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第17章『英雄譚』
閑話『ヒーローの話』
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星影氷空を見送った後、いつもどおり手紙を届けに行った。
「こんにちは。新田響一さんでしょうか?」
「そうですけど…」
「弘中正治さんから手紙が届いています」
「え?弘中君はもう…」
「読んでみてください」
少し強引に手紙を渡す。
悪戯と思われているかもしれないが、少しでも共に過ごす時間があったなら本人だと分かるだろう。
【新田
いつも俺と仲良くしてくれてありがとう。強面な俺に普通に話しかけてくれるの、おまえくらいだった。
勉強を教えてもらえたおかげで成績上がったし、一緒にいてくれたおかげで充実した毎日を過ごせた。
突然だが、俺に何かあったときのために伝えておく。
ネックレスの鍵、実はある書類保存庫?の鍵なんだ。住所も書いておくから、是非訪ねてほしい。
保存庫の中身のことは知り合いに頼んであるから、中に入っている連絡先に電話してくれ。その人は強い味方になってくれるはずだ。
少しでもおまえの心が救われる結果になることを祈ってる。
俺のたったひとりの親友へ。幸せに暮らしてくれるよう願う】
「…彼、僕のせいで死んだんですよ。僕に幸せになる資格なんてない」
新田響一はその場に崩れ落ちた。
流れる涙を止める術はなく、ただ見ていることしかできない。
理不尽な人間たちにより、善人が先に死んでいく。
今の人間界でこの摂理を変えるのは至難の業だ。
「弘中様はあなたの幸福を願っています。たとえその死がどんな形であったとしても、変わることはないでしょう」
「…本当にそうでしょうか?」
「少なくとも、私はそうだと思います」
新田響一は立ちあがり、もう一度手紙に目を通す。
「…この住所ってどっちでしょうか」
「ご案内いたします」
「それから、正也という名前を知りませんか?」
「……おそらくですが、亡くなられた弘中様の弟さんです」
「弟がいたなんて知らなかった。もっとちゃんと話せばよかったな…」
保管所まではそんなに遠くなかった。
「私が関係できるのはここまでです」
「ありがとうございました」
一旦立ち去ろうとしたが、一応遺したものがしっかり渡るかを確認した。
5分ほどで建物を出た新田響一は号泣している。
その手に握られている資料のうちの1枚に、教育委員会に送った趣旨が書かれているのが見えた。
今度こそ関係できるのはここまでだ。
「…よかった」
弘中正治はこれからも新田響一の心のなかに生き続ける。
そして、彼はどこまでもヒーローなのだ。
「お疲れ様です」
「あ、リーダー。お疲れ様です」
「仕分け作業、手伝いますよ」
「ありがとうございます。まださばききれてなくて…」
手紙を仕分けながら、星影氷空のことを考える。
やはり彼女は不思議な存在だ。
「こんにちは。新田響一さんでしょうか?」
「そうですけど…」
「弘中正治さんから手紙が届いています」
「え?弘中君はもう…」
「読んでみてください」
少し強引に手紙を渡す。
悪戯と思われているかもしれないが、少しでも共に過ごす時間があったなら本人だと分かるだろう。
【新田
いつも俺と仲良くしてくれてありがとう。強面な俺に普通に話しかけてくれるの、おまえくらいだった。
勉強を教えてもらえたおかげで成績上がったし、一緒にいてくれたおかげで充実した毎日を過ごせた。
突然だが、俺に何かあったときのために伝えておく。
ネックレスの鍵、実はある書類保存庫?の鍵なんだ。住所も書いておくから、是非訪ねてほしい。
保存庫の中身のことは知り合いに頼んであるから、中に入っている連絡先に電話してくれ。その人は強い味方になってくれるはずだ。
少しでもおまえの心が救われる結果になることを祈ってる。
俺のたったひとりの親友へ。幸せに暮らしてくれるよう願う】
「…彼、僕のせいで死んだんですよ。僕に幸せになる資格なんてない」
新田響一はその場に崩れ落ちた。
流れる涙を止める術はなく、ただ見ていることしかできない。
理不尽な人間たちにより、善人が先に死んでいく。
今の人間界でこの摂理を変えるのは至難の業だ。
「弘中様はあなたの幸福を願っています。たとえその死がどんな形であったとしても、変わることはないでしょう」
「…本当にそうでしょうか?」
「少なくとも、私はそうだと思います」
新田響一は立ちあがり、もう一度手紙に目を通す。
「…この住所ってどっちでしょうか」
「ご案内いたします」
「それから、正也という名前を知りませんか?」
「……おそらくですが、亡くなられた弘中様の弟さんです」
「弟がいたなんて知らなかった。もっとちゃんと話せばよかったな…」
保管所まではそんなに遠くなかった。
「私が関係できるのはここまでです」
「ありがとうございました」
一旦立ち去ろうとしたが、一応遺したものがしっかり渡るかを確認した。
5分ほどで建物を出た新田響一は号泣している。
その手に握られている資料のうちの1枚に、教育委員会に送った趣旨が書かれているのが見えた。
今度こそ関係できるのはここまでだ。
「…よかった」
弘中正治はこれからも新田響一の心のなかに生き続ける。
そして、彼はどこまでもヒーローなのだ。
「お疲れ様です」
「あ、リーダー。お疲れ様です」
「仕分け作業、手伝いますよ」
「ありがとうございます。まださばききれてなくて…」
手紙を仕分けながら、星影氷空のことを考える。
やはり彼女は不思議な存在だ。
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