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第5章『隠しごと』
第27話
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物語は、夜遅くに内緒話をするふたりからはじまる。
「兄貴、ちょっといい?」
「どうした?」
「あのさ…俺、明菜のことが好きかもしれない」
「ヒロ、おまえ…そっか。初めて知ったよ」
「まだ告白する勇気はないけど、いつか伝えようと思ってる。そのときは協力してくれる?」
ヒロと呼ばれた弟は、照れくさそうにしながら男子学生に笑顔で話していた。
兄はぎこちない笑みで弟に語りかける。
「勿論。俺はお兄ちゃんだからな。けど、あんまりもたもたしてると誰かに取られるかもしれないぞ」
「それは、まあ…。ありがとう兄貴」
弟が部屋を出たのを確認して、兄はその場で頭を抱えたまま崩れ落ちる。
誰にも言えない想い、それを抱え続ける苦しみ…ぐちゃぐちゃになった感情が一気に伝わってきた。
場面は変わり、数ヶ月経過したことが分かる。
「…ふたりとも、楽しそうだな」
少し離れた場所から弟と想い人を見つめる兄は、苦しそうに胸を押さえる。
「なお君じゃん!久しぶり」
「ああ、久しぶり」
「あのね、さっきヒロ君にも渡したんだけど…よかったら受け取って」
そのクッキーは、さっき列車の中で見たものと瓜二つだった。
お兄さんが驚いていたのも頷ける。
「ありがとう。…明菜ってほんと料理上手だよな」
「そうかな?喜んでもらえたならよかった」
ふたりが楽しそうに話しているところに、弟が駆け寄っていく。
「兄貴もいたのか…。今帰り?」
「これからバイトなんだ」
「引き止めちゃってごめんね」
「ありがとな。それじゃあふたりとも、また」
手をふってその場を離れる兄の目には涙が溜まっていて、やっぱり苦しそうだった。
──そして迎えたある雨の日、事件がおこる。
「今日はつきあってくれてありがとう。久々にバイクで走れて気持ちよかった」
「俺も楽しかったよ」
「あのさ、兄貴。俺、そろそろ告白しようと思ったんだけど…」
「なんでまだ足踏みしてるんだ?」
「だって、断られたら今の関係もなくなっちゃうかもしれないだろ?そしたらもう話せなくなるんじゃないかって…」
その声を聞くのと、勢いよくヘルメットをかぶり直すのはほぼ同時だった。
「兄貴?」
「いつまでもたもたしてるんだ。伝えたいことが伝えられずに終わって、それで本当にいいと思ってるのか?」
「それは…。でも、兄貴にこの気持ちは分からないよ!」
そこまで言葉を出して、弟ははっとする。
兄の表情は確認できなかったが、弟の頭をひと撫でした。
「兄貴、あの、」
「そうだな。俺はおまえの全部が分かるわけじゃない。ちょっと頭冷やしてくるから、ヒロはそのまま留守番しててくれ」
「兄貴、待って!」
制止を振り切り、そのままバイクにまたがる。
大学のような建物まではしらせた後、頭を抱えながら停まった。
「…かっこ悪いな、俺」
ごめんの文字を打っては消し、隣の雑貨屋さんに入って何かを購入したところで再びバイクをはしらせる。
大きなカーブにさしかかったとき、子猫のようなものが飛び出してきた。
「……!」
勢いよくハンドルを切った男子学生は、勢いよく投げ飛ばされる。
打ちどころが悪かったようで、全身に痛みが伝わってきた。
「──ほんと、運ないな」
最期にそう吐き捨て、静かに目を閉じる。
彼の表情は穏やかだった。
「兄貴、ちょっといい?」
「どうした?」
「あのさ…俺、明菜のことが好きかもしれない」
「ヒロ、おまえ…そっか。初めて知ったよ」
「まだ告白する勇気はないけど、いつか伝えようと思ってる。そのときは協力してくれる?」
ヒロと呼ばれた弟は、照れくさそうにしながら男子学生に笑顔で話していた。
兄はぎこちない笑みで弟に語りかける。
「勿論。俺はお兄ちゃんだからな。けど、あんまりもたもたしてると誰かに取られるかもしれないぞ」
「それは、まあ…。ありがとう兄貴」
弟が部屋を出たのを確認して、兄はその場で頭を抱えたまま崩れ落ちる。
誰にも言えない想い、それを抱え続ける苦しみ…ぐちゃぐちゃになった感情が一気に伝わってきた。
場面は変わり、数ヶ月経過したことが分かる。
「…ふたりとも、楽しそうだな」
少し離れた場所から弟と想い人を見つめる兄は、苦しそうに胸を押さえる。
「なお君じゃん!久しぶり」
「ああ、久しぶり」
「あのね、さっきヒロ君にも渡したんだけど…よかったら受け取って」
そのクッキーは、さっき列車の中で見たものと瓜二つだった。
お兄さんが驚いていたのも頷ける。
「ありがとう。…明菜ってほんと料理上手だよな」
「そうかな?喜んでもらえたならよかった」
ふたりが楽しそうに話しているところに、弟が駆け寄っていく。
「兄貴もいたのか…。今帰り?」
「これからバイトなんだ」
「引き止めちゃってごめんね」
「ありがとな。それじゃあふたりとも、また」
手をふってその場を離れる兄の目には涙が溜まっていて、やっぱり苦しそうだった。
──そして迎えたある雨の日、事件がおこる。
「今日はつきあってくれてありがとう。久々にバイクで走れて気持ちよかった」
「俺も楽しかったよ」
「あのさ、兄貴。俺、そろそろ告白しようと思ったんだけど…」
「なんでまだ足踏みしてるんだ?」
「だって、断られたら今の関係もなくなっちゃうかもしれないだろ?そしたらもう話せなくなるんじゃないかって…」
その声を聞くのと、勢いよくヘルメットをかぶり直すのはほぼ同時だった。
「兄貴?」
「いつまでもたもたしてるんだ。伝えたいことが伝えられずに終わって、それで本当にいいと思ってるのか?」
「それは…。でも、兄貴にこの気持ちは分からないよ!」
そこまで言葉を出して、弟ははっとする。
兄の表情は確認できなかったが、弟の頭をひと撫でした。
「兄貴、あの、」
「そうだな。俺はおまえの全部が分かるわけじゃない。ちょっと頭冷やしてくるから、ヒロはそのまま留守番しててくれ」
「兄貴、待って!」
制止を振り切り、そのままバイクにまたがる。
大学のような建物まではしらせた後、頭を抱えながら停まった。
「…かっこ悪いな、俺」
ごめんの文字を打っては消し、隣の雑貨屋さんに入って何かを購入したところで再びバイクをはしらせる。
大きなカーブにさしかかったとき、子猫のようなものが飛び出してきた。
「……!」
勢いよくハンドルを切った男子学生は、勢いよく投げ飛ばされる。
打ちどころが悪かったようで、全身に痛みが伝わってきた。
「──ほんと、運ないな」
最期にそう吐き捨て、静かに目を閉じる。
彼の表情は穏やかだった。
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