皓皓、天翔ける

黒蝶

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第4章『暴走』

第19話

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目の前に広がるのは、キャバクラのような場所。
その一角に座っているのは、あの痣があった男性と蝶のような女性だ。
「蘭ちゃん、今夜も沢山注文するからね」
「ありがとう。頼れるのはあなただけよ」
こういう言葉で喜ぶのか…なんて呑気に考えながら見つめる。
ふたりは楽しそうだけど、女性の方に陰を感じてしまうのは気のせいだろうか。

場面は切り替わり、昼間どこかの定食屋さんにいるふたり組が話している。
「ちょっと蘭ちゃんのところに行ってくる」
「おまえ、キャバクラ狂になってないか?」
「うるさい!彼女には金が必要なんだよ!」
ふたりの男性が言い争っていて、一方は痣の男性だ。
「頼むよ吉田。おまえならこの気持ちが分かるだろ?」
「おまえの親御さんが事故で死んで苦労したのは知ってるよ。けど、その子がおまえが聞く前から話してきたところに違和感を感じるんだ。
…今度外で会うんだろ?近くで見させてもらう。それで信頼できそうなら俺もお金出すよ」
「吉田…」
「いいか中島。おまえは昔から人がよすぎて心配なんだよ。危なっかしいから俺が見てる」
「分かった。約束だぞ。あと…さっきは声を荒げてごめん」
ふたりは本当に仲がいいんだと見ていてすぐ分かる。
どこまでも固い友情は、私の心を温かくしてくれた。

──そして迎えたデートの日。
「蘭ちゃん、おまたせ」
「中島さん、こんにちは。どこから行きましょうか」
「最近できた水族館は?」
「いいですね!楽しそう」
ホームへの階段をのぼりながら話すふたりの後を、距離をとってついていく人影がふたつ。
ひとりは吉田さんだけど、もうひとりは雰囲気が違う。
明確な殺意を持っていたのか、列車が来た瞬間にキャバ嬢の背中を強く押した。
「きゃあ!?」
「危ない!」
男性は咄嗟にキャバ嬢の体を強く引き上げ、自分が体勢を崩す。
キャバ嬢を庇い線路へ落ちた彼の目にうつったのは、慌てて駆け寄るキャバ嬢…ではなく、喧嘩別れになっていた親友だ。
目の前で血しぶきがあがり、悲鳴があちこちからあがる。
最期に見たのは、手を伸ばしたまま絶望する親友の姿だった。

再び場面が変わり、数日経過したと思われる場面が映し出される。
《蘭ちゃん、無事でよかった。けど、吉田には悪いことしちゃったな…。後で謝りに行かないと》
死んだことに気づいていないのか、蘭と呼ばれていた女性に近づく。
話しかけようとした瞬間、女から出た言葉は彼を蝕むのに充分なものだった。
「あーあ、まさか死んじゃうとはね…。いいカモだったのに」
「蘭ちゃん、そんなこと言うなんて悪い子だね」
「だってそうでしょ?お金がなかったら誰があんなのに近づくかっての」
「本命が俺だけなんて、誰も気づいていないだろうね」
ホストとキャバ嬢は嘲笑っている。
それを見た男性から、黒い涙が零れ落ちた。
《俺が、悪かったのか?ただ利用されて、本当に馬鹿だな…。ああ、憎い。あいつだけはユルサナイ!》
男性の腕には大きな蜘蛛の痣がある。
憎しみに呑まれた表情で、じっとふたりを見つめていた。
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