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第3章 奴隷と暮らすまで

第19話

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リンジーとウルジーの武器魔道具屋 変わった客①
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 ローブを深く被った小さな客がひとり、武器屋にやって来た。その客は、武器の陳列棚を暫く見て一つ手に取ると、それを俺のいるカウンターまで持ってきた。客が近くまで来て、髪が短いからあぁ男かとわかった。

「すみません、護身用に武器が欲しいのですが、俺、かなり田舎の方から来たのもので魔法に関してさっぱりで……。あの、魔力が無くても、この銃は使えますか?」

「あぁ、使えるぜ! その様子だと、"魔結石"知らなそうだな」

 聞けばやはり知らないと話したので、魔石と魔結石の性質や違いも話しておいた。

「へぇ~、ではこの銃が無くても魔結石さえ有れば、魔法は使えるんですね」

「だが、イメージだけじゃ上手く魔法を発動できないこともある。だから、武器専用の魔道具──魔銃とかを使ってコントロールしやすくするんだ」

「なるほど。ではこの魔銃二丁とこの銃口を改良したものを二丁欲しいんですが……出来ますか?」

「どんなふうに変えたいんだ?」

 そして、「弾をこれにしたいんです」と腰につけた麻袋からジャラリと取り出したのは、硬貨だった。

「……ガキンチョ、大人をからかっちゃいかんぞ」

 驚きのあまり、どん引きして口角をぴくぴく引き攣らせた俺は、客をガキンチョ扱いしてしまった。だがローブの客は、特に気にした様子もなく、首を横へ振った。

「いや、至って真面目です。弾切れになった時のことを考えて二丁非常用に欲しいんです」

 音程が一定で落ち着きをみせる声音に、冗談ではないのだと悟った。

「よく思い付いたな……そんなことを。まぁ、命の方が大事だからな。ちょっと待ってくれ、魔道具師にも相談した方が良さそうだ。ウルジー! おい、ウルジー!」

 俺は魔道具屋の奥に引っ込んで作業をしているウルジーを呼んだ。

「何だ? リンジー。お、随分と小さな客が来たな! あんちゃん、武器を買いに来たのか?」と表に出てきたウルジーがローブの客を視界に捉えて話しかけると、ガキンチョは「はい」とウルジーに答えた。

「ウルジー、魔弾をこれに変えたいんだとよ」と俺がガキンチョの手のひらにある硬貨を指差す。

「冗談───」

「じゃねぇよ。魔銃が弾切れになった時用に欲しいんだとよ」

 ウルジーがすぅっと細めた目をして、「冗談か?」と言い切る前に遮り、理由を説明してやると、今度は職人の目をして魔銃を手に取り考え始めた。

「あんちゃん、硬貨を魔弾代わりにした場合、火属性の弾しか撃てないんだがそれでもいいか? 硬貨をそのまま弾にするわけにはいかねぇ。そのまま撃てばあんまし飛ばねぇから、火属性の魔結石で硬貨を変形させて、ちゃんと弾にしてから撃たなきゃならねぇのよ」


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最初はまだ入国審査の話(指導を受けていない人が魔法を使ってはいけないという話)を覚えていたが、リンジーとウルジーの話を聞いているうちに、段々忘れていってしまった隼人であった。



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