355 / 385
冬真ルート
第39話
しおりを挟む
「冬香、さん?」
「うん。少し走れる?」
「大丈夫だと思います」
スノウも連れて行こうとしたけれど、いつの間にかどこかへ行ってしまったらしい。
「あの、どこへ向かうんですか?」
「そんなに離れていない場所だよ。まったく、冬真は昔からああ言う連中の相手が苦手だからね」
昔からというのはどういうことだろう。
まるでずっと前から知り合いみたいな話し方をする冬香さんに違和感を覚えたものの、それをはっきり口にしないまま気づいたときには建物を外から見られる場所に来ていた。
「蕀姫はここにいてね。…今回は僕の言うことを聞いてほしいんだ」
「分かりました」
どうなるか心配だけれど、ここで引き止めてしまったらいけない気がする。
後ろ姿を見送りながら、その場で息をひそめた。
…どれくらい時間が経っただろうか。
「いい加減にして。僕はあんたたちの相手をしてる暇はないんだ。
無作為にばらまいたものをしっかり回収してからじゃないと話を聞くつもりなんてないから」
そう話していたのは間違いなく冬真で、いつもより声が怖い。
外に何人かの人が出てきて、その人たちと対峙している彼の手には注射器みたいなものが握られていた。
「ふざけるな。あんたは俺たちの神様になるんじゃないのか?」
「意味が分からない。薬物で錯乱してるの?それとも、僕の睡眠薬で寝ぼけてるの?」
そう話した冬真に、ひとりの男性が襲いかかる。
蕀さんたちを呼び出そうとしたら、先に冬香さんが間に入った。
「はい、そこまで!…おまえらの相手は僕がしてやるよ」
呆然と立ち尽くす冬真とは反対に、冬香さんは周りにいた人たちを次々なぎ倒していく。
その手さばきはとても目で追いきれるものじゃなかった。
「大丈夫?」
「……なんで」
「え?」
「なんであんたがいるんだよ」
冬真の声は無機質なものに変わって、それがなんだか哀しんでいるように聞こえる。
冬香さんは手を伸ばそうとしていたけれど、その手が冬真に触れることはなかった。
「いたら駄目なの?折角お兄ちゃんが会いに来たのに」
ふたりの雰囲気がなんとなく似ていると感じたことはあった。
今の言葉が本当だと考えなくても分かる。
ただ、それならどうして冬真はあんなふうに拒絶しているんだろう。
「あんたなんかもう…」
その声は悲鳴みたいで、とても聞いていられない。
ふたりのところに行こうとしていたら、ゾンビみたいにゆっくりと立ちあがる人の姿が視界の隅に入る。
「──お願い、蕀さんたち」
この距離なら絶対に届く。
せめて相手を足止めしないと、今の体勢なら冬香さんが怪我をしてしまう。
冬真はきっとそんなことを望んでいるわけじゃない。
相手を捕まえると同時に、手のひらから沢山血が滴り落ちる。
それを止める術を私は知らない。
「うん。少し走れる?」
「大丈夫だと思います」
スノウも連れて行こうとしたけれど、いつの間にかどこかへ行ってしまったらしい。
「あの、どこへ向かうんですか?」
「そんなに離れていない場所だよ。まったく、冬真は昔からああ言う連中の相手が苦手だからね」
昔からというのはどういうことだろう。
まるでずっと前から知り合いみたいな話し方をする冬香さんに違和感を覚えたものの、それをはっきり口にしないまま気づいたときには建物を外から見られる場所に来ていた。
「蕀姫はここにいてね。…今回は僕の言うことを聞いてほしいんだ」
「分かりました」
どうなるか心配だけれど、ここで引き止めてしまったらいけない気がする。
後ろ姿を見送りながら、その場で息をひそめた。
…どれくらい時間が経っただろうか。
「いい加減にして。僕はあんたたちの相手をしてる暇はないんだ。
無作為にばらまいたものをしっかり回収してからじゃないと話を聞くつもりなんてないから」
そう話していたのは間違いなく冬真で、いつもより声が怖い。
外に何人かの人が出てきて、その人たちと対峙している彼の手には注射器みたいなものが握られていた。
「ふざけるな。あんたは俺たちの神様になるんじゃないのか?」
「意味が分からない。薬物で錯乱してるの?それとも、僕の睡眠薬で寝ぼけてるの?」
そう話した冬真に、ひとりの男性が襲いかかる。
蕀さんたちを呼び出そうとしたら、先に冬香さんが間に入った。
「はい、そこまで!…おまえらの相手は僕がしてやるよ」
呆然と立ち尽くす冬真とは反対に、冬香さんは周りにいた人たちを次々なぎ倒していく。
その手さばきはとても目で追いきれるものじゃなかった。
「大丈夫?」
「……なんで」
「え?」
「なんであんたがいるんだよ」
冬真の声は無機質なものに変わって、それがなんだか哀しんでいるように聞こえる。
冬香さんは手を伸ばそうとしていたけれど、その手が冬真に触れることはなかった。
「いたら駄目なの?折角お兄ちゃんが会いに来たのに」
ふたりの雰囲気がなんとなく似ていると感じたことはあった。
今の言葉が本当だと考えなくても分かる。
ただ、それならどうして冬真はあんなふうに拒絶しているんだろう。
「あんたなんかもう…」
その声は悲鳴みたいで、とても聞いていられない。
ふたりのところに行こうとしていたら、ゾンビみたいにゆっくりと立ちあがる人の姿が視界の隅に入る。
「──お願い、蕀さんたち」
この距離なら絶対に届く。
せめて相手を足止めしないと、今の体勢なら冬香さんが怪我をしてしまう。
冬真はきっとそんなことを望んでいるわけじゃない。
相手を捕まえると同時に、手のひらから沢山血が滴り落ちる。
それを止める術を私は知らない。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる