6 / 99
警視庁雑務部雑務総務課 ─職場と人物─
第四話 新人の印象 四月一日 透の視点
しおりを挟む
「本日付けで、こちらに配属されました! 高良 正人と申します! 宜しくお願い致します!」
その声に、私、四月一日 透は一瞬、目を見開いた。
一体、誰だ……?
誰だかは理解できている。彼を採用したのは、紛れもなく私自身なのだから。
しかし、情報の処理が追いついていない。面接で見た彼と今自分の目の前にいる彼では私の脳内データベースが一致しない。
自分でも驚く程に前回面接で見た彼よりもしっくりとくる印象だった。思っていた通りの体育会系で性格の真っ直ぐな好青年という印象だ。
しかし、前回会った時とは違い、話し方に不気味さはまったくなかった。本当に面接に来た奴は別人だったのでは?と思うほどだ。同時にこっちが本当の彼なのだと納得している私がいる。
だが、疑問が解消されたわけではない。今の彼からは知性が感じられなかった。
また、学歴詐称の疑いもあった。学歴詐称については面接後にもう一度、調査依頼をしたが、そういった不審な点が一切見当たらなかった。警視庁の調査だ、きっと正しい情報なのだろう。
府に落ちないもののどうにか自身に言い聞かせ完結させた。考えても解決出来ない疑問というものは世の中にごまんと存在する。気にしすぎもよくないな、と疑問を追求する思考を放棄した。
部署の雰囲気といえば、皆、今回初めての後輩をもつということもあって、彼に興味津々だった。
自己紹介では、歩君のオカマキャラと身に纏ったバスローブ、さらにウインク&投げキッスにやや後退り、顔を引きつらせていた。
うん、一般的な反応だと思うよ。
だが、バスローブからチラリと見える筋肉にはどうやら興味があるようで、食い入るように見ていた。
まぁ、様々なスポーツの分野で活躍していた彼にとっては筋肉は重要なものなのだろうね。
なんか、脳筋っぽいな、と失礼ながらにそう思った。
ソフィア君に対しては、非常に分かりやすく彼女の巨乳にチラチラと目をやっていた。少し顔も赤い。
いや、その反応、ソフィア君にもわかるよ。というか、全員察している模様。
年齢は聞くなと言いながら冷ややかな笑みを彼に向けるソフィア君の目は同時に胸を見るなと訴えかけていたが、彼は顔を蒼くし首を縦に何度も振っていた。恐らく、ソフィア君の訴えには気づいていない。
士郎君に対しては憧れの人を見るような眼差しで、目をキラキラさせながら彼は見ていた。
実に珍しい。
士郎君はいつも真顔で眉間に皺が寄りがちだから、怖がられる事が多いのに……。
その点に関しては彼はあまり気にしていないようだ。
椿君に対しては、「何故アナログロボットなんですか? AIを使わないんですか?」という質問をしてきた。
以前、椿君がAIに情報を注ぎ込み過ぎて暴走させてしまった事がきっかけだと説明すれば、「作るのが難しいからではないんですね……」と目を丸くしながら、なんとも素直で捻りのない感想が返ってきた。
彼らしい感想だと思う。
まぁ、自己紹介の様子を見るに、この部署の人間との相性はそう悪くはないだろう。
椿君はしょうがないとして、彼女とはおいおい仲良くなってもらうとしよう。
念のため、彼には聞いておかなくてはならないことがあった。
この部署が何と言われているかだ。聞いてみれば、彼は知っていたようだ。
「給料泥棒の部署と聞きました!」って、元気よく答えてくれた。
いや、そこは元気よく答えなくていいとこだよ正人君。
と突っ込みたいところだが、あまりにも純粋な笑顔を私に向けてくるので思わず言葉を呑み込んでしまった。
「事件が起こればやる時はやるんだよ」と一応いっておくが、バスローブを来た歩君は鏡の前でひたすらポージングをとっており、ソフィア君は棒の付いた飴を食べながらネイルをしており、士郎君は考える人のポーズで眉間に皺を寄せながら寝ている。
それを私と正人君が見ていた。
コレはヤバイぞ。
思わず、目と口の端がピクピク引きつる。
徐々に正人君のこの部署に対する不安度メーターが上昇しているのを感じる。
それは気のせいではないはずだ。この所為で、「やっぱり、ここ辞めます」って言われたら、公安総務課長にキスまでしたのに水の泡になってしまう⁉︎
「やる時は、やるんだよ! うちの子たちは!」と、私は気迫で言い聞かせる他なかった。
私は、一通り大まかな部署の説明を終えた。
正人君は、用意された机やロッカーに書類や荷物をしまい、ひと息ついていた。
ソフィア君や歩君、士郎君は後輩が出来たことが嬉しいのか、何やら色々話しかけていた。
椿君も普段はあまり会話に参加しないのに、話していたのが今日一番の驚きになるかもしれない。
彼女もまた、後輩が出来たのが嬉しかったのだろう。
しかし、今日一番の驚きを上回り、ある疑念がそれを塗り潰してしまった。
それはソフィア君と正人君の会話にあった。
***
「正人くんさー?」
「はい?」
「何で魂、二つ持ってんの?」
「……は?」
「もしかして、転生者か何かなの? きみも能力者?」
「え? すみません、仰っている意味がわからないのですが……」
「あーっとね、言ってなかったね。私、霊能力者なんだー」
***
──「何で魂、二つ持ってんの?」──
ソフィア君は霊能力者だ。それも、かなり有能な。彼女はいつも役に立たない能力だと言うが、霊能力で感知した霊が自身の遺体場所を示すこともあり、行方不明者の安否確認では大いに助かっている。
そのソフィア君が言ったのだ。
私は放棄した疑念を追求する思考をかき集め、念頭に置いておくことにした。
今はまだ明らかにならずとも、いずれ明らかになる日が来るだろう。
彼がアノ事件の関係者かどうかについても……。
──「え? すみません、仰っている意味がわからないのですが……」──
ソフィアの問いにそう返した正人の表情は透が面接で不気味さを抱いた別人の表情をしてしいたことは、彼は知る由もない。
その声に、私、四月一日 透は一瞬、目を見開いた。
一体、誰だ……?
