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冬真ルート
第17話
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「おはよう」
「おはようございます」
この生活にもだいぶ慣れてきて、時々朝ご飯を作らせてもらいながら掃除をして過ごしている。
手足が前より動かしやすくなって、できることも少しずつ増えてきた…と、思う。
「スノウは寝てるから、今のうちにちょっと訊いておきたいことがある」
「質問、ですか?」
「…好きな色ってある?」
あまりに突然の質問にただ固まってしまう。
冬真さんははっとしたように顔をあげて、理由を話してくれた。
「洋服、似たようなのばっかりでしょ?もう少し別のものを新調したいんだ」
「私はここに置いてもらえるだけで充分です」
「僕も新しい服を注文するから、そのついでだし…そんなに気にしなくていい」
好きな色なんて考えたことがなかった。
もしかすると、自分で考えたことがなかったのかもしれない。
「大丈夫?」
「ごめんなさい。そういうことはよく分からなくて…。あ、ズボンが好きです」
「色じゃない…まあ、いいか。そうやって考えてることを伝えてもらえた方がありがたい」
「私が、考えていることですか?」
「初めて会ったときからちょっと分かりづらかったから、言葉にしてもらえた方が誤解が少ないと思う。…自分が苦手なことを相手にお願いするのはちょっと違う気がするけど」
冬真さんは少し気まずそうに話していたけれど、私にとってはその気持ちがありがたかった。
「が、頑張ります」
「…外に出るのは怖い?」
「え…?」
「なんとなくそんなふうに見えた。間違ってたらごめん」
どうして考えていることが分かったんだろう。
外については知らないことばかりで、それを見てみる勇気はない。
「冬真さんは、すごいんですね」
「別に大したことはしてない。僕はただ、僕にできることをやってるだけだよ」
「それでもやっぱり、誰かの為に動けるのは素敵だと思うんです」
「そう言ってもらえるのはありがたいけど、他のみんなに比べれば僕がやってることなんてちっぽけなことだよ」
どうしてそんな言い方をするのか分からないけれど、そう話す冬真さんはなんだか悲しそうだ。
どんな言葉をかければいいのか考えてみたけれど、私にできるのはただ思い浮かんだ言葉を伝えることだけだった。
「どんなに小さなことでも、いつかそれが大きなことになるんじゃないでしょうか…?」
「…やっぱり君は変だね」
「ごめんなさ、」
「ありがとう」
まさかお礼なんて言ってもらえるとは思っていなかった。
私はそんなすごいことなんてしていないのに、漆黒の髪を揺らしながら冬真さんは笑っている。
「今日、ちょっとだけ時間をちょうだい」
「分かりました」
嫌だとは全然思っていないけれど、どうして私なんだろうと少しだけ疑問に思った。
ただ、どんなことをするのか考えるとわくわくしている。
今までこんな気持ちになったことなんてなかったからか、少しだけ不思議な感じがした。
「おはようございます」
この生活にもだいぶ慣れてきて、時々朝ご飯を作らせてもらいながら掃除をして過ごしている。
手足が前より動かしやすくなって、できることも少しずつ増えてきた…と、思う。
「スノウは寝てるから、今のうちにちょっと訊いておきたいことがある」
「質問、ですか?」
「…好きな色ってある?」
あまりに突然の質問にただ固まってしまう。
冬真さんははっとしたように顔をあげて、理由を話してくれた。
「洋服、似たようなのばっかりでしょ?もう少し別のものを新調したいんだ」
「私はここに置いてもらえるだけで充分です」
「僕も新しい服を注文するから、そのついでだし…そんなに気にしなくていい」
好きな色なんて考えたことがなかった。
もしかすると、自分で考えたことがなかったのかもしれない。
「大丈夫?」
「ごめんなさい。そういうことはよく分からなくて…。あ、ズボンが好きです」
「色じゃない…まあ、いいか。そうやって考えてることを伝えてもらえた方がありがたい」
「私が、考えていることですか?」
「初めて会ったときからちょっと分かりづらかったから、言葉にしてもらえた方が誤解が少ないと思う。…自分が苦手なことを相手にお願いするのはちょっと違う気がするけど」
冬真さんは少し気まずそうに話していたけれど、私にとってはその気持ちがありがたかった。
「が、頑張ります」
「…外に出るのは怖い?」
「え…?」
「なんとなくそんなふうに見えた。間違ってたらごめん」
どうして考えていることが分かったんだろう。
外については知らないことばかりで、それを見てみる勇気はない。
「冬真さんは、すごいんですね」
「別に大したことはしてない。僕はただ、僕にできることをやってるだけだよ」
「それでもやっぱり、誰かの為に動けるのは素敵だと思うんです」
「そう言ってもらえるのはありがたいけど、他のみんなに比べれば僕がやってることなんてちっぽけなことだよ」
どうしてそんな言い方をするのか分からないけれど、そう話す冬真さんはなんだか悲しそうだ。
どんな言葉をかければいいのか考えてみたけれど、私にできるのはただ思い浮かんだ言葉を伝えることだけだった。
「どんなに小さなことでも、いつかそれが大きなことになるんじゃないでしょうか…?」
「…やっぱり君は変だね」
「ごめんなさ、」
「ありがとう」
まさかお礼なんて言ってもらえるとは思っていなかった。
私はそんなすごいことなんてしていないのに、漆黒の髪を揺らしながら冬真さんは笑っている。
「今日、ちょっとだけ時間をちょうだい」
「分かりました」
嫌だとは全然思っていないけれど、どうして私なんだろうと少しだけ疑問に思った。
ただ、どんなことをするのか考えるとわくわくしている。
今までこんな気持ちになったことなんてなかったからか、少しだけ不思議な感じがした。
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