326 / 385
冬真ルート
第13話
しおりを挟む
冬真さんと歩く帰り道、気になっていたことを整理することにした。
「あ、あの…質問、してもいいですか?」
「内容によるけど、答えられることなら」
「カルテットって…リセッターって何ですか?」
そう訊いた瞬間、冬真さんの足が止まる。
「それ、誰から聞いたの?」
「あの兄妹が教えてくれたんです。リセッターの噂を聞いて助けを求めたって…」
「……話すのはいいけど、他言したら命はないと思って」
「分かりました」
そもそも、私には話す相手なんていない。
なんとなく秘密にしないといけないのは分かっていたけれど、どれくらい重要な秘密なんだろう。
「リセッターっていうのは、噂から勝手につけられた僕の名前。依頼の受け口になったり、今回みたいに特殊な仕事もやる。
そんなことをするのに本名は名乗れないし、面倒だからそのままそういうことにしてある」
歩きながら話す冬真さんは興味がなさそうで、少し眠そうにしている。
普段出掛けることが多いのも、そのお仕事の為なのかもしれない。
「だけど、あの子たちにはカルテットの話はしてない」
「カルテットというのは、助けていただいた日に冬真さんが話していたので覚えていたんです」
「自覚なかった。気をつけないと」
冬真さんはそう呟いて、丁寧に教えてくれた。
「僕が窓口になって依頼を受けて、ひとりで全部こなせるわけがない。
だから、僕を含めた4人で活動しているのがカルテット。僕よりずっと器用な人たちだから信頼してる」
「春人さんたちのことですか?」
「うん」
「大切、なんですね」
「まあ、そういうことになるのかな。…便利屋に情報屋、あとは守護神がいて、3人ともすごいんだ」
そう話す冬真さんは楽しそうに笑っていて、本当に大切に思っていることが分かる。
初めて会ったときより笑顔が減ったような気はするけれど、不思議と嫌な気持ちにはならない。
「私にも、お手伝いさせてほしいです」
「やめておいた方がいい。中途半端な気持ちじゃやっていけないし、表側と関わるのが難しくなるかもしれない」
「表側、ですか?」
「僕がやってるこの仕事は、所謂世界の裏側…人の目にあんまり写らない場所でのものだから」
「誰かの助けになれるのは素敵なことだと思います」
今まで私が過ごしてきた世界は、時間も分からなくなるくらいひたすら料理や掃除をする日々だった。
一生逃げられないんじゃないかと思っていたのに、あの日我慢できなくて逃げ出して…そのとき、春人さんたちが見つけてくれたから今こうして生きていられる。
そんなふうに誰かを助けられるのは、やっぱりすごいことだと思う。
「…変わってるね、君は」
「そうかもしれません…」
「そんなふうに思ってくれる人もいるんだって思ったら、この仕事にも意味がある気がする」
漆黒の髪が月明かりをあびてきらきらと輝いている。
その横顔はとても穏やかで、頭を優しく撫でてくれた手は温かい。
それからは会話がないまま靴音だけが響いて、なんだか心地がいい音だった。
「あ、あの…質問、してもいいですか?」
「内容によるけど、答えられることなら」
「カルテットって…リセッターって何ですか?」
そう訊いた瞬間、冬真さんの足が止まる。
「それ、誰から聞いたの?」
「あの兄妹が教えてくれたんです。リセッターの噂を聞いて助けを求めたって…」
「……話すのはいいけど、他言したら命はないと思って」
「分かりました」
そもそも、私には話す相手なんていない。
なんとなく秘密にしないといけないのは分かっていたけれど、どれくらい重要な秘密なんだろう。
「リセッターっていうのは、噂から勝手につけられた僕の名前。依頼の受け口になったり、今回みたいに特殊な仕事もやる。
そんなことをするのに本名は名乗れないし、面倒だからそのままそういうことにしてある」
歩きながら話す冬真さんは興味がなさそうで、少し眠そうにしている。
普段出掛けることが多いのも、そのお仕事の為なのかもしれない。
「だけど、あの子たちにはカルテットの話はしてない」
「カルテットというのは、助けていただいた日に冬真さんが話していたので覚えていたんです」
「自覚なかった。気をつけないと」
冬真さんはそう呟いて、丁寧に教えてくれた。
「僕が窓口になって依頼を受けて、ひとりで全部こなせるわけがない。
だから、僕を含めた4人で活動しているのがカルテット。僕よりずっと器用な人たちだから信頼してる」
「春人さんたちのことですか?」
「うん」
「大切、なんですね」
「まあ、そういうことになるのかな。…便利屋に情報屋、あとは守護神がいて、3人ともすごいんだ」
そう話す冬真さんは楽しそうに笑っていて、本当に大切に思っていることが分かる。
初めて会ったときより笑顔が減ったような気はするけれど、不思議と嫌な気持ちにはならない。
「私にも、お手伝いさせてほしいです」
「やめておいた方がいい。中途半端な気持ちじゃやっていけないし、表側と関わるのが難しくなるかもしれない」
「表側、ですか?」
「僕がやってるこの仕事は、所謂世界の裏側…人の目にあんまり写らない場所でのものだから」
「誰かの助けになれるのは素敵なことだと思います」
今まで私が過ごしてきた世界は、時間も分からなくなるくらいひたすら料理や掃除をする日々だった。
一生逃げられないんじゃないかと思っていたのに、あの日我慢できなくて逃げ出して…そのとき、春人さんたちが見つけてくれたから今こうして生きていられる。
そんなふうに誰かを助けられるのは、やっぱりすごいことだと思う。
「…変わってるね、君は」
「そうかもしれません…」
「そんなふうに思ってくれる人もいるんだって思ったら、この仕事にも意味がある気がする」
漆黒の髪が月明かりをあびてきらきらと輝いている。
その横顔はとても穏やかで、頭を優しく撫でてくれた手は温かい。
それからは会話がないまま靴音だけが響いて、なんだか心地がいい音だった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる