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第4章 奴隷と暮らす
第13話
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服屋と靴屋を後にした俺たちは、ご主人様に連れられて、いま宿の前にいた。
石材を積み上げてつくられた組積造のレグホーンの外壁は、お堅い左官職人が高度な技術を披露したときのような平らな仕上げからは程遠く、漆喰で描かれた扇状が凹凸感を出しており、洒落た雰囲気を醸し出す。
壁は分厚く仕上がっており、重厚感がある。開口部には格子窓と、さらに鎧戸が取り付けられているのが見上げてわかる。防犯対策もしっかりしているようだ。明らかに目に見えて高級な宿のようだった。
「いいか? おまえら」
ご主人様がこちらへ身体を向けながら話しかけてきた。
「受付を通り過ぎて部屋へ入るまでは、俺のことは"主人"扱いせず、"あんた"もしくは"おまえ"と呼ぶんだ。でないと……少々厄介なことになる。いいな?」
奴隷を宿へ連れてくる主人は珍しくない。何故ご主人様が俺たちにそう指示をしたのかわからず、思わず目をぱちくりさせる。
無言なままの俺たちを見て、それを肯定と捉えたのか、そのままご主人様は俺たちに背を向けて目前の宿へと入り、俺たちもそれに続いた。
「いらっしゃいませ」
フロントスタッフが丁寧な礼をしてカウンター前に佇んでいた。
「レオリオ・ヒーラギだ。部屋の鍵を貸してくれ。それと……」とカウンターから仰反るように上半身を少し傾け、親指で背後を指してフロントスタッフに俺たちを認識させる。
「後ろにいるのが、昼間に話した連れだ」
フロントスタッフがご主人様に促されるように、俺たちに視線をちらりとよこした。緊張によるものか、少し身体が強張ったが、特に何も言われることもなく安堵する。
「承知しました。こちらがレオリオ・ヒーラギ様のお部屋の鍵でございます。どうぞごゆるりとお過ごしくださいませ」
鍵を受け取ったご主人様は、礼をしたままのフロントスタッフに「有難う」とひとこと言って離れた。
***
「ここがおまえらの部屋だ」
中へ入ってすぐ目を疑った。高級な宿なだけに内装はとても豪華になっていたが、そんなことはどうでも良いし、大した問題ではない。
(六つ、ある……)
ベッドが六つ、あったのだ。ここにいる全員分のベッドだ。俺たち以外に誰かを連れてくるのかと一瞬考えもしたが、ご主人様は手に持っていた麻袋をドサッと端に置くと、袋を抱えていた方の肩を回して解して、直後脱力するようにやや猫背になっているし、室内を歩く足取りは気怠げで、これから人を呼ぶような感じはない。
ベッドで寝ていた頃の記憶や感触を思い出してみる。しかし、時間と共に段々と忘れてしまっていたようで、記憶に靄がかかる。だが、よく眠れていたということだけは、何となく覚えている。
(久々にベッドの上で眠れるのだろうか……?)
刹那の欲と希望が頭を過ったが、奴隷の立場で何を考えているんだ、とフードの上から頭をがしがしと乱暴に掻いて甘い考えを捨てる。
その後、メシにするか風呂にするかとご主人様が聞いてきた。だが、ご主人様の腹の虫によって食事をすることに決まり、戸惑いながらも俺たちはご主人様と同じテーブルの席についた。
テーブル上には屋台で買った酒のつまみになりそうなものが、どっさりと山のように置かれていた。一体どんなものを買ってきたのだろう、と鼻先をぴくりと動かす。
「………⁉︎」
まさかと思い、焦るように串肉一本を手に取り見てみる。
「これは……全て魔物肉、ですか?」
ブリキの人形がギギギとぎこちなく首を動かすように、恐る恐る俺はご主人様に聞く。
「そうだ。全て屋台で買ってきた。あぁ、それと、俺は他種族についての知識があまりない。種族や風習的に食えない物があったら言ってくれ」
(………はぁ?)
