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知られてはならない過去
水龍探し
しおりを挟むリナと隣り合わせで歩きながら王都の城下町で、スイという水龍を探す。特徴は長い銀髪に龍の尻尾。整った美しい顔という、如何にも目立ちそうな人を探しているのだが、中々見つからない。
「そういえば、さっき聞き忘れたけど、スイさんが失踪する前の服装ってわかるかな?」
「えっと、それが、服の名前がわからないんです」
「名前がわからない?」
リナはコクリと頷く。
「なんかこう、前を合わせて、お腹の辺りを少し大きな布で結んでいる服なんだけど……」
「なるほど。着物だね」
「きもの?」
リナは首を傾げる。その姿が可愛くて、腰を屈めて、リナの頭を撫でる。
「そう着物。この国では見かけないけど異国にある風習だよ」
異国と言ってもこのフェアリー・スクイズの世界に果たして異国があるのかは知らないけど、前世もまぁ異国である。だから気づかれなかったら大丈夫だろうと、僕は心の中で一人言い訳をする。
……けど、着物のキャラなんてフェアリー・スクイズには居なかったような……
なにせフェアリー・スクイズの舞台は洋の世界。だからゲーム内に和のキャラは出た事がない。だが、それは前世で慎也がプレイしたゲームの話。
今のこの世界は、フェルに転生した自分がルナを闇堕ちさせない。という目的で進んでいる世界なので、ゲームとは全く違う進行ルートを辿っている。
だから和風のキャラが出てきてもおかしな事ではないと思う。
……大体、フェルの年齢だって物語開始時とは違うのだから、細かいこと考えても意味がないんだよね。
小さく息を吐き出して、目の前にいるリナに視線を向けると、彼女は困ったような顔をしていた。
きっと僕が何も言わないから戸惑っているのだろう。
そんなところもルナに似ていて、可愛いと思う。
「騎士様……あの、僕の顔に何かついてますか?」
「付いてないよ。綺麗な目だなって思って見てた」
「え!?」
リナは、驚いた声を上げ、顔を真っ赤にしてしまう。
本当は全く別のことを考えていたのだが、悟られないように、言葉を選んだのだが、どうやら目についてはあまり触れない方がよかったのかも知れない。
オッドアイって珍しいから素直に思った事を口にしたんだけど……
僕は隣で顔を赤くするリナを見つめる。
余程に目のことを言われるのが恥ずかしかったらしくまだ顔は真っ赤だ。
またやっちゃったな……どうして僕は昔から人が気にしてるとこを当たり前に褒めるんだろう?
過去にも、人のコンプレックスを褒めてしまい、大変になった事がある。
その時、友人に言われた。お前は、どうしてそう小っ恥ずかしい事が言えるのだと……
あの時はわからなかったが、今ならわかる。
どうやら自分は他人の気にしてる場所を褒めてしまう癖があるらしい。
そうして、リナが落ち着くまで、空を見上げていると、くいくいとコートが引っ張られた。
横を見ればリナが、まだ赤い顔で、僕をみていた。
「騎士様は僕の目怖くない?」
「え?」
「だってみんな、怖いって……変だっていう。スイは綺麗だって言ってくれるけど……」
リナは今にも泣きそうに声を震わせ、僕の外套をぎゅっと握っている。
だから僕はリナの手を握り、その甲にキスを落とした。
「えっと?」
「君の目はとても綺麗だし、きっと素敵なレディになるよ。僕が保証してあげる」
その言葉に、リナは目をぱちぱちさせて、そして優しく笑ったのだった。
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