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第31章『雨の足音』
第187話
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「氷雨君…?」
体を起こすと、自分が汗びっしょりになっていることに気づく。
「起こしたら悪いと思ったけど、いつもよりうなされてるみたいだったから…」
氷雨君の顔を見た途端、涙が溢れてきた。
「…どうしたの?」
涙を止めたいのに、安心して力が抜けたのもあって止まらない。
彼女はあんな理不尽に殺されて、苦しみのなかずっと彷徨っていたんだと思うと体が震えた。
「さ、寒くて…痛くて、怖い」
自分でも何を言っているのか分からないのに、氷雨君は優しく背中をさすってくれた。
そのぬくもりにほっとして、余計に涙がぽろぽろ零れる。
「…少し落ち着いた?」
「うん。ごめんなさい」
「別に謝らなくていい。どんな夢を見てたの?」
今までは隠していたけど、もう話さないといけないかもしれない。
「…さっきのお客様が、殺される夢」
「どういうこと?」
「いつもはもっとはっきり見えていたんだけど、今見た夢は犯人の顔や声が分からなかった。
それに、いつもよりお客様の感情や受けた痛みを激しく感じて…」
「お客様の体験を追憶していたってこと?」
「追憶というか、ただ出来事を見ているだけというか…」
自分のことなのに上手く説明できない。
どうしようか迷ったけど、氷雨君は何も言わずに聞いてくれた。
「追憶の夢…前に古い書物で読んだことはあるけど、実体験を聞いたのは君が初めてだ」
そんなに珍しいものだなんて知らなかった。
「他の人たちは慣れているから平気なんだって思ってた」
「…毎回お客様を見送る度に倒れていたのはそのせいだったんだ」
「ごめんなさい。どう話したらいいのか分からなくて…」
「別に構わない。ただ、できればもう少し早く知りたかった。君は迷惑にならないようにって考えたんだろうけど、いつもひとりでそういう光景を見るのは苦しいでしょ?
君はひとりで色々と抱えこみすぎだ。もう少し周りによりかかることを覚えた方がいい」
「自分ではもう沢山助けてもらっているつもりなんだけど…なかなか上手くいかないものだね」
特に氷雨君には助けられっぱなしで、いつもお世話になっている。
「遠慮してしまうのは長所であり欠点にもなり得る。…まあ、君の優しさが駄目だとは思わないけど」
「私は別に、」
「俺には優しい人にうつってる。…動けそうならそこのゴミとって」
「あ、うん」
こうやって起きて帰りの列車を掃除できる機会なんて滅多にない。
話せてよかったと思う反面、やっぱり負担になってしまったんじゃないかと心配になる。
だけど、氷雨君のことを知りたいなら先に自分のことも話さないといけない。
──少しでも、心の距離が近づいただろうか。
体を起こすと、自分が汗びっしょりになっていることに気づく。
「起こしたら悪いと思ったけど、いつもよりうなされてるみたいだったから…」
氷雨君の顔を見た途端、涙が溢れてきた。
「…どうしたの?」
涙を止めたいのに、安心して力が抜けたのもあって止まらない。
彼女はあんな理不尽に殺されて、苦しみのなかずっと彷徨っていたんだと思うと体が震えた。
「さ、寒くて…痛くて、怖い」
自分でも何を言っているのか分からないのに、氷雨君は優しく背中をさすってくれた。
そのぬくもりにほっとして、余計に涙がぽろぽろ零れる。
「…少し落ち着いた?」
「うん。ごめんなさい」
「別に謝らなくていい。どんな夢を見てたの?」
今までは隠していたけど、もう話さないといけないかもしれない。
「…さっきのお客様が、殺される夢」
「どういうこと?」
「いつもはもっとはっきり見えていたんだけど、今見た夢は犯人の顔や声が分からなかった。
それに、いつもよりお客様の感情や受けた痛みを激しく感じて…」
「お客様の体験を追憶していたってこと?」
「追憶というか、ただ出来事を見ているだけというか…」
自分のことなのに上手く説明できない。
どうしようか迷ったけど、氷雨君は何も言わずに聞いてくれた。
「追憶の夢…前に古い書物で読んだことはあるけど、実体験を聞いたのは君が初めてだ」
そんなに珍しいものだなんて知らなかった。
「他の人たちは慣れているから平気なんだって思ってた」
「…毎回お客様を見送る度に倒れていたのはそのせいだったんだ」
「ごめんなさい。どう話したらいいのか分からなくて…」
「別に構わない。ただ、できればもう少し早く知りたかった。君は迷惑にならないようにって考えたんだろうけど、いつもひとりでそういう光景を見るのは苦しいでしょ?
君はひとりで色々と抱えこみすぎだ。もう少し周りによりかかることを覚えた方がいい」
「自分ではもう沢山助けてもらっているつもりなんだけど…なかなか上手くいかないものだね」
特に氷雨君には助けられっぱなしで、いつもお世話になっている。
「遠慮してしまうのは長所であり欠点にもなり得る。…まあ、君の優しさが駄目だとは思わないけど」
「私は別に、」
「俺には優しい人にうつってる。…動けそうならそこのゴミとって」
「あ、うん」
こうやって起きて帰りの列車を掃除できる機会なんて滅多にない。
話せてよかったと思う反面、やっぱり負担になってしまったんじゃないかと心配になる。
だけど、氷雨君のことを知りたいなら先に自分のことも話さないといけない。
──少しでも、心の距離が近づいただろうか。
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