食えない物があったら言ってくれ……だと? ということは、これを俺たちが? 食べるのか? 奴隷の俺たちが、この高級料理を?
石材を積み上げてつくられた組積造のレグホーンの外壁は、お堅い左官職人が高度な技術を披露したときのような平らな仕上げからは程遠く、漆喰で描かれた扇状が凹凸感を出しており、洒落た雰囲気を醸し出す。
壁は分厚く仕上がっており、重厚感がある。開口部には格子窓と、さらに鎧戸が取り付けられているのが見上げてわかる。防犯対策もしっかりしているようだ。明らかに目に見えて高級な宿のようだった。
「いいか? おまえら」
ご主人様がこちらへ身体を向けながら話しかけてきた。
「受付を通り過ぎて部屋へ入るまでは、俺のことは"主人"扱いせず、"あんた"もしくは"おまえ"と呼ぶんだ。でないと……少々厄介なことになる。いいな?」
奴隷を宿へ連れてくる主人は珍しくない。何故ご主人様が俺たちにそう指示をしたのかわからず、思わず目をぱちくりさせる。
無言なままの俺たちを見て、それを肯定と捉えたのか、そのままご主人様は俺たちに背を向けて目前の宿へと入り、俺たちもそれに続いた。
「いらっしゃいませ」
フロントスタッフが丁寧な礼をしてカウンター前に佇んでいた。
「レオリオ・ヒーラギだ。部屋の鍵を貸してくれ。それと……」とカウンターから仰反るように上半身を少し傾け、親指で背後を指してフロントスタッフに俺たちを認識させる。
「後ろにいるのが、昼間に話した連れだ」
フロントスタッフがご主人様に促されるように、俺たちに視線をちらりとよこした。緊張によるものか、少し身体が強張ったが、特に何も言われることもなく安堵する。
「承知しました。こちらがレオリオ・ヒーラギ様のお部屋の鍵でございます。どうぞごゆるりとお過ごしくださいませ」
鍵を受け取ったご主人様は、礼をしたままのフロントスタッフに「有難う」とひとこと言って離れた。
***
「ここがおまえらの部屋だ」
中へ入ってすぐ目を疑った。高級な宿なだけに内装はとても豪華になっていたが、そんなことはどうでも良いし、大した問題ではない。
(六つ、ある……)
ベッドが六つ、あったのだ。ここにいる全員分のベッドだ。俺たち以外に誰かを連れてくるのかと一瞬考えもしたが、ご主人様は手に持っていた麻袋をドサッと端に置くと、袋を抱えていた方の肩を回して解して、直後脱力するようにやや猫背になっているし、室内を歩く足取りは気怠げで、これから人を呼ぶような感じはない。
ベッドで寝ていた頃の記憶や感触を思い出してみる。しかし、時間と共に段々と忘れてしまっていたようで、記憶に靄がかかる。だが、よく眠れていたということだけは、何となく覚えている。
(久々にベッドの上で眠れるのだろうか……?)
刹那の欲と希望が頭を過ったが、奴隷の立場で何を考えているんだ、とフードの上から頭をがしがしと乱暴に掻いて甘い考えを捨てる。
その後、メシにするか風呂にするかとご主人様が聞いてきた。だが、ご主人様の腹の虫によって食事をすることに決まり、戸惑いながらも俺たちはご主人様と同じテーブルの席についた。
テーブル上には屋台で買った酒のつまみになりそうなものが、どっさりと山のように置かれていた。一体どんなものを買ってきたのだろう、と鼻先をぴくりと動かす。
「………⁉︎」
まさかと思い、焦るように串肉一本を手に取り見てみる。
「これは……全て魔物肉、ですか?」
ブリキの人形がギギギとぎこちなく首を動かすように、恐る恐る俺はご主人様に聞く。
「そうだ。全て屋台で買ってきた。あぁ、それと、俺は他種族についての知識があまりない。種族や風習的に食えない物があったら言ってくれ」
(………はぁ?)
食えない物があったら言ってくれ……だと? ということは、これを俺たちが? 食べるのか? 奴隷の俺たちが、この高級料理を?
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