誰だかは理解できている。彼を採用したのは、紛れもなく私自身なのだから。
しかし、情報の処理が追いついていない。面接で見た彼と今自分の目の前にいる彼では私の脳内データベースが一致しない。
自分でも驚く程に前回面接で見た彼よりもしっくりとくる印象だった。思っていた通りの体育会系で性格の真っ直ぐな好青年という印象だ。
しかし、前回会った時とは違い、話し方に不気味さはまったくなかった。本当に面接に来た奴は別人だったのでは?と思うほどだ。同時にこっちが本当の彼なのだと納得している私がいる。
だが、疑問が解消されたわけではない。今の彼からは知性が感じられなかった。
また、学歴詐称の疑いもあった。学歴詐称については面接後にもう一度、調査依頼をしたが、そういった不審な点が一切見当たらなかった。警視庁の調査だ、きっと正しい情報なのだろう。
府に落ちないもののどうにか自身に言い聞かせ完結させた。考えても解決出来ない疑問というものは世の中にごまんと存在する。気にしすぎもよくないな、と疑問を追求する思考を放棄した。
部署の雰囲気といえば、皆、今回初めての後輩をもつということもあって、彼に興味津々だった。
自己紹介では、歩君のオカマキャラと身に纏ったバスローブ、さらにウインク&投げキッスにやや後退り、顔を引きつらせていた。
うん、一般的な反応だと思うよ。
だが、バスローブからチラリと見える筋肉にはどうやら興味があるようで、食い入るように見ていた。
まぁ、様々なスポーツの分野で活躍していた彼にとっては筋肉は重要なものなのだろうね。
なんか、脳筋っぽいな、と失礼ながらにそう思った。
ソフィア君に対しては、非常に分かりやすく彼女の巨乳にチラチラと目をやっていた。少し顔も赤い。
いや、その反応、ソフィア君にもわかるよ。というか、全員察している模様。
年齢は聞くなと言いながら冷ややかな笑みを彼に向けるソフィア君の目は同時に胸を見るなと訴えかけていたが、彼は顔を蒼くし首を縦に何度も振っていた。恐らく、ソフィア君の訴えには気づいていない。
士郎君に対しては憧れの人を見るような眼差しで、目をキラキラさせながら彼は見ていた。
実に珍しい。
士郎君はいつも真顔で眉間に皺が寄りがちだから、怖がられる事が多いのに……。
その点に関しては彼はあまり気にしていないようだ。
椿君に対しては、「何故アナログロボットなんですか? AIを使わないんですか?」という質問をしてきた。
以前、椿君がAIに情報を注ぎ込み過ぎて暴走させてしまった事がきっかけだと説明すれば、「作るのが難しいからではないんですね……」と目を丸くしながら、なんとも素直で捻りのない感想が返ってきた。
彼らしい感想だと思う。
まぁ、自己紹介の様子を見るに、この部署の人間との相性はそう悪くはないだろう。
椿君はしょうがないとして、彼女とはおいおい仲良くなってもらうとしよう。
念のため、彼には聞いておかなくてはならないことがあった。
この部署が何と言われているかだ。聞いてみれば、彼は知っていたようだ。
「給料泥棒の部署と聞きました!」って、元気よく答えてくれた。
いや、そこは元気よく答えなくていいとこだよ正人君。
と突っ込みたいところだが、あまりにも純粋な笑顔を私に向けてくるので思わず言葉を呑み込んでしまった。
「事件が起こればやる時はやるんだよ」と一応いっておくが、バスローブを来た歩君は鏡の前でひたすらポージングをとっており、ソフィア君は棒の付いた飴を食べながらネイルをしており、士郎君は考える人のポーズで眉間に皺を寄せながら寝ている。
それを私と正人君が見ていた。
コレはヤバイぞ。
思わず、目と口の端がピクピク引きつる。
徐々に正人君のこの部署に対する不安度メーターが上昇しているのを感じる。
それは気のせいではないはずだ。この所為で、「やっぱり、ここ辞めます」って言われたら、公安総務課長にキスまでしたのに水の泡になってしまう⁉︎
「やる時は、やるんだよ! うちの子たちは!」と、私は気迫で言い聞かせる他なかった。
私は、一通り大まかな部署の説明を終えた。
正人君は、用意された机やロッカーに書類や荷物をしまい、ひと息ついていた。
ソフィア君や歩君、士郎君は後輩が出来たことが嬉しいのか、何やら色々話しかけていた。
