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冬真ルート
第35話
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「おはようごさいます」
翌朝、私は水を換えながら花に話しかける。
返事がかえってくるわけではないけれど、なんとなく言葉をかけてみたかった。
「これで今日も元気でいられるでしょうか…」
そんな言葉をかけて、ベッドから降りる。
部屋を出ると、もう冬真が朝ご飯の準備をしていた。
「お、おはようございます」
「おはよう。もう少し寝ててもいいのに、君は毎日律儀だね」
「私にもできることはありませんか?」
「それじゃあ、そっちの味噌汁をお椀に入れて」
「分かりました」
できるだけ綺麗に盛りつけていると、大きな音が鳴り響く。
「ちょっと待ってて」
「は、はい」
冬真は大きく息を吐いて、線がついた真っ黒なものを持ちあげた。
「もしもし。…すみません、僕はその日所用があるので参加することはできません。失礼します」
がちゃんと置かれた音がしたけれど、それは見たことがないものでどうしても魅入ってしまった。
「これが気になる?」
「実物を見たのは初めてで、綺麗だなって思ったんです。電話、なんでしょうか?」
「これは黒電話。今の家にあるのはダイヤル式のが多いだろうから、こういうのは珍しく見えると思う」
「そうなんですね。その…」
内容を聞いてしまってもいいのか迷って、そこまでで黙ってしまう。
すると、彼はあっさり話してくれた。
「時々大学の人から電話がかかってくることがあるんだ。あんまり関わりたくないし、僕にはもうこの場所があるからあんなことを話されることにもうんざりしてる。
…流石に面と向かって連絡してくるなとは言えないし、ちょっと困ってる」
疲れているというのは見ているとすぐに分かった。
それでも冬真はすぐいつもの表情に変わって、どこかへ出掛ける準備をしている。
「ごめん。どうしても今日は行かないといけないんだ」
「あの、ひとつ教えてもらえませんか?」
「内容による」
「どうして、大学へ行こうと思ったんですか?」
「前に話さなかった?…ああ、たしかあれは大学がどんな場所かって話だったね」
答えづらいことを訊いてしまっただろうか。
色々な面で不安に思っていると、冬真は苦笑いしながらも答えてくれた。
「設備がいいのと、噂も含めて色々な話が集まるから。…学生らしくない答えだって自分でも分かってるけど、これ以外答えがないんだ」
「ありがとうございます。知ることができてよかったです」
「やっぱり君は変わってるね」
冬真は微笑んでご飯を食べきった。
私にできるのは彼を見送ることだけだ。
「えっと…いってらっしゃいませ」
「いってきます」
優しく頭を撫でられて、だんだんほっぺたが熱くなる。
ちょっと変かもしれないけれど、やっぱり嫌だとは思わない。
冬真が出ていくのを見送り終わって食器を片づけていると、大事そうな封筒が置かれていることに気づく。
…今から走ったら追いつけるだろうか。
翌朝、私は水を換えながら花に話しかける。
返事がかえってくるわけではないけれど、なんとなく言葉をかけてみたかった。
「これで今日も元気でいられるでしょうか…」
そんな言葉をかけて、ベッドから降りる。
部屋を出ると、もう冬真が朝ご飯の準備をしていた。
「お、おはようございます」
「おはよう。もう少し寝ててもいいのに、君は毎日律儀だね」
「私にもできることはありませんか?」
「それじゃあ、そっちの味噌汁をお椀に入れて」
「分かりました」
できるだけ綺麗に盛りつけていると、大きな音が鳴り響く。
「ちょっと待ってて」
「は、はい」
冬真は大きく息を吐いて、線がついた真っ黒なものを持ちあげた。
「もしもし。…すみません、僕はその日所用があるので参加することはできません。失礼します」
がちゃんと置かれた音がしたけれど、それは見たことがないものでどうしても魅入ってしまった。
「これが気になる?」
「実物を見たのは初めてで、綺麗だなって思ったんです。電話、なんでしょうか?」
「これは黒電話。今の家にあるのはダイヤル式のが多いだろうから、こういうのは珍しく見えると思う」
「そうなんですね。その…」
内容を聞いてしまってもいいのか迷って、そこまでで黙ってしまう。
すると、彼はあっさり話してくれた。
「時々大学の人から電話がかかってくることがあるんだ。あんまり関わりたくないし、僕にはもうこの場所があるからあんなことを話されることにもうんざりしてる。
…流石に面と向かって連絡してくるなとは言えないし、ちょっと困ってる」
疲れているというのは見ているとすぐに分かった。
それでも冬真はすぐいつもの表情に変わって、どこかへ出掛ける準備をしている。
「ごめん。どうしても今日は行かないといけないんだ」
「あの、ひとつ教えてもらえませんか?」
「内容による」
「どうして、大学へ行こうと思ったんですか?」
「前に話さなかった?…ああ、たしかあれは大学がどんな場所かって話だったね」
答えづらいことを訊いてしまっただろうか。
色々な面で不安に思っていると、冬真は苦笑いしながらも答えてくれた。
「設備がいいのと、噂も含めて色々な話が集まるから。…学生らしくない答えだって自分でも分かってるけど、これ以外答えがないんだ」
「ありがとうございます。知ることができてよかったです」
「やっぱり君は変わってるね」
冬真は微笑んでご飯を食べきった。
私にできるのは彼を見送ることだけだ。
「えっと…いってらっしゃいませ」
「いってきます」
優しく頭を撫でられて、だんだんほっぺたが熱くなる。
ちょっと変かもしれないけれど、やっぱり嫌だとは思わない。
冬真が出ていくのを見送り終わって食器を片づけていると、大事そうな封筒が置かれていることに気づく。
…今から走ったら追いつけるだろうか。
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