裏世界の蕀姫

黒蝶

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冬真ルート

第15話

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「えっと…」
ご飯の後何が始まるんだろうと思っていると、秋久さんがエプロンをつけて台所に立つ。
「お嬢ちゃんも一緒にやるか?まあ、先生がいいならだけどな」
「先生、ですか?」
いつの間にか冬真さんも準備を進めていて、ますますよく分からないまま動けない。
邪魔になるようなら部屋に戻ろうと思っていると、冬真さんに止められた。
「料理」
「え?」
「料理、興味があるならこれ使って」
「…?はい」
渡された腰に巻くエプロンをつけると、秋久さんが声を出して笑った。
「あの、何かおかしいですか?」
「悪い。お嬢ちゃんがおかしいとかそういうわけじゃなくて、本当に不器用な奴だと思ったんだ。
もっと素直に一緒にやろうって言えばいいのに、あいつにはそれができない」
「冬真さんは優しいです」
「…そうか。楽しそうで安心した」
秋久さんはどうして私を気にかけてくれるんだろう。
少し気になったけれど、直接訊くことはできなかった。
「で、先生。次はどうすればいい?」
「1200℃で予熱してあるオーブンに放りこんで」
「了解」
まさかこんなふうに料理教室が開かれるとは思っていなかった。
ただ、お手伝いさせてもらえるのはすごく嬉しい。
こんなふうに役にたてることもあるんだと思うと、心が躍った。
「お嬢ちゃん、随分手慣れてるな」
「作ったことがあったので、なんとなく」
「なんとなくでその出来とか、普通にへこむ」
「色々焦がしてしまいましたし、そこまで上手くはないです」
「謙遜する必要ないと思う。料理、得意なんだね」
秋久さんも冬真さんも笑っていて、ふたりからの優しい視線が心をぽかぽかにしてくれる。
どうしてこんなふうに過ごすと気が楽になるんだろう。
「今日はもう一品作ってもいいかもしれない」
「俺はまだ時間あるし、おまえさえよければ教えてくれ」
「分かった。それじゃあ…」
そのとき、ふたりの携帯電話が同時に鳴りはじめる。
深刻そうな表情で何かを話した後、冬真さんが私を見ながら真剣な表情で言った。
「今日はここまでにする。君は部屋にいて。今からする話、聞かない方がいいだろうから」
「分かりました…」
少し寂しい気持ちになったけれど、お仕事の邪魔はしたくない。
ただ、どうしてこんなに心配になるんだろう。
心のざわざわを日記に書いておくことにした。
【今日はお料理を教えてもらいました。
冬真さんについてはまだまだ分からないことも多いけど、もう少し仲良くなれると嬉しいです。
それから、どうしてか心がざわざわしているような気がします。この気持ちは何という名前なんでしょうか】
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