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知られてはならない過去
逆恨み
しおりを挟む結衣に別れを告げた翌日。クラスでは僕が結衣を振ったという話で持ちきりだった。
だけど僕はあまりその話に興味はなかった。ただ隣の席の子が今日は休みで寂しいな……そう思ってた。
だって今日こそは話そうと思っていたのだ。
「知ってる?中野くんって男の子好きなんだって!!」
空いた隣を席を見つめていると、クラスの女の子が不意にそんな事を言った。
きっとその話の出所は結衣だろう。
別れ際にホモと言われたぐらいなのだ。それを結衣が別れられた腹いせで、クラスの女の子にいう可能性は大いにある。
……別に何言われてもいいけどさ……
だけど、このまま噂の人になるのも、居心地が悪くなって、クラスから出ると、バッタリと結衣に会った。
結衣は僕を睨んで、そしてすれ違いざまに言った。
「あの子を許さない。貴方は私のもの。渡さない」
「え?結衣?」
恨みがこもった声に僕は驚き、慌てて振り向くが結衣は走り去ってしまった。
それからなんとか結衣と話そうと思ったが結果は彼女に逃げられ回って無理で、そのまま夏休みを迎えてしまったのだ。
「だから、きっと結衣がアクアに転生したのは僕のせいなんです。そして彼女は僕の好きな人を酷く恨んでる」
「そんなの、ただの八つ当たりだ!!」
僕の話を聞いたリナは立ち上がり、大きな声を出した。
「リナ落ち着きなさい」
「落ち着けないよ!!だって騎士様はちゃんと別れたんだよ?なのにどうして、女の子は騎士様の好きな人を逆恨みするの?」
リナの声は最後の方は涙声になっていた。
そんなリナをスイさんは優しく抱きしめ、頭を撫でる。
なんとも微笑ましい光景に勝手に笑みが溢れる。
「ありがとうリナ。けど、僕もあの時、結衣か拓海かを選べなくて、ただ別れて欲しいって言ったから、結衣は勘違いしたのかもね……」
もう少し、綺麗に話をしていたらよかったと今になって思う。
結衣にどっちが好きかと聞かれた時、拓海だと答えていたらよかった。そしたら、綺麗に別れていたかもしれない。
「確かに、君は選択をできなかったかもしれない。だが……この別れ話に君は落ち込む事はないと私は思う」
「え?」
「なにせ、君は別れようといい、彼女は捨て台詞を吐いて居なくなった。これは別れを肯定したという事になるのではないか?」
確かにそうだ。結衣は僕の『別れよう』という言葉に捨て台詞を吐いて逃げたのだ。それは別れを肯定した事になる。
「だから君が落ち込む事はない。リナが言う通り、全て彼女の逆恨みである」
逆恨み。
だとしても、僕の中の罪悪感は拭い去れないし、結衣はその恨みを持ってアクアに転生した可能性すらある。
「だが、その少女はどうやってこの世界に来たのだ?」
「え?」
「スイ?」
スイさんは僕を見つめる。
どうやって?
「死んだから転生したのではないのですか?」
この世界には生前の記憶持って生まれる人は少なくないと、リア達から聞いた。
だから結衣も死んだとばかり思っていた。
「君と君の好きな人、そして結衣と言う少女。一気に三人が死に同じ世界に転生などかなり珍しい症例だ。本来ならあり得ない」
スイさんはその後、この世界の仕組みについて話してくれた。
それは僕もリナも知らない。世界の根幹に触れる話だった。
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