転生したら大嫌いなキャラだったけど何故か主人公に愛されそうです

ジェーン

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知られてはならない過去

世界の根幹

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 スイさんは僕たちにこの世界の話を始める。
 その話を僕は頭の中でまとめていく。

 まず、この、フェアリー・スクイズの世界には輪廻転生という仕組みがあり、亡くなった者は転生する。その時、死んだ歳で転生が変わるのだが、同時に転生するのは二人までという規約があるそうだ。

「なぜ二人なの?」

 リナが隣に座るスイさんに尋ねるが、スイさんは首を横に振る。

「わからない。だが、龍王曰く、これはルールだという」

 決められたルールに従うのは世界のあり方そのものだ。
 きっと転生は二人までというのはゲーム内のルールであり、誰が作ったとかはないのかもしれない。
 よく言えば、このゲームを作った製作者かもしれない。

「だから三人の同時転生はあり得ない。それにこの世界に別の世界から転生する場合、条件がある」
「条件ですか……」

 スイさんは頷く。

「ああ。何でもかつて互いに強く惹かれあったものらしい」

 なるほど、僕と拓海は前世では両片思い。そして互いにこのゲームのプレイヤー。
 転生条件にゲームプレイヤーが入るかは分からないが、条件が一致している。

「それと互いの死の間が殆ど空いてない事も必要だ」

 あまり時が空くと、二人同時転生は不可能なのだという。

「この条件で行くと、君と、君の好き人……ルナは転生出来たが、アクアは転生可能ではない。もし可能だとすれば、君の元いた世界に魔法のような何かがあったという事だが……」
「そんなものはありませんでした」

 僕のいた世界は魔法とか不思議な力は空想の中のものであったから、魔法を使ってという事は絶対にない。

「スイ。他に転生方法ってないの?」
「私が知る限りでは無いのだ。すまない」

 という事は、僕と拓海は前世で近い時期に死に、そしてこのフェアリー・スクイズという世界に転生した。
 だが結衣はなにか別の方法を使わない限り転生できないという事だ。

「それと、君は転生して来てどれぐらい経つ?」
「え?えっと、まだ二か月ぐらい?」
「という事は、この世界の人に転生したのか……なるほど」

 スイさんはまた考え込む。

 どうやら僕らの転生はかなり不可思議らしい。

「ああ、そうか。そういう可能性はあるな……」
「スイ、何かわかったの?」

 少しして、スイさんが小さく呟いた。

「なんだかの理由で、君たちの体の本来の魂が消えたのだと思う。三人とも死んだか又は何かの事件に巻き込まれた。だが、それがこの世界の根幹に関わる三人だった」

 確かに、フェル、ルナ、アクアはフェアリー・スクイズの主人公、ヒロイン、敵という大切なキャラである。

「世界の根幹に関わる三人の死は世界を崩壊させなかねない。だから何者かが例外で別の世界から三人の魂を呼び出したのだ。これなら三人が同時期に転生した理由も納得できる。」

 メインキャラの死によってこの世界が壊れかけた。だから僕ら三人が転生できた。

「だけど、アクアに転生した結衣が死ぬなんて……」
「君に振られたことで自殺したという可能性もある。または別の理由か……」

 スイさんの言葉に僕は、やっぱりと思ってしまった。

 高校生というのは多感な時期だから、フラれたりしても自殺する子がいるのだ。結衣もそうだった可能性はある。

「だが、それを自分の責任にしなくていい。自殺だとしても彼女が選んだ道なのだ」

 スイさんの言葉を聞いて胸にあった罪悪感が消えていく気がした。

 そして僕は空を見上げる。大嫌いだった夏が今、少しだけ好きになったような気がした。


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