347 / 385
冬真ルート
第32話
しおりを挟む
冬香さんから預かった花は綺麗に咲いたままだ。
言われたとおりにお世話していると、本当に枯れづらいらしい。
「今日はちょっと出掛けるけど、一緒に来る?」
「お邪魔になりませんか…?」
「全然。寧ろひとりにしておくより一緒に来てもらえた方が安心できる」
冬真は相変わらず優しい。
それに、いつも周りの人たちのことを見ていて本当にすごいと思う。
後ろをついていくと、なんだか可愛らしいお店に辿り着いた。
「いらっしゃいませ」
「いつもの席を借りたい」
「今なら誰もいないからどうぞ。…月見、苦手な飲み物はない?」
「だ、大丈夫だと思います」
雪乃は無言で建物の奥に入っていって、そのまま飲み物を淹れはじめた。
どんな目的でここに来たのか分からないまま、冬真と向かい合わせになるように座る。
「今日は何か特別なことをしに来たわけじゃない」
「え…?」
「そんなに心配しなくても別に危ないことはしないし、強いて言うなら様子を見に来ただけなんだ」
「雪乃の、ですか?」
「雪乃がというより、事件の──」
冬真がそこまで話したとき、少し離れた場所から苦しそうな声が聞こえる。
「ごめん、ちょっとここで待ってて」
「えっと…」
何も答えられずにいると、冬真は小走りで声がした方に走っていった。
「雪乃、この人どこから来たの?」
「…近くの珈琲豆専門店」
その間にも、痛みを堪えているような声とかちゃかちゃと何かを準備している音が聞こえる。
「出血が酷い。なんでもいいから使えそうな布があれば持ってきて。
あと、この人を病院に運んだ方がいい。…身元がはっきりしてるから、僕のところじゃなくても大丈夫」
「分かった」
ただ座っていることなんてできなくて、冬真がいる方へ足を向ける。
折角用意してくれた洋服なので申し訳なく思うけれど、人の命がかかっているなら躊躇している場合じゃない。
何か使えるものがないか探していると、目の前にあるものが転がっていた。
「…あの、これも使えますか?」
「君、それ…」
「ごめんなさい。ハンカチだけでは足りないんじゃないかと思ったので、洋服を切りました」
怒られてしまうと思っていたのに、冬真はただふっと笑った。
「ありがとう。そこで待ってて」
「は、はい」
血が沢山流れているのは少し離れた場所からでも分かった。
ただ、その人がどうしてそんな怪我を負っているのかまでは分からない。
「月見は、ああいう光景を見ても平気なの?」
「痛そうだな、とは思います。だけど、見ていても平気です」
「…看護助手とか向いているかもしれない」
雪乃の一言がよく聞こえなかったけれど、聞き返す前に大きなサイレンが聞こえてくる。
真っ白な服に見を包んだ人たちが倒れていた人を運んでいった。
「これでもう大丈夫。ふたりのおかげで助かった。ありがとう」
言われたとおりにお世話していると、本当に枯れづらいらしい。
「今日はちょっと出掛けるけど、一緒に来る?」
「お邪魔になりませんか…?」
「全然。寧ろひとりにしておくより一緒に来てもらえた方が安心できる」
冬真は相変わらず優しい。
それに、いつも周りの人たちのことを見ていて本当にすごいと思う。
後ろをついていくと、なんだか可愛らしいお店に辿り着いた。
「いらっしゃいませ」
「いつもの席を借りたい」
「今なら誰もいないからどうぞ。…月見、苦手な飲み物はない?」
「だ、大丈夫だと思います」
雪乃は無言で建物の奥に入っていって、そのまま飲み物を淹れはじめた。
どんな目的でここに来たのか分からないまま、冬真と向かい合わせになるように座る。
「今日は何か特別なことをしに来たわけじゃない」
「え…?」
「そんなに心配しなくても別に危ないことはしないし、強いて言うなら様子を見に来ただけなんだ」
「雪乃の、ですか?」
「雪乃がというより、事件の──」
冬真がそこまで話したとき、少し離れた場所から苦しそうな声が聞こえる。
「ごめん、ちょっとここで待ってて」
「えっと…」
何も答えられずにいると、冬真は小走りで声がした方に走っていった。
「雪乃、この人どこから来たの?」
「…近くの珈琲豆専門店」
その間にも、痛みを堪えているような声とかちゃかちゃと何かを準備している音が聞こえる。
「出血が酷い。なんでもいいから使えそうな布があれば持ってきて。
あと、この人を病院に運んだ方がいい。…身元がはっきりしてるから、僕のところじゃなくても大丈夫」
「分かった」
ただ座っていることなんてできなくて、冬真がいる方へ足を向ける。
折角用意してくれた洋服なので申し訳なく思うけれど、人の命がかかっているなら躊躇している場合じゃない。
何か使えるものがないか探していると、目の前にあるものが転がっていた。
「…あの、これも使えますか?」
「君、それ…」
「ごめんなさい。ハンカチだけでは足りないんじゃないかと思ったので、洋服を切りました」
怒られてしまうと思っていたのに、冬真はただふっと笑った。
「ありがとう。そこで待ってて」
「は、はい」
血が沢山流れているのは少し離れた場所からでも分かった。
ただ、その人がどうしてそんな怪我を負っているのかまでは分からない。
「月見は、ああいう光景を見ても平気なの?」
「痛そうだな、とは思います。だけど、見ていても平気です」
「…看護助手とか向いているかもしれない」
雪乃の一言がよく聞こえなかったけれど、聞き返す前に大きなサイレンが聞こえてくる。
真っ白な服に見を包んだ人たちが倒れていた人を運んでいった。
「これでもう大丈夫。ふたりのおかげで助かった。ありがとう」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる