90 / 108
知られてはならない過去
リナと水龍
しおりを挟む「騎士様、お願いです!僕の水龍を探してください!!」
目の前に現れた青混じりのふわりとした白い髪の女の子は僕に頭を下げて、大声で頼み込む。
「えっと……君がこの水龍探しの依頼人かな?」
僕は手に持ってる依頼書を女の子に見せる。
「はい。そうです!僕の名前はリナ。お願いします騎士様。僕の水龍──スイを探してください!!」
青混じりの白髪の女の子──リナは僕に深々とまた頭を下げる。
どうやら悪戯ではなく、この依頼は本当だったらしい。
「わかった。けど探す前に、君と水龍さんのお話を聞かせてくれないかな?」
するとリナは顔を上げて、嬉しそうに僕を見つめる。
「はい!!けど……何処から話したらいいかな?とりあえず出会い?けどそうなると長くなっちゃうか……」
「出会いと別れを単純に話してくれたらいいよ。何処で出会って、なんで別れたのかだけで大丈夫」
龍なんて本の中でしか登場しない生き物だし、あまり詳しく聞いても、僕が理解出来ないかもしれない。
「わかりました。えっと、僕とスイが出会ったのは、数ヶ月前。この街にある海で出会ったんです。スイは浜辺に倒れていて、僕が見つけて家に連れて帰りました。そこから一緒に暮らしてたんだけど、一昨日から、居なくなって……ずっと探してて……」
「だから騎士団に依頼してきたんだね」
「はい。僕一人だと見つけられなくて……」
リナはワンピースをぎゅっと握って下を向く。
余程に心配なのが、行動から見て取れる。
「けど、浜辺で倒れてただけで、どうして水龍って分かったの?龍って本の中にしかいないよね?」
するとリナは綺麗な色違いの海色の瞳を何度か瞬かせる。
「スイには大きな尻尾があるんです。青い尻尾。それで、聞いたら、龍の尻尾だって言ってて……」
確かに、尻尾があれば人外だとすぐ分かる。
この世界には色々な種がいるらしいけど、人外だと必ず体に特徴がある。
ルナだって、妖精と天使のハーフだけど、魔法を使う時は、天使の羽根が出るわけだし……
「尻尾。それなら、その尻尾を手がかりにスイさんを探してみようか。あとは髪型とか服装とかは分かる?失踪して、時間が少し経ってるから、服装は変わってるかもしれないけど……」
「スイはお腰まである長い銀の髪を持ってて、顔は騎士のお兄さんみたいにカッコいいです。あと目は紫?なんか不思議な色をしてます」
リナが言うスイの身体的特徴を頭の中で思い浮かべてみると、ゲームに居そうなイケメンが誕生した。
……なんていうか、女の子受けしそうなキャラが誕生したんだけど、これ大丈夫かな?
僕の頭の中に浮かぶスイさんはとんでもなくイケメンで、会ったらギャップに驚くみたいな事にならないといいなと思ってしまう。
前世で実際、そういうギャップに苦しんだ事があるから、余計に警戒してしまう。
するとリナが、僕を見つめて首を傾げる。
「お兄さんどうしたんですか?なんかその、困ったような顔をしてませんか?」
「大丈夫だよ。ちょっと昔のことを思い出してただけ」
「むかし?」
「そう。遠い昔のことだよ……」
僕はリナの頭を撫でてから空を見上げる。
どこまでも青い、夏の空が、僕とリナの頭上に広がっているのだった。
14
あなたにおすすめの小説
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている
迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。
読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)
魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。
ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。
それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。
それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。
勘弁してほしい。
僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
なぜ処刑予定の悪役子息の俺が溺愛されている?
詩河とんぼ
BL
前世では過労死し、バース性があるBLゲームに転生した俺は、なる方が珍しいバットエンド以外は全て処刑されるというの世界の悪役子息・カイラントになっていた。処刑されるのはもちろん嫌だし、知識を付けてそれなりのところで働くか婿入りできたらいいな……と思っていたのだが、攻略対象者で王太子のアルスタから猛アプローチを受ける。……どうしてこうなった?
魔王の息子を育てることになった俺の話
お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。
「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」
現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません?
魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL
BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。
BL大賞エントリー中です。
俺がこんなにモテるのはおかしいだろ!? 〜魔法と弟を愛でたいだけなのに、なぜそんなに執着してくるんだ!!!〜
小屋瀬
BL
「兄さんは僕に守られてればいい。ずっと、僕の側にいたらいい。」
魔法高等学校入学式。自覚ありのブラコン、レイ−クレシスは、今日入学してくる大好きな弟との再会に心を踊らせていた。“これからは毎日弟を愛でながら、大好きな魔法制作に明け暮れる日々を過ごせる”そう思っていたレイに待ち受けていたのは、波乱万丈な毎日で―――
義弟からの激しい束縛、王子からの謎の執着、親友からの重い愛⋯俺はただ、普通に過ごしたいだけなのにーーー!!!
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も皆の小話もあがります。
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新!
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる