物置小屋

１人向け・イベント系

世界を彩った話(視える人・物念シリーズ)

今夜も星が綺麗でよかった。
ん…？君は誰？
いつもいるような気がするんだけど、もしかして顔見知りだったり…。
ごめんなさい。俺は人間ともあなたたちみたいな存在ともあんまり上手く話せなくて…。
今のあなたの姿は、俺にしか視えていないでしょう？普通の人間たちは無視してるわけじゃなくて、単純に視えないんだと思います。
…そうですね。乱暴な人間が多いのも事実です。
だけどきっと、そんな人ばかりではないんだと思います。
俺はここで年越しを迎える為にきたんです。
あなたはいつもここにいるんですか？…そうなんですね。
それじゃあ、あなたを拾ってもいいですか？…といっても、交番に届けることになると思うんですけど…。
帰り道、分かるんですか？分かりました、それじゃあ俺がこのまま運びます。


普段はどんな生活をしているんですか？いや、少し気になって…。
見た目も綺麗だし、大切にしてもらえているんだろうとは思うんです。違ったらすみません。
…間違えてないんですか？あなたの持ち主はどんな人ですか？
そうなんですね。おばあさん…もしかしてあの人ですか？
あの、こんばんは。もしかして、櫛を落としませんでしたか？
さっきあなたがこの道を通っていった後で拾ったんです。ずっとあたりを探しているようだったので、もしかしたらこの子の持ち主なんじゃないかなって…。
旦那さんからもらったもの…素敵な話ですね。
いえ、俺は全然大したことはしていないので、お礼なんてもらえません。
どうかこれからもその子を大切にしてください。どうしても何かしないと気がすまないと言うなら、それだけで充分です。
あの、どうかしましたか？ああ、えっと…。すみません、この子って言ったら失礼でしたよね。
妖精、ですか？その櫛を持っているとあなたを護ってくれる…きっとその妖精さんは優しいんですね。
あなたが櫛を大切にしていることを知っているからかもしれません。
いえ、俺はそういうものが存在すると思って生活しているので…。
夜も遅いし、気をつけてください。それでは、失礼します。

…櫛の付喪神か。あの人はきっと視える人だったんだろうな。
それが何かの拍子に視えなくなって、寂しいと思っていたのかもしれない。
あ、もうすぐ年が開ける。今年はここで祝うことになったけど、いい話が聞けてよかった。
…やっぱり人間より、そうじゃない世界の方が楽しそうだ。
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視える人と物念シリーズで綴ってみました。