物置小屋

黒蝶

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999本の薔薇(分類不能・悲哀に満ちた彼女の想い)

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君もここにきてたんだね。久しぶり。
私?私は...まあまあかな。
そっちは元気だった?
それならよかった。あ、これ?ちゃんとつけて、お守り代わりにしてるよ。
この前の遊園地、楽しかったね。特に、最後に乗った定番の観覧車。
あそこからの景色、私は大好きだったよ。
そうだ、もし会えたら渡そうと思ってたものがあるんだ。
ん?見てのとおり薔薇です。けど、二本であることに意味があるの。
...本当は違う本数用意しないといけなかったんだけど、間に合わなかったから。
ううん、なんでもない。
二本の薔薇の花言葉は、『あなたと二人きり』。...素敵でしょ?
え、だってポピュラーなのよりこっちの方がいいと思ったんだもん。
駄目だった?...喜んでくれたならよかった。
ごめん、私今日はもう少しこの橋からの景色を見ていたいから...それじゃあまた、予定が合ったらどこかに行こうね。


...ふう、なんとか誤魔化せたかな。
まさか今から飛び降りる人があんな顔をするとは誰も思わないもんね。
最後だから言いたい放題言わせてもらおうかな。
...あなたに出会えてよかった。
でもね、もう限界みたい。だから...ごめんなさい。
ずっと愛してた。これからもそれは変わることはないけれど...もう話せるときもないのかもしれない。
もう少しちゃんとお話すればよかったな...最期だったのに。
吃驚するくらい気持ちが軽い。
これから私は、この景色に溶けるんだ。
...大丈夫、怖くない。
ねえ、神様。もう私みたいな失敗作造っちゃ駄目だよ。
心が満たされたのは、彼が側にいてくれたときだけだった。
毎日罵声を浴びせられて、そんな私がいる資格なんてない。
けど、今だってさっきの会話が鮮明に思い出せる。
ああ、やっぱり...恥ずかしくて、重荷になりたくなくて直接は言えなかったけど...ずっと大好きでいさせてね。
そのくらいは赦してください。
...それじゃあ、さようなら。
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999本の薔薇の花言葉は、『たとえ生まれかわっても愛し続ける』。
彼女の愛は変わらない。けれど彼女は...。
『どうして自殺なんてするのか分からない』、そう言う人は追い詰められたことがないから分からないのだと、幸福な道を歩いてきたから理解できないのだと思います。
理解はしなくていい。けれど、罵倒するのはやめてください。
その人たちをもう一度殺すようなことは絶対に言わないでください。
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