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母の手紙.1.

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『朱希と舞桜へ

この手紙を見ているという事は、私はもう家には帰らないということだ。

いままで言わなかったこと、あなた達がしなければならないことを書こう。

朱希、舞桜。驚かないで見てほしい。

あなた達は封筒の中にあるお守りで異世界へ行ける。

冗談ではない。

話は少し変わるが、私はそこで店を経営していた。俗に言う、暗殺を請け負う店だ。

あなた達には、私の店を受け継いでほしい。

大丈夫だ。殺すのは人ではない。

そして、朱希。

朱希には先に謝っておこう。すまん。

私の店は少し特殊(?)で女しか勤められん。ということで、朱希、女になれ。

異世界でだけでいい。向こうに着いた時点で体が女になるよう、お守りに仕込んでおいた。化術ってやつだ。

あとのことは向こうに居る店番のヤツに聞け。

最後に。

…親らしいことを何もしてやれずすまなかった。朱希も舞桜も愛している。

母より』


「………ハア?」「わあ…。」

開くんじゃなかった。

母さんの部屋を掃除してたら出てきた封筒なんか。

なんか、その…
「…突っ込み所、多すぎだろッッッ!!」

途中の(?)ってなんだよ!
女になれってどういう事だよっ!知らねえよ!
っていうか暗殺業の店って母さんOL じゃなかったのかよ!!
しかも異世界って!!マンガの中かよ!!!

俺が脳内で叫びまくってる隣で、妹の舞桜は封筒からお守りらしきものを二個取り出していた。

「お兄ちゃんこれ~。」…妹よ。なぜそうも冷静でいられる。そう思いながらお守りを受け取り眺める。

「…手作り感、満載ダナー。」
異世界が仮にあるとして、こんな手作り感満載なお守りで行けるのかよ。っていうかどうやって行くんだよ。

…つーか、最近はまじでいきなり…。

元々あまり家には帰らなかった母さんが1ヶ月前いきなり失踪して、そして悲しむ暇もなく、警察の聴取やら色々な事、親戚達とのお話、それらがやっと落ち着いて来て、やっと普通に学校に通えるようになったと思いきや、この手紙。

散々だ。ほんと。










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