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らぶほてる.12.

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「ハハハッこりゃまた可愛らしい子が女将になったもんだな!よろしくな!
お、そういえば、今朝新鮮な万度麗句がはいったんだ!買ってくかい?」

おっちゃんが横の棚から茶色い大根のなんかを持ってきた。心なしか、少し震えている。ていうか目がある……。手足みたいなものもある…あれだ、ハ○ー・○ッターのマンドレイク?みたいな感じだ。

「また今度です~。用事があるからもう行くですっ」

「おう!またな!」

怜奈が俺の背中をグイグイ押して、八百屋を離れて流れる人ごみの中へ入り込んだ。

「さっきの人、北邊さんというんだよっ」

「へー。」

「常連客からはキタさんって呼ばれてるっ」

「へー。」

「……聞いてる?」

「へー……ンん?あぁ、うん」

街並みを眺めてて気づかなかった……。

「聞いてないじゃんっむむむっ」

怜奈が下から目線になり頬を膨らませた。

ほぼ反射的にその頬に人差し指を差す。

「ぶふっ。…っうう!」

ますます膨れっ面になってしまった。

「…ごめん冗談。ところでこれ、どこに向かってんの。」

人の流れに入ってから、その流れのままに足を動かしてたけど…。

「んっ!よくぞ聞いてくれたっ」怜奈が芝居じみたどや顔でフフンっと鼻を鳴らした。

「これから仕事でよく使う場所だよっ」

仕事…暗殺でよく使う場所……?……やっつけるのは妖って言ってたから……妖専用の葬式場とか…?

「その名も……」

怜奈はそこでもったいぶっていたずらっ子ぽいニヤニヤを浮かべた。

「そ…その名は……?」

「らぶほてるっ!」

……
…………
「そのまんまかよ!!」


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