皓皓、天翔ける

黒蝶

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第28章『泥水に咲く花』

第163話

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「あ、あの…」
少女が起きたのを確認して声をかける。
「ワッフルと、ラテアートはいかがでしょうか?」
《そんなに贅沢なもの、もらってもいいんですか?》
「勿論です。ごゆっくりおくつろぎください」
やっぱり緊張してしまうけど、少女はほっとした様子でワッフルを食べはじめた。
蜂蜜たっぷりの、焼きたてのものだ。
シェフに事情を説明したら作り直してくれた。
《美味しい…。それに、可愛いくまさんですね》
「楽しんでいただけたようでよかったです」
少女はきっと心を固く閉ざしている。
それなら、まずは楽しんでもらうことを第一に考えよう。
《あ、あの…》
「どうされましたか?」
《スケッチブックって置いてありますか?》
「3サイズからお選びいただけます」
《1番大きいものでお願いします》
「かしこまりました」
すぐに用意したけど、何をするつもりなんだろう。
じっと見ていると、少女は鉛筆で何かを描きはじめた。
集中しているみたいだし、今は黙って突っ立っていることしかできない。
からんと鉛筆が転がる音がして拾うと、ぼろぼろになっているのが目に入った。
「…どうぞ」
《ありがとうございます。…これでいいかな》
少女はそう呟くと、1枚の絵を見せてくれた。
そこには色々な花が描かれていて、見ているだけでほっとする。
「素敵な絵ですね」
《…本当にそう思いますか?》
「はい。とても素敵な花畑だな…と、思いました」
思ったことを言い終わった瞬間、少女はぽろぽろと涙を零しはじめる。
「も、申し訳ありません。何か失礼なことを…」
《違うんです。褒められたこととか、認められたことがないから…すみません。
嬉しくて涙が出るなんて嘘だと思ってたけど、本当だったんだ…》
少女の表情から、警戒の色が消えていく。
今なら少女自身のことを尋ねてもいいだろうか。
「お客様は、画家になりたいんですか?」
《一応そうです。…みんなから笑われて、親からは叱られるから言えなくなったけど、どうしても夢を捨てられずにいます》
誰にも認めてもらえない想いを抱えて、きっと苦しかったに違いない。
そんななか、少女は自分の想いを形にしようとしていたのだ。
《勉強はそこそこ、運動は大の苦手な私にとって、絵だけは心を癒やしてくれました。
どんなに辛く苦しいことがあっても、絵を描いていられる時間さえあれば楽しめた…》
少女は肩で息をしながら言葉を続ける。
《私は、誰からも望まれなかった。何をやっても空回りして、ずっとしんどくて…もう、疲れてしまったんです》
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