椿君も普段はあまり会話に参加しないのに、話していたのが今日一番の驚きになるかもしれない。
彼女もまた、後輩が出来たのが嬉しかったのだろう。
しかし、今日一番の驚きを上回り、ある疑念がそれを塗り潰してしまった。
それはソフィア君と正人君の会話にあった。
***
「正人くんさー?」
「はい?」
「何で魂、二つ持ってんの?」
「……は?」
「もしかして、転生者か何かなの? きみも能力者?」
「え? すみません、仰っている意味がわからないのですが……」
「あーっとね、言ってなかったね。私、霊能力者なんだー」
***
──「何で魂、二つ持ってんの?」──
ソフィア君は霊能力者だ。それも、かなり有能な。彼女はいつも役に立たない能力だと言うが、霊能力で感知した霊が自身の遺体場所を示すこともあり、行方不明者の安否確認では大いに助かっている。
そのソフィア君が言ったのだ。
私は放棄した疑念を追求する思考をかき集め、念頭に置いておくことにした。
今はまだ明らかにならずとも、いずれ明らかになる日が来るだろう。
彼がアノ事件の関係者かどうかについても……。
──「え? すみません、仰っている意味がわからないのですが……」──
ソフィアの問いにそう返した正人の表情は透が面接で不気味さを抱いた別人の表情をしてしいたことは、彼は知る由もない。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】ドアマットに気付かない系夫の謝罪は死んだ妻には届かない
堀 和三盆
恋愛
一年にわたる長期出張から戻ると、愛する妻のシェルタが帰らぬ人になっていた。流行病に罹ったらしく、感染を避けるためにと火葬をされて骨になった妻は墓の下。
信じられなかった。
母を責め使用人を責めて暴れ回って、僕は自らの身に降りかかった突然の不幸を嘆いた。まだ、結婚して3年もたっていないというのに……。
そんな中。僕は遺品の整理中に隠すようにして仕舞われていた妻の日記帳を見つけてしまう。愛する妻が最後に何を考えていたのかを知る手段になるかもしれない。そんな軽い気持ちで日記を開いて戦慄した。
日記には妻がこの家に嫁いでから病に倒れるまでの――母や使用人からの壮絶な嫌がらせの数々が綴られていたのだ。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
「お前みたいな卑しい闇属性の魔女など側室でもごめんだ」と言われましたが、私も殿下に嫁ぐ気はありません!
野生のイエネコ
恋愛
闇の精霊の加護を受けている私は、闇属性を差別する国で迫害されていた。いつか私を受け入れてくれる人を探そうと夢に見ていたデビュタントの舞踏会で、闇属性を差別する王太子に罵倒されて心が折れてしまう。
私が国を出奔すると、闇精霊の森という場所に住まう、不思議な男性と出会った。なぜかその男性が私の事情を聞くと、国に与えられた闇精霊の加護が消滅して、国は大混乱に。
そんな中、闇精霊の森での生活は穏やかに進んでいく。
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
小さなパン屋の恋物語
あさの紅茶
ライト文芸
住宅地にひっそりと佇む小さなパン屋さん。
毎日美味しいパンを心を込めて焼いている。
一人でお店を切り盛りしてがむしゃらに働いている、そんな毎日に何の疑問も感じていなかった。
いつもの日常。
いつものルーチンワーク。
◆小さなパン屋minamiのオーナー◆
南部琴葉(ナンブコトハ) 25
早瀬設計事務所の御曹司にして若き副社長。
自分の仕事に誇りを持ち、建築士としてもバリバリ働く。
この先もずっと仕事人間なんだろう。
別にそれで構わない。
そんな風に思っていた。
◆早瀬設計事務所 副社長◆
早瀬雄大(ハヤセユウダイ) 27
二人の出会いはたったひとつのパンだった。
**********
作中に出てきます三浦杏奈のスピンオフ【そんな恋もありかなって。】もどうぞよろしくお願い致します。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる