もしもし、こちらは『居候屋』ですが?

産屋敷 九十九

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居候屋、来たる

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その日の午後十三時頃のことである。

城島の家の電話が鳴った。番号を見て武雄は首を傾げる。見覚えのない番号だったが、取り敢えず出てみることにした。

「もしもし?」

「もしもし、城島武雄さんですか?」

聞こえてきた声の主に聞き覚えはまったくない。なのに、なぜ自分の名前を知っているのだろうか、と武雄は不信に思った。

「はい、そうですが」

「わかば警察署のものですが──」

それを聞いて見覚えのない番号ではなかったことに気がついた。ただ、その番号を武雄が忘れていただけであった。

警察署からの電話を受けてすぐ、武雄の妻である恵子けいこに電話する。連絡をとるのは二十六年ぶりくらいであったため、電話番号が変わっていないかと心配していた武雄であったが、無事につながり安堵あんどする。

武雄は恵子と途中で合流し、警察署へ訪れた。

警察署内に入ってすぐの窓口で事情を説明すれば、遺体安置室というところへ連れて行かれた。そこには、一つの台が置かれており、身体全体が真っ白な布に覆われていた。

警官が顔を覆った白い布を外す。

「ご確認ください」

武雄と恵子は一度互いに顔を見合わせると、ゆっくりとした足取りで、その台に近づく。

「和哉……和哉和哉和哉和哉和哉和哉‼︎」

「和哉ぁーーーーー‼︎」

恵子は泣き崩れ床に手をつき、武雄は和哉の頬を撫でその身体を抱きしめた。

武雄と恵子のふたりは一目見てすぐに和哉であると判断できた。そこには、紛れもなく息子の和哉の顔があったのである。悲鳴にも似たふたりの和哉を呼ぶ声が遺体安置室にしばらくの間、響き渡っていた。

あれから三十一年という月日が流れているというのに、和哉は白骨化することなく、肉体が綺麗な状態で保たれていたという。その理由は不明であった。

検視はすでに済んでおり、事故死と判定された。

「息子さんが見つかった当初、こんなものが手に握られていましたよ」

警官から渡されたのは、使い古した硬式野球ボールだった。


ボールがないと思っていたが、おまえが持っていたのか……。


それは紛れもなく、和哉が使っていたものだ。ボールには和哉の油性ペンで書いたぐちゃぐちゃのサインがあったからだ。

「和哉、おまえは、本当に野球好きだなぁ……」

武雄は思わず、ふっと息を吐いて笑った。

遺体はその日のうちにすぐに家に運ばれることになった。
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