皓皓、天翔ける

黒蝶

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第14章『協力者』

第71話

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「宵月は今日欠席だ。他は全員いるか?」
氷雨君が学校を休むなんて珍しい。
…お弁当、どうしよう。
先生の授業をぼんやり聞いていると、すぐ近くに小さな男の子がいた。
《ねえ、何してるの?》
「…授業を受けているの。あなたはここで何をしているの?」
《にぎやかだったから来たんだ!》
話を聞きながら違和感に気づく。
小声とはいえ、小さい子と話していれば誰かは気づくだろう。
「おうちの人は一緒じゃないの?」
そう尋ねたのと同時にチャイムが鳴り、男の子はきゃははと笑いだす。
どうしようと戸惑ったけど、ただ耳をふさいで俯いていることしかできなかった。
しばらくして顔をあげると、男の子がいなくなっている。
誰にも気づかれないようにそっと教室を抜け出した。
「あら、氷空ちゃん?学校はどうしたの?」
「…ちゃんと行ってきたよ」
おばさんに嘘を吐くのは心が痛んだけど、どうしても学校にはいたくなかったのだ。
おばさんは何も訊かずに、もらったお菓子のことや他の部屋のお友だちの話を聞かせてくれた。
「成川さん、そろそろ検査の時間ですよ」
「あら、もう?教えてくれてありがとう」
「…それじゃあまた来るね、おばさん」
おばさんの部屋から出たところで誰かとぶつかる。
「あ…すみま、」
そこで言葉を止めたのは、相手の目に生気がなかったからだ。
列車のお客様たちとも違う雰囲気に、私はただ黙っていることしかできなかった。
「聞いてる?」
「あ…ごめんなさい」
夜、いつものようにフード付きマントを羽織っていると氷雨君に声をかけられる。
話しかけられていたことにも気づかないくらい、町の異変について考えていた。
「何かあった?」
「…少し」
「多少は俺にも関係ある話なんじゃない?」
「どうしてそう思ったの?」
「勘。あとは、この時期ならおこり得ることだから」
どういう意味なのか聞こうとしたけど、上手く言葉にできない。
話して困らせてしまうのが嫌で、そのまま黙った。
しばらく沈黙が続いたところで話を切り出される。
「たとえば、町で生者ではない何かに会ったとか」
「……!」
「やっぱりそうか。…ハロウィン前になると境界線が曖昧になって、心に未練を抱えたまま駅に辿り着けなくなる人が増えるんだ。
今日は町内を見回っていたんだけど、それじゃ足りないみたいだね」
「それで学校を休んでいたの?」
「うん。俺だけじゃ対処のしようがないから知り合いにも頼んだんだ。
…相談していたら、借りはしっかり返したいって言われたから。助けられたのはこっちだし、貸しだなんて思ってないのに」
氷雨君は困ったように頭を抱えていたものの、データの整理をはじめた。
「一緒に来て。あと、しばらく学校には行かないからお弁当は休みにしてほしい」
「…あの、私にも協力させてもらえないかな?」
「……考えておく」
氷雨君はそれだけ言って黙ってしまった。
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