【ライト版】元死にたがりは、異世界で奴隷達と自由気ままに生きていきます。

産屋敷 九十九

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第4章 奴隷と暮らす

第22話

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「王都までの距離が徒歩十五分以内、大通りから一本入ったところのあたりの資料を探して分けてくれ」というご主人様の指示に従って俺たちは資料を漁る。

 王都からの距離が近ければ近いほど利便性が高いために値が張る。しかも人気だからその条件の家の資料があるのかは、わからなかったが、何とか三枚見つけ出すことができた。

 すると、ご主人様は麻袋からノートとつけペン、ボトルインクを取り出して、何かを書き出していく。

 書き終わると、そのノートの向きを変えて俺たちに見えるように差し出した。

「こっちの資料からA、B、Cとして……」とペン先で、ご主人様が資料を示す。

「王都までの距離、綺麗さ、庭、部屋数で比較すると、この家が条件に合いそうだな。なぁ鬼人、この地下室は? 普段は普通の部屋を使って、力のコントロールがしにくい時だけここを使ったらどうだ? どうせならここも自分の部屋にしてしまいえばいい」

「……いいのか?」

 鬼人は、ボルドーの瞳を丸くした。

「部屋は余ってるんだ。好きに使えば良いさ。まぁ、買うかどうかは欠陥住宅かどうか調べてからだがな」

 フードから覗くご主人様の口角は、不敵な笑みを見せていた。

 俺たちの希望や意見を聞くのに、ご主人様の希望は、この家選びにあまり反映されていないように思えて、それが少し気になった。

       
***


 Bの資料の不動産を訪ねてみれば、カウンターにいた若い男の業者が慌てた様子で、奥の部屋へ引っ込んだ。中から出てきたのは、中年小太りの男だ。服装が他の業者とは違う。恐らくここの責任者なのだろう。

(金の匂いを嗅ぎつけてきたか)

 それから、資料の家に案内されたわけだが、資料で見ていたより想像以上に広く、よく手入れがされていた。

「この屋敷はどうだ?」というご主人様の問いに、俺たちはここがいいという反応を示すが、対してご主人様は特に感想を言うこともなく、少し考える素振りをして麻袋から何かを取り出し、俺たちに一粒ずつ渡してきた。赤い実だ。

(ケシの実?)

 よく料理に使われるものだ。普段、調味料と一緒にキッチンへ置かれているものを、なぜ持ち歩いているのか……。

(まさか……⁉︎)

 これで体臭を消していた? ケシの実の使い道が体臭を消すのに使えるとは思いもしなかった。

「何故、ケシの実を───?」


───持ち歩いているのですか。


 これは家とは関係のない話だ、と俺は続く言葉を呑み込んだ。

「ケシの実であることは重要ではない。丸いのが重要なんだ。今から各部屋に行って、実を置いてみてほしい。それで、実が転がった部屋が有れば教えてくれ。あと、各部屋の窓を開閉し歪みがないか見てきてほしい。欠陥住宅には住みたくはないだろう?」

 ご主人様は、俺の問いを"何故、いまケシの実を渡したのか"と解釈したようで、そう答えた。

 まさか、護衛用の奴隷として買われた俺が、ちまちま各部屋に行ってはケシの実を置いたり、窓の歪みを見ることになるとは思わなかった。

 平凡な指示ばかりするご主人様に、俺は護衛としての存在意義はあるのだろうか、と少しばかり複雑な気持ちになった。


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