316 / 385
冬真ルート
第4話
しおりを挟む
「あ、冬真」
「あ、じゃない。中に患者がいるから驚かせたくない、入らないでって言ったよね?」
「でも、鍵が開いてた」
「開いてたら入っていいわけじゃないから」
そんなふたりの会話についていけず戸惑っていると、冬真さんがテーブルの上を見て呆然としている。
「僕のなんていらなかったのに」
「…ごめんなさい」
ここにいると邪魔になる…そう思って一礼してからその場を離れる。
後ろから何か聞こえた気がしたけれど、きっと私相手に話していたわけではないだろう。
ここにいると、私はすごく邪魔になる。
一旦気分を変えようと近くにあったメモ用紙にすぐ戻ると書き残して、そのまま部屋を出た。
この建物がどんなふうになっているのか、大体のことは把握している。
「…失礼します」
この言い方で合っているのか分からないけれど、いつか読んだ本にあった中庭のような場所に出た。
いつもより頭痛が酷いのはどうしてだろう。
もしかすると、自覚していない何かがあったのかもしれない。
「あれ、月見ちゃん?」
顔をあげると、そこには夏彦さんが驚いたような顔をして立っていた。
一緒にいた秋久さんがこちらに近づいてきて、しゃがんで地べたに座っていた私と目線を合わせてくれる。
「お嬢ちゃん、顔色がよくないみたいだが何かあったか?」
「い、いえ。何もないんです。ただ、少し外の空気を吸いたくなったといいますか…」
「まー君に冷たくされた?」
「いえ、よくしてもらっています。寧ろ申し訳ないくらいで…」
『僕のなんていらなかったのに』…その言葉が頭にこびりついて、どうしても離れてくれない。
自分で勝手に作ったものとはいえ、気づかないうちにショックを受けていたみたいだ。
「月見ちゃん?」
「ごめんなさい、その、もう少し気分転換、したいので…。
それから、お客様がいらっしゃっているので今は行かない方がいいかもしれません」
「そうか。教えてくれてありがとな」
「だけど多分、そのお客さんはそろそろ帰るはずだよ。店をやってるから、長居はしないはずなんだ」
「え…?」
顔をあげると、たしかに玄関と思われる場所からさっきの女性が出ていくのが見えた。
…それなら、もう少しだけここにいてもいいだろうか。
「風邪ひかないように気をつけろよ、お嬢ちゃん」
「あ、ありがとうございます…」
今度はきっとふたりと話すことがあるはずだ。
今戻ったらまた邪魔になってしまう。
だったら、もう少しここにいたい。
頬にあたる風がなんだかいつもより冷たくて、少し体が震えた。
できるだけ迷惑をかけないようにしないと、きっとここにも置いてもらえなくなってしまう。
もしそうなったら、なんて今は考えたくない。
「あ、じゃない。中に患者がいるから驚かせたくない、入らないでって言ったよね?」
「でも、鍵が開いてた」
「開いてたら入っていいわけじゃないから」
そんなふたりの会話についていけず戸惑っていると、冬真さんがテーブルの上を見て呆然としている。
「僕のなんていらなかったのに」
「…ごめんなさい」
ここにいると邪魔になる…そう思って一礼してからその場を離れる。
後ろから何か聞こえた気がしたけれど、きっと私相手に話していたわけではないだろう。
ここにいると、私はすごく邪魔になる。
一旦気分を変えようと近くにあったメモ用紙にすぐ戻ると書き残して、そのまま部屋を出た。
この建物がどんなふうになっているのか、大体のことは把握している。
「…失礼します」
この言い方で合っているのか分からないけれど、いつか読んだ本にあった中庭のような場所に出た。
いつもより頭痛が酷いのはどうしてだろう。
もしかすると、自覚していない何かがあったのかもしれない。
「あれ、月見ちゃん?」
顔をあげると、そこには夏彦さんが驚いたような顔をして立っていた。
一緒にいた秋久さんがこちらに近づいてきて、しゃがんで地べたに座っていた私と目線を合わせてくれる。
「お嬢ちゃん、顔色がよくないみたいだが何かあったか?」
「い、いえ。何もないんです。ただ、少し外の空気を吸いたくなったといいますか…」
「まー君に冷たくされた?」
「いえ、よくしてもらっています。寧ろ申し訳ないくらいで…」
『僕のなんていらなかったのに』…その言葉が頭にこびりついて、どうしても離れてくれない。
自分で勝手に作ったものとはいえ、気づかないうちにショックを受けていたみたいだ。
「月見ちゃん?」
「ごめんなさい、その、もう少し気分転換、したいので…。
それから、お客様がいらっしゃっているので今は行かない方がいいかもしれません」
「そうか。教えてくれてありがとな」
「だけど多分、そのお客さんはそろそろ帰るはずだよ。店をやってるから、長居はしないはずなんだ」
「え…?」
顔をあげると、たしかに玄関と思われる場所からさっきの女性が出ていくのが見えた。
…それなら、もう少しだけここにいてもいいだろうか。
「風邪ひかないように気をつけろよ、お嬢ちゃん」
「あ、ありがとうございます…」
今度はきっとふたりと話すことがあるはずだ。
今戻ったらまた邪魔になってしまう。
だったら、もう少しここにいたい。
頬にあたる風がなんだかいつもより冷たくて、少し体が震えた。
できるだけ迷惑をかけないようにしないと、きっとここにも置いてもらえなくなってしまう。
もしそうなったら、なんて今は考えたくない。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる