしかして、またまー君に遊んでもらったの?」
夏彦がそう尋ねると、そうだと答えるばかりににゃあと鳴いた。
そんなふたりをぼんやり眺めていると、秋久さんが現れる。
「ああ見えて冬真は可愛いものに目がないからな」
「こ、こんにちは…」
「お嬢ちゃん、調子はどうだ?」
「だいぶよくなった、と思います」
自分ではそのつもりでも、周りから見たらどうなのか分からない。
そんな曖昧な答えしか返せずにいると、夏彦が代わりに答えてくれた。
「だいぶ動くようになってきたし、このままの調子でいけばすぐに杖を使わなくても歩けるようになると思う」
「…そうか」
その一言に安堵が詰めこまれているような気がして、ただ頭を下げる。
顔をあげた瞬間、向日葵色の髪が揺れたかと思うとすぐに肩に手が置かれた。
「月見ちゃん、そんなに頭下げなくても大丈夫だよ。寧ろアッキーはそういう反応をされると困惑するから」
「え…?」
「悪い、思ってたことを察知されるのに慣れなくてな」
秋久さんの反応はあまりにも意外なものですごく驚いた。
あまり困ったような表情をするイメージを持っていなかったので、見たことがない一面を知ったような気がする。
「ソルトのこと、アッキーが見ててくれたの?」
「こいつ、冬真にかなり懐いていてな。ただ、あいつはスノウが傷つけられないか若干不安がってる」
「スノウさん、ですか?」
「冬真は梟を飼ってるんだ。なかなか人前に出たがらないから、そういうところも含めて飼い主に似たんだろうな」
お世話になっているのに、そんなことも知らなかった。
ただ、何度か見たソルトを相手にしている様子から察するに動物が好きなのは分かる。
「ふたりとも、一旦休憩をいれるんだろう?だったらちょっと来てもらおうか」
「は、はい」
少し不安に思っていると、夏彦が大丈夫だというように手を握ってくれた。
それだけでほっとするから本当に不思議だ。
やっぱり夏彦の手は誰かを幸せにする為にあってほしい。
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