44 / 99
File1 自覚無き殺人犯
第三十三話 逮捕の裏側16 柔軟な思考の弟
しおりを挟む
精神干渉する能力というのは一般的には一人に対して適応されるものである。
感覚置換もまた然り。
しかし弟は、
『二人まとめて代わってやるよッ!』
その固定概念にとらわれてはいなかった。
自ら発した声と同時に弟の視界の半分は水の中、もう半分は弟自身の部屋を映し出す。
弟は正人と服部を同時に置換したのだ。
服部に完全に自由と意識を奪われた正人には何も見えていない。その光景を共有しているのは弟と服部の二人であった。
直後、
「ガッハッ!」
正人の肉体を乗っ取った服部が身体を折り曲げ、胸に感じる苦しさで咳をした。床に落ちたのは紛れもなく正人の口から出た赤い血だった。
瞬間、正人の身体から鉛のような重さが抜け落ち正人は意識を取り戻し、服部の霊体から解放されたことに気がついた。
弟はこれを狙っていたのだ。
精神干渉の対象人数は一人。何故、一人とされているのか。それは発動した本人と干渉した相手に負担がかかり正確な能力を発揮することが出来ず失敗し、吐血するからだ。
弟は既に実験済みであった。
能力者に対して実行するのは今回が初めてであったが、推測はしていた。
"精神干渉系の能力者同士がぶつかり合ったら力が反発して身体にかなり負担が掛かるんじゃね?"
"複数の非能力者に対して行った場合よりもかなりの負担が"
弟の推測どおり、力が反発し服部の霊体が弾き飛ばされた。
当然、弟も無事では済まなかったわけで自室のシングルベッドに手を着いて片手で胸を押さえ数度咳き込むと真っ白なシーツを赤く染めた。
「ゴッホゴホ!」
霊体化した服部は自身の身体に戻り、床に膝をついた体勢で咳をし、赤い血で床を汚した。
「な、んなんだよ。おまえは!」
苛立ちと怒りを露わにし、血で汚れた口を袖で拭いながら服部は立ち上がった。声が震えている。
正人はゆらりと折り曲げていた腰を伸ばし立ち上がった。
両者とも、肩を上下させ息をする。
服部の能力と弟の感覚置換の影響だろう。
弟は能力を置換から共有に切り替え、正人の口から服部を煽るような言葉が発せられた。
「やっぱり、おまえが殺人犯じゃねぇーか。とっとと認めて自首しやがれ!」
"おまえがどうこうしようが証拠はもう揃ってるし、逃げらんねぇーよ?"
感覚置換もまた然り。
しかし弟は、
『二人まとめて代わってやるよッ!』
その固定概念にとらわれてはいなかった。
自ら発した声と同時に弟の視界の半分は水の中、もう半分は弟自身の部屋を映し出す。
弟は正人と服部を同時に置換したのだ。
服部に完全に自由と意識を奪われた正人には何も見えていない。その光景を共有しているのは弟と服部の二人であった。
直後、
「ガッハッ!」
正人の肉体を乗っ取った服部が身体を折り曲げ、胸に感じる苦しさで咳をした。床に落ちたのは紛れもなく正人の口から出た赤い血だった。
瞬間、正人の身体から鉛のような重さが抜け落ち正人は意識を取り戻し、服部の霊体から解放されたことに気がついた。
弟はこれを狙っていたのだ。
精神干渉の対象人数は一人。何故、一人とされているのか。それは発動した本人と干渉した相手に負担がかかり正確な能力を発揮することが出来ず失敗し、吐血するからだ。
弟は既に実験済みであった。
能力者に対して実行するのは今回が初めてであったが、推測はしていた。
"精神干渉系の能力者同士がぶつかり合ったら力が反発して身体にかなり負担が掛かるんじゃね?"
"複数の非能力者に対して行った場合よりもかなりの負担が"
弟の推測どおり、力が反発し服部の霊体が弾き飛ばされた。
当然、弟も無事では済まなかったわけで自室のシングルベッドに手を着いて片手で胸を押さえ数度咳き込むと真っ白なシーツを赤く染めた。
「ゴッホゴホ!」
霊体化した服部は自身の身体に戻り、床に膝をついた体勢で咳をし、赤い血で床を汚した。
「な、んなんだよ。おまえは!」
苛立ちと怒りを露わにし、血で汚れた口を袖で拭いながら服部は立ち上がった。声が震えている。
正人はゆらりと折り曲げていた腰を伸ばし立ち上がった。
両者とも、肩を上下させ息をする。
服部の能力と弟の感覚置換の影響だろう。
弟は能力を置換から共有に切り替え、正人の口から服部を煽るような言葉が発せられた。
「やっぱり、おまえが殺人犯じゃねぇーか。とっとと認めて自首しやがれ!」
"おまえがどうこうしようが証拠はもう揃ってるし、逃げらんねぇーよ?"
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
今さら「間違いだった」? ごめんなさい、私、もう王子妃なんですけど
reva
恋愛
「貴族にふさわしくない」そう言って、私を蔑み婚約を破棄した騎士様。
私はただの商人の娘だから、仕方ないと諦めていたのに。
偶然出会った隣国の王子は、私をありのまま愛してくれた。
そして私は、彼の妃に――。
やがて戦争で窮地に陥り、助けを求めてきた騎士様の国。
外交の場に現れた私の姿に、彼は絶句する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる