もしもし、こちらは『居候屋』ですが?

産屋敷 九十九

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居候屋の仕事

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「ここか?」

士郎は内緒話をするような小さな声で和哉に聞いた。

「うん、父さんいつもここを通って俺の花を買いに行くんだ」

士郎と和哉は隠り世を離れ人間の住まう世界──現世うつしよへ移動していた。

和哉はともかく、士郎はあやかしである。あやかしは、体内に秘めたエネルギー量が少なければ幽霊同様に人間に認知されることはないのだが、士郎の場合はエネルギー量が多いために人間に見えてしまうのである。そのため、死んで霊となった和哉と話す時は小さな声でなければ一般の人間の目には士郎が不自然に映ってしまうことだろう。

「あ、父さん来たよ! あれだよ! あれ!」

和哉が人差し指で対象を指し、士郎のコートをくいくいと引っ張った。

「わかった、行ってくる」

和哉の父と思われる男性は、進む足を止め、ズボンの右ポケットに手を突っ込んで何かを探しているようだった。



いまだ!



「ティッシュどうぞー!」

タイミングよくポケットティッシュを差し出せば、視線を下に落としたままであった男性が顔を上げ、士郎と視線が交わる。

「ありがとう。助かるよ」

大きい腹の所為か威圧感があったが、笑ってポケットティッシュを受け取った男性を見て、気のいいおじさんだなと士郎は思った。
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