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4 カリスト国に連れて来られた少女
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金髪がこの王宮に来たのは三年前。
父であるカルダンテ王が、隣国であるシーセント国を急襲し属国にした際、連れて来た少女だった。
戦から帰還した父王は、返り血を浴びて血だらけだった。
シャルリンテの部屋に一人の少女を投げ込むと言った。
「この女…シーセントの高位貴族のようだが、何せ声が出ないようで…。ただ、口うるさいお前には丁度いいだろう?すぐに女中や侍女と喧嘩して解雇してしまうし…。喋れない女とは喧嘩しようがないだろうから…」
シャルリンテは寝台の上に寝っ転がって本を読んでいた。
その本から少しだけ目を離し、ちらりと少女を見た。
「気に入らないのなら、部下に戦利品として与える…。この美貌だから喜ばれる。髪は乱闘の際、切り落とされたのか、ちと…短いが…な」
自分より背は高いが痩せていて色白。
年の頃は同じか年下。
さらりとした耳が隠れるほどの長さの金髪。
アイスブルーの透き通るような瞳…。
シャム猫を思わせる、線の細い儚げな美少女だった。
シャルリンテは、皿に載っている甘いお菓子を口に放り込みながら、のっそり起き上がった。
「──もらう。綺麗だから、着せ替えして遊ぶわ」
それからは適当に「スーリ」と名付けたこの娘を、おもちゃのように扱った。
一日に何回もドレスを着替えさせたり、派手な化粧を施してみたり…。
虫の居所が悪ければ、自分の持っている宝石箱をわざとぶちまけて、それを拾わせたり…。
残虐と言われていた父王を尊敬していた自分は、父王の毒を何百倍かに薄めた事を、スーリにやっていいのだと思っていた。
また、それを止める者もいなかった。
そのうち、異性に興味を持ち出したシャルリンテは、好意を抱いた騎士や高官、貴族、他国の王子と交際したくなった。
そして熱い手紙をしたため、伝書鳩がわりにスーリに手紙を託すようになった。
しかし、手紙を受け取った相手は、手紙を渡しに行ったスーリに、皆、恋をした。
手紙の返事を心待ちにしていたシャルリンテの前に、相手の男が現れて、こう言うのだ。
「あなたの侍女と、お付き合いさせていただけないだろうか?」
そう、毎度のように懇願しに来る。
それが続いたある日、堪忍袋の緒が切れたシャルリンテは、スーリを怒鳴りつけた。
「あんたなんか、殺してやりたい……!!」
そう言って池に突き落とした。
溺れて沈んでいくスーリを見て、胸がスッとした。
しかし、次の瞬間、無意識のうちに、自分が池に飛び込みスーリを引っ張り上げていた。
そして岸までスーリを押し上げ、今度は自分が本格的に溺れ、意識を失った。
父であるカルダンテ王が、隣国であるシーセント国を急襲し属国にした際、連れて来た少女だった。
戦から帰還した父王は、返り血を浴びて血だらけだった。
シャルリンテの部屋に一人の少女を投げ込むと言った。
「この女…シーセントの高位貴族のようだが、何せ声が出ないようで…。ただ、口うるさいお前には丁度いいだろう?すぐに女中や侍女と喧嘩して解雇してしまうし…。喋れない女とは喧嘩しようがないだろうから…」
シャルリンテは寝台の上に寝っ転がって本を読んでいた。
その本から少しだけ目を離し、ちらりと少女を見た。
「気に入らないのなら、部下に戦利品として与える…。この美貌だから喜ばれる。髪は乱闘の際、切り落とされたのか、ちと…短いが…な」
自分より背は高いが痩せていて色白。
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さらりとした耳が隠れるほどの長さの金髪。
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シャム猫を思わせる、線の細い儚げな美少女だった。
シャルリンテは、皿に載っている甘いお菓子を口に放り込みながら、のっそり起き上がった。
「──もらう。綺麗だから、着せ替えして遊ぶわ」
それからは適当に「スーリ」と名付けたこの娘を、おもちゃのように扱った。
一日に何回もドレスを着替えさせたり、派手な化粧を施してみたり…。
虫の居所が悪ければ、自分の持っている宝石箱をわざとぶちまけて、それを拾わせたり…。
残虐と言われていた父王を尊敬していた自分は、父王の毒を何百倍かに薄めた事を、スーリにやっていいのだと思っていた。
また、それを止める者もいなかった。
そのうち、異性に興味を持ち出したシャルリンテは、好意を抱いた騎士や高官、貴族、他国の王子と交際したくなった。
そして熱い手紙をしたため、伝書鳩がわりにスーリに手紙を託すようになった。
しかし、手紙を受け取った相手は、手紙を渡しに行ったスーリに、皆、恋をした。
手紙の返事を心待ちにしていたシャルリンテの前に、相手の男が現れて、こう言うのだ。
「あなたの侍女と、お付き合いさせていただけないだろうか?」
そう、毎度のように懇願しに来る。
それが続いたある日、堪忍袋の緒が切れたシャルリンテは、スーリを怒鳴りつけた。
「あんたなんか、殺してやりたい……!!」
そう言って池に突き落とした。
溺れて沈んでいくスーリを見て、胸がスッとした。
しかし、次の瞬間、無意識のうちに、自分が池に飛び込みスーリを引っ張り上げていた。
そして岸までスーリを押し上げ、今度は自分が本格的に溺れ、意識を失った。
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