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絆の話
実験室
しおりを挟む「ん……」
「ああ……起きましたか。天使の子」
目を覚ますと、冷たい床の上だった。
そして目の前にはヘムトがいる。長い黒い髪に黒い目。それに長い黒のローブと言う黒ずくめの姿だ。
歳はブラックの時より大人びていてお父様ぐらいだ。
「ここ…どこ?なんでこんなことするの?」
僕はヘムトを睨む。手足の拘束などは無く、体を起こせたが、恐怖から立ち上がることは出来ない。
「ここは私の実験室ですよ。ほらあなたの捜し物もここに……」
「え?っ!?」
ヘムトは僕の目の前にある容器に明かりを付ける。
容器の中には緑の水の中で眠るノルンくんがいた。
「ノルンの肉体です。憑依型の子の体はとても貴重なのでこうして特殊な液体に浸しているのですよ」
「酷い……なんでこんなことするの?」
どうして人にこんなことができるのだろう?
「それは、私の命の為です!」
「え?っ!?」
ヘムトはローブを脱ぐ。
ヘムトの体の心臓部分には黒い水晶玉が埋まっている。そして黒の線が体のあちこちに伸びている。
「私は悪魔の血を引いています。しかし悪魔の力は覚醒しなかった。私は何としてでも悪魔の力が欲しくて研究しました。そして自らの肉体を仮死状態にし、この水晶体を使い生き返らすという方法を取ったのです」
ヘムトは早口で僕に言う。
「悪魔の力には目覚めましたが体が悪魔の力について来れないのです。魔法使いは病で死ぬことはありませんが、悪魔の力の代償に歳を取るのが私は早くなった。だから不老不死になろうと調べたのですよ!」
「そんなの…ただの自分の欲望でしょ……」
僕は手を握りヘムトを睨む。
「欲望ですよ!けど私は悪魔の力をもっと研究したいのです!!そして調べた私は憑依型の子の力と天使の子の力があれば不老不死になれると知りました。だからこうして貴方とノルンをこの部屋に導いたのですよ!!」
狂ってるこの人は狂ってる。
人の道を外れてる。
そう思いながら僕は指輪を握る。
怖い。傍にフェルが居ないのは不安でたまらない。怖くてたまらない。けど僕がやらなきゃ……
「さあルナ。貴方の天使の力を私に見せてください。そしてノルンと一緒に私を不老不死にしてください」
「いや!!来ないで!」
首にかけている指輪を握った瞬間、バチンという音がした。
「凄いですね。その翼といいこの魔法といいやはり天使の子……」
僕の周りには白い羽根が舞っている。背中には大きな白い羽根が出ているのが分かる。
「さぁ早く私にその力を見せてください!」
「いや!やだ!!」
ヘムトが手を伸ばすと、またバチンという音がして僕の周りに黄色のバリアが現れる。
「そうですか。けどいつまでそのバリアが持ちますかね?」
ヘムトは黒い玉を手から出す。それもバリアが弾く。
「中々の強度ですね!!流石です!」
また黒い玉がバリアに当たる。怖くてたまらない。
いつこのバリアが破けるかもわからない。
フェル……怖いよ……怖い
目を閉じ、フェルを呼ぶ。
怖い…助けて……怖い……
「けほっ、けほっ」
「ふふ、貴方は不治の病の持ち主。あまり長く魔法を使うと発作がでますよ?」
「っ……けほっ……」
ドンッ、ドンッ、という音と共にバリアに黒い玉が当たる度に胸が痛くなり始める。
呼吸も苦しい……咳が止まらない。
僕は両手を握り、願う。
フェル…助けて!!
「なに!?」
「けほっ……なに?」
願った瞬間、すごい音がしてヘムトの驚いた声がした。
「ルナ!!」
「ふぇ…る?」
そして僕の前にはフェルが立ってた。
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