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第28章『泥水に咲く花』
第164話
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少女は鞄からあるものを取り出して見せてくれた。
画材みたいだけど、素人の私には分からない。
ただ、自分の意志を折られてしまったであろうことは分かる。
「…壊されてしまったんですか?」
《お小遣いを貯めて買ったものだったんですけど、こんなくだらないことをやるより勉強しろって…。
勉強時間は潰さないように内緒で睡眠時間を削っていたんですけど、ねちねち文句を言われ続けました。あの人たちには何も分からないんです》
少女の瞳からはどんどん輝きが消えていく。
言葉の棘が刺さって抜けなくなって、心が壊れていったのかもしれない。
「味を感じなくなったのは、そのあたりからですか?」
《それもばれちゃってたんだ…。その前からです。人と味の好みが合わなくて、そんなの変だって言われて…。
みんなが求める私でいることに疲れていたら、ある日突然ものの味がしなくなりました。何を食べても心が動かない…ずっとそんな感じです》
少女は心を壊されてしまったんだと思う。
何も感じなくなるくらい追いつめられていたなら、彼女の死因はおそらく…。
少女はフォークを持つ手を止めずににこりと微笑む。
《だけど、不思議とこのワッフルは美味しく感じます。私の絵を否定しないでいてくれたからかな?
あなたのおかげで、私なんかでもここにいる意味はあったんだって感じられました》
「…ごゆっくりおくつろぎくださいませ。それから、紅茶のおかわりはいかがいたしましょう?」
《あ…。えっと、紅茶に蜂蜜を入れてもらうことは可能ですか?》
「すぐにお持ちします」
少し離れた場所にあるワゴンから蜂蜜と紅茶を取り出して、つけあわせにマシュマロも一緒に運ぶ。
「おまたせしました」
《ありがとうございます。…こんなにくつろいで自分らしくいられたのは、久しぶりかもしれません》
「た、楽しんでいただけているようで安心しました」
《あなたは優しい人なんですね。だから、誰にも言えなかったことも話せるのかもしれない》
「お客様のお話を聞かせてください」
《…私、ビルの屋上へ行ったんです。そこで絵を描いていたら、男の子と会いました。
それからほとんど毎日通って話をするようになったんですけど、その子がこの春引っ越すことになって…》
そこまで話した少女ははっと顔をあげた。
《…そっか。それで何もかも全部嫌になって飛び降りたんだ》
少女の声は氷のように冷たく…いや、もはや感じる温度さえない。
どこまでも広がる黒い闇を映し出す瞳には、誰の姿もうつっていないらしかった。
画材みたいだけど、素人の私には分からない。
ただ、自分の意志を折られてしまったであろうことは分かる。
「…壊されてしまったんですか?」
《お小遣いを貯めて買ったものだったんですけど、こんなくだらないことをやるより勉強しろって…。
勉強時間は潰さないように内緒で睡眠時間を削っていたんですけど、ねちねち文句を言われ続けました。あの人たちには何も分からないんです》
少女の瞳からはどんどん輝きが消えていく。
言葉の棘が刺さって抜けなくなって、心が壊れていったのかもしれない。
「味を感じなくなったのは、そのあたりからですか?」
《それもばれちゃってたんだ…。その前からです。人と味の好みが合わなくて、そんなの変だって言われて…。
みんなが求める私でいることに疲れていたら、ある日突然ものの味がしなくなりました。何を食べても心が動かない…ずっとそんな感じです》
少女は心を壊されてしまったんだと思う。
何も感じなくなるくらい追いつめられていたなら、彼女の死因はおそらく…。
少女はフォークを持つ手を止めずににこりと微笑む。
《だけど、不思議とこのワッフルは美味しく感じます。私の絵を否定しないでいてくれたからかな?
あなたのおかげで、私なんかでもここにいる意味はあったんだって感じられました》
「…ごゆっくりおくつろぎくださいませ。それから、紅茶のおかわりはいかがいたしましょう?」
《あ…。えっと、紅茶に蜂蜜を入れてもらうことは可能ですか?》
「すぐにお持ちします」
少し離れた場所にあるワゴンから蜂蜜と紅茶を取り出して、つけあわせにマシュマロも一緒に運ぶ。
「おまたせしました」
《ありがとうございます。…こんなにくつろいで自分らしくいられたのは、久しぶりかもしれません》
「た、楽しんでいただけているようで安心しました」
《あなたは優しい人なんですね。だから、誰にも言えなかったことも話せるのかもしれない》
「お客様のお話を聞かせてください」
《…私、ビルの屋上へ行ったんです。そこで絵を描いていたら、男の子と会いました。
それからほとんど毎日通って話をするようになったんですけど、その子がこの春引っ越すことになって…》
そこまで話した少女ははっと顔をあげた。
《…そっか。それで何もかも全部嫌になって飛び降りたんだ》
少女の声は氷のように冷たく…いや、もはや感じる温度さえない。
どこまでも広がる黒い闇を映し出す瞳には、誰の姿もうつっていないらしかった。
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