警視庁雑務部雑務総務課〜父の無実の罪を晴らすため就職しました〜

産屋敷 九十九

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警視庁雑務部雑務総務課 ─職場と人物─

第四話 新人の印象 四月一日 透の視点

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「本日付けで、こちらに配属されました! 高良 正人と申します! 宜しくお願い致します!」

その声に、私、四月一日 透は一瞬、目を見開いた。


一体、誰だ……?


誰だかは理解できている。彼を採用したのは、紛れもなく私自身なのだから。

しかし、情報の処理が追いついていない。面接で見た彼と今自分の目の前にいる彼では私の脳内データベースが一致しない。

自分でも驚く程に前回面接で見た彼よりもしっくりとくる印象だった。思っていた通りの体育会系で性格の真っ直ぐな好青年という印象だ。

しかし、前回会った時とは違い、話し方に不気味さはまったくなかった。本当に面接に来た奴は別人だったのでは?と思うほどだ。同時にこっちが本当の彼なのだと納得している私がいる。

だが、疑問が解消されたわけではない。今の彼からは知性が感じられなかった。

また、学歴詐称の疑いもあった。学歴詐称については面接後にもう一度、調査依頼をしたが、そういった不審な点が一切見当たらなかった。警視庁の調査だ、きっと正しい情報なのだろう。
 
府に落ちないもののどうにか自身に言い聞かせ完結させた。考えても解決出来ない疑問というものは世の中にごまんと存在する。気にしすぎもよくないな、と疑問を追求する思考を放棄した。


部署の雰囲気といえば、皆、今回初めての後輩をもつということもあって、彼に興味津々だった。
自己紹介では、歩君のオカマキャラと身に纏ったバスローブ、さらにウインク&アンド投げキッスにやや後退り、顔を引きつらせていた。


うん、一般的な反応だと思うよ。


だが、バスローブからチラリと見える筋肉にはどうやら興味があるようで、食い入るように見ていた。


まぁ、様々なスポーツの分野で活躍していた彼にとっては筋肉は重要なものなのだろうね。


なんか、脳筋っぽいな、と失礼ながらにそう思った。

ソフィア君に対しては、非常に分かりやすく彼女の巨乳にチラチラと目をやっていた。少し顔も赤い。


いや、その反応、ソフィア君にもわかるよ。というか、全員察している模様。


年齢は聞くなと言いながら冷ややかな笑みを彼に向けるソフィア君の目は同時に胸を見るなと訴えかけていたが、彼は顔を蒼くし首を縦に何度も振っていた。恐らく、ソフィア君の訴えには気づいていない。

士郎君に対しては憧れの人を見るような眼差しで、目をキラキラさせながら彼は見ていた。

実に珍しい。
士郎君はいつも真顔で眉間に皺が寄りがちだから、怖がられる事が多いのに……。

その点に関しては彼はあまり気にしていないようだ。

椿君に対しては、「何故アナログロボットなんですか? AIを使わないんですか?」という質問をしてきた。
以前、椿君がAIに情報を注ぎ込み過ぎて暴走させてしまった事がきっかけだと説明すれば、「作るのが難しいからではないんですね……」と目を丸くしながら、なんとも素直で捻りのない感想が返ってきた。


彼らしい感想だと思う。


まぁ、自己紹介の様子を見るに、この部署の人間との相性はそう悪くはないだろう。
椿君はしょうがないとして、彼女とはおいおい仲良くなってもらうとしよう。

念のため、彼には聞いておかなくてはならないことがあった。
この部署が何と言われているかだ。聞いてみれば、彼は知っていたようだ。
「給料泥棒の部署と聞きました!」って、元気よく答えてくれた。


いや、そこは元気よく答えなくていいとこだよ正人君。


と突っ込みたいところだが、あまりにも純粋な笑顔を私に向けてくるので思わず言葉を呑み込んでしまった。

「事件が起こればやる時はやるんだよ」と一応いっておくが、バスローブを来た歩君は鏡の前でひたすらポージングをとっており、ソフィア君は棒の付いた飴を食べながらネイルをしており、士郎君は考える人のポーズで眉間に皺を寄せながら寝ている。
それを私と正人君が見ていた。


コレはヤバイぞ。


思わず、目と口の端がピクピク引きつる。
徐々に正人君のこの部署に対する不安度メーターが上昇しているのを感じる。    
 
それは気のせいではないはずだ。この所為で、「やっぱり、ここ辞めます」って言われたら、公安総務課長にキスまでしたのに水の泡になってしまう⁉︎

「やる時は、やるんだよ! うちの子たちは!」と、私は気迫で言い聞かせる他なかった。



私は、一通り大まかな部署の説明を終えた。
正人君は、用意された机やロッカーに書類や荷物をしまい、ひと息ついていた。

ソフィア君や歩君、士郎君は後輩が出来たことが嬉しいのか、何やら色々話しかけていた。
椿君も普段はあまり会話に参加しないのに、話していたのが今日一番の驚きになるかもしれない。
彼女もまた、後輩が出来たのが嬉しかったのだろう。
 


しかし、今日一番の驚きを上回り、ある疑念がそれを塗り潰してしまった。

それはソフィア君と正人君の会話にあった。


***


「正人くんさー?」

「はい?」

「何で魂、二つ持ってんの?」

「……は?」

「もしかして、転生者か何かなの? きみも能力者?」

「え? すみません、仰っている意味がわからないのですが……」

「あーっとね、言ってなかったね。私、霊能力者なんだー」


***


──「何で魂、二つ持ってんの?」──

ソフィア君は霊能力者だ。それも、かなり有能な。彼女はいつも役に立たない能力だと言うが、霊能力で感知した霊が自身の遺体場所を示すこともあり、行方不明者の安否確認では大いに助かっている。
 
そのソフィア君が言ったのだ。
私は放棄した疑念を追求する思考をかき集め、念頭に置いておくことにした。


今はまだ明らかにならずとも、いずれ明らかになる日が来るだろう。
 


彼がアノ事件の関係者かどうかについても……。










──「え? すみません、仰っている意味がわからないのですが……」──



ソフィアの問いにそう返した正人の表情かおは透が面接で不気味さを抱いた別人の表情かおをしてしいたことは、彼は知る由もない。






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