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第26章『届かなかった歌を君に』
第153話
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《人とぶつかっていても気づいていなかったり、警告音が聞こえていなかったり…》
「【想像しかできませんが、とても大変ですね】」
《よそ見していると一大事になっていたりするから、結構相手をじっと見てしまっていたり…いちゃもんつけたと誤解されたこともあるんです》
少女はもう一度クレープを口に入れて、味わっているみたいだった。
しばらく沈黙が流れていたけど、少女はあることに気づく。
《あれ…?予備の補聴器、いつ壊れちゃったんだろう》
鞄の中を確認して、小さく呟く。
「【何かお手伝いできることはありますか?】」
《大丈夫です。帰りにいつもの修理屋さんに行くので…》
そこまで話して少女ははっとした。
《そういえば私、雑貨屋さんの帰りに友だちを待っていて…それからどうしたんだっけ》
紅茶を飲んで落ち着こうとしたみたいだけど、どんどん記憶が呼び覚まされているみたいだ。
《いつもからかってくるクラスメイトに見つかって、体が大きい人にぶつかられて…道路の方に、転んだ》
グラスが床にぶつかって、大きな音をたてて割れる。
《あのとき補聴器が壊れて、耳鳴りが酷くなって…トラックがライトを光らせながらはしってきたんだ》
頭をかかえて、少女は悲しそうな顔で問いかけてくる。
《私、死んじゃったんですか?》
「【この列車は、お客様にさいごの旅をお楽しみいただくためにあるものです】」
《そっか。…まだ美春に感謝の気持ちを伝えてないのに》
「【それでしたら、手紙を書くのはいかがでしょうか?相手に想いを届けられると思うのですが…】」
《手紙…書いてみてもいいですか?》
「【すぐに一式お持ちします。紅茶やお食事のおかわりはいかがですか?】」
《お願いします。…クレープのトッピング、はちみつを追加してもらえませんか?美味しいって言ってたから…》
少女は気丈に振る舞っているけど、目が潤んでいる。
誰だって、いきなりあなたは死んでいるなんて言われて簡単に受け入れられない。
それでも少女は必死に想いを綴っている。
私にできるのは、紅茶とはちみつを追加トッピングしたクレープを渡して見守ることだけだ。
《で、できた…》
「『お疲れ様でした』」
《あ…お兄さんは手話できるんですね》
「『様々な事情を抱えたお客様をお見送りさせていただきましたので、多少の会話ならできます』」
氷雨君はすらすらと手を動かして、少女も楽しそうに会話している。
私が分かる手話は、きっとふたりの半分もない。
「『お楽しみいただけましたか?』」
《…!はい、すごく。ありがとうございました》
「『こちらこそありがとうございます』」
本当に簡単なものしか分からないけど、少しでも少女の心に寄り添えたならよかった。
手をふって降りていく彼女の背中を見送る。
その笑顔には、前を向こうという意思が現れているような気がした。
「【想像しかできませんが、とても大変ですね】」
《よそ見していると一大事になっていたりするから、結構相手をじっと見てしまっていたり…いちゃもんつけたと誤解されたこともあるんです》
少女はもう一度クレープを口に入れて、味わっているみたいだった。
しばらく沈黙が流れていたけど、少女はあることに気づく。
《あれ…?予備の補聴器、いつ壊れちゃったんだろう》
鞄の中を確認して、小さく呟く。
「【何かお手伝いできることはありますか?】」
《大丈夫です。帰りにいつもの修理屋さんに行くので…》
そこまで話して少女ははっとした。
《そういえば私、雑貨屋さんの帰りに友だちを待っていて…それからどうしたんだっけ》
紅茶を飲んで落ち着こうとしたみたいだけど、どんどん記憶が呼び覚まされているみたいだ。
《いつもからかってくるクラスメイトに見つかって、体が大きい人にぶつかられて…道路の方に、転んだ》
グラスが床にぶつかって、大きな音をたてて割れる。
《あのとき補聴器が壊れて、耳鳴りが酷くなって…トラックがライトを光らせながらはしってきたんだ》
頭をかかえて、少女は悲しそうな顔で問いかけてくる。
《私、死んじゃったんですか?》
「【この列車は、お客様にさいごの旅をお楽しみいただくためにあるものです】」
《そっか。…まだ美春に感謝の気持ちを伝えてないのに》
「【それでしたら、手紙を書くのはいかがでしょうか?相手に想いを届けられると思うのですが…】」
《手紙…書いてみてもいいですか?》
「【すぐに一式お持ちします。紅茶やお食事のおかわりはいかがですか?】」
《お願いします。…クレープのトッピング、はちみつを追加してもらえませんか?美味しいって言ってたから…》
少女は気丈に振る舞っているけど、目が潤んでいる。
誰だって、いきなりあなたは死んでいるなんて言われて簡単に受け入れられない。
それでも少女は必死に想いを綴っている。
私にできるのは、紅茶とはちみつを追加トッピングしたクレープを渡して見守ることだけだ。
《で、できた…》
「『お疲れ様でした』」
《あ…お兄さんは手話できるんですね》
「『様々な事情を抱えたお客様をお見送りさせていただきましたので、多少の会話ならできます』」
氷雨君はすらすらと手を動かして、少女も楽しそうに会話している。
私が分かる手話は、きっとふたりの半分もない。
「『お楽しみいただけましたか?』」
《…!はい、すごく。ありがとうございました》
「『こちらこそありがとうございます』」
本当に簡単なものしか分からないけど、少しでも少女の心に寄り添えたならよかった。
手をふって降りていく彼女の背中を見送る。
その笑顔には、前を向こうという意思が現れているような気がした。
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