転生したら大嫌いなキャラだったけど何故か主人公に愛されそうです

ジェーン

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ひび割れた関係

亀裂

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フェルが変だ。

あの病の事件から一週間。

僕にほとんど触れない。

抱くって言われたのに抱かないし、触りっこもない。

キスも沢山してたのに朝と夜のみ……しかも額とか目とかで、唇にはあまりない。

それに抱きしめてもくれない。寝る時だけ…

どうして触ってくれないのかな?

僕悪いことした?

そう思うがフェルに怖くて聞けない。

「はぁ…」

僕は騎士団の中を歩きながらため息をつく。

書類を運ぶ仕事が今日の僕の仕事だ。

ふと前を見たら、フェルがアルト様と話してた。アルト様の傍にはミルラ様がいて、手を繋いでる。

いいなぁ…

フェルと手を繋いだの一週間以上前だと思う。

そして思い出す。元々僕は昔も一人だった。一人ぼっちだ。

ゲームのルナも一人だ。だって彼は悪役で僕の大嫌いなキャラだ。

今更嫌われたとこで…困らない。だって僕は一人……

「ひくっ…ひくっ……」

「ルナ!?」

「ルナ様!?」

書類がバラバラと落ちて、三人が僕に駆け寄る。

「ひくっ…えぐっ……」

「大丈夫?ルナ様…」

ミルラ様が僕の背中を摩ってくれる。

「ルナ、大丈夫?何処か苦しい?」

「フェル……」

フェルも僕を見ている。

「大丈夫…ごめんなさい…」

「いいよ。部屋に帰ろうか」

「けど仕事…」

「僕たちがしますのでルナ様は副団長と部屋に戻ってください」

僕はアルト様とミルラ様にお礼を言い、フェルに支えてもらい部屋に戻る。けどその間もフェルは僕の手を握ったり抱っこしたりしてくれない。

ただ隣に居るだけ。

それが辛くて、また涙が零れた。

「ルナ。あのさ……」

「な、なに?」

フェルの低い声に僕は驚き顔を上げる。

「業務中に泣かないで。僕を困らせないでよ……」

「え?」

急な言葉に立ち止まってしまう。

胸が冷えて、足元が崩れそうだ。

「なんで泣くの?書類運びはそんなに嫌?」

「い、いやじゃ…ない……」

「なら泣かないで。僕の手を煩わさないで。僕、忙しいんだから……」

フェルの怒った言葉に僕は何も言えなくて、震えてしまう。

「フェル…ごめんなさい…一人で部屋に帰るね……」

「そうして。今忙しいから…夜には戻るから」

「うん…」

僕はフェルと離れて、そしてぼんやりしながら部屋に戻りベッドに寝転ぶ。

「ひくっ…ひくっ…ふぇ」

戻って来ると涙が溢れた。

フェルのキツい言葉に胸が痛い。

「ひくっ…けほっ…けほっ」

そして涙と一緒に胸も痛くなった。

気分悪い…そう思いトイレに行って、食べたものを吐いてしまう。

「うぇ…げほっ…うぇ」

気持ち悪い。涙止まらない。苦しい

「フェル…助けて…助けてよ…」

何時もなら傍に居てくれるのに今日は居ない。一人ぼっちだ。

僕は口を拭き、トイレから出る。

「フェル…」

そしてフェルの名前を呟きながら眠りについた。


















「ルナ、ルナ。起きてルナ!」

「ん…フェル?」

体を揺さぶられて目が覚めた。

外はいつの間にか真っ暗になっていて、かなり寝ていたのが分かる。

「おはよう。ルナ。よく寝てたね」

「ごめんなさい……」

フェルは怒ってるらしく、僕はビクビクしてしまう。

「僕が仕事の合間よく寝れるよね。みんなに迷惑かけて……」

「ご、ごめんなさい…」

胸が痛い。けど言えない。

「疲れたから僕、寝るからね。おやすみ」

「おやすみなさい……」

何時もはしてくれるおやすみのキスもなくフェルは隣で眠ってしまう。

どうしたらいいのか分からない……

フェルに触れて欲しいだけなのに上手くいかない。というか僕のせいだ。僕が悪い。

僕の存在がフェルをイライラさせてる。

「ごめんなさい…フェル…僕、フェルの前から消えるね」

大体おかしな話なんだ。大嫌いなルナに転生して、そしたらフェルが僕を愛してくれた。

そんなのおかしな話。本当はアクアだ。フェルの好きな人はアクアだ。

だから僕が消えたら物語は上手く進む。

大丈夫。一人は慣れてるよ。慣れてるからね……

前世でも一人ぼっちだったから…

けど何処かに行こう…

やっぱり街からは離れないと行けないかな?

それか何処かで働こうか?

お金は少しならある。騎士団に入ったから給料が少しだけある。

僕はベッドから降りて、フェルに貰った触媒の指を外す。

そしてそれを引き出しに仕舞う。

明日は騎士の仕事は僕は休ませて貰おう。というかフェルが出勤させないだろうし……

とりあえず今夜だけはフェルの隣で眠ろう。

そう思いながら僕はフェルの隣に寝転がり、フェルの寝顔を見つめる。

「今までありがとう。フェル。凄く幸せだったよ。だからこれからは、僕の事忘れて生きてね」

大丈夫だよ。ゲームみたいにフェルを妨害しないから…

だからね、おやすみなさい。そしてさよなら。フェル……

そう心で呟いて僕は眠りに着いた。

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