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14 盗み聞き
ひと気のある廊下まで、やっとたどり着いたスピナが、開いているドアの隙間から
聞き覚えのある人の声を聞いたのは偶然だった。
立ち聞きは見苦しい。
そんな事は公爵夫人でなくても人として当たり前だ。
がっ、その声の主が自分の一番愛しい人の声で
自分の事を話しているとなれば話は別だ。
すすすっと近づくと、ドア越しに耳を澄ます。
「王がご存知の通り、あの娘は結婚相手がおらず憐れで目に余りましたので
私が拾いました。」
ズキン…。自分の事だ。
その言葉は間違っていない。
おそらくそうだろうと思っていたから、驚きはさしてなかった。
同情があったに違いない。
ともあれ、ルドンの情が少しは動いたという事。
スピナは
自分を落ち着かせる為、胸の前で手を組む。
何に祈っているというのか。
「ふっ、食えない奴め。…で、どうだ。」
「…と申しますと?」
眉一つ動かさず、ルドンは聞き返す。
「皆まで言わせるのか?そうだな。結婚してからお前はどんな仕事の時も
討伐の時も、すぐに帰る。しかもかなり早く…。以前はそうではなかった。
だからみんな噂している。相手は相当な床上手に違いないとな!ハハハッ…」
下品な質問だが、王特有の嫌みのない笑いでカラカラとしている。
男性同士、結婚したての者によく交わされる会話なのだろうか…?
ドキドキしながら次の答えを待つ。
昨夜も愛していると言って何度もスピナを抱いたのだ。
…もしかしてこちらが赤面するような返事を…。
「つまらない…と答えれば正しいのか…。何のへんてつもない…。」
ルドンの冷徹な言葉に、スピナは冷水を浴びせられたような気がした。
「ハハハッ…!これはこれは予想外に手厳しい。そうは言ってもお前が以前
討伐の帰りに抱いた女達よりは相当いいんだろう?」
「…いえ、どの女もさして違いはありません…。しいて言うならスピナが
処女だった事だけが興奮材料ではありましたが…。
散々私が抱きましたので、もうその辺の女性と変わりありません。」
「お前、それを奥方のスピナに聞かれたら離縁ものだぞ…。」
先ほどまでは面白がっていたのに、さすがの王もたしなめるように言う。
「だが解せん。私が、鼻もひっかけなかった女のどこがよくて
今も一緒にいるのか?
公爵の位を手に入れたかったのは解るが、結婚から三ヶ月、もうじき仮ではなく
正式な爵位譲渡書も手にするだろう。もう、奥方がさわいでも爵位はお前のもの。
ご機嫌うかがいは大概にしたらいいんじゃないか?」
黙って聞いているルドンに王は続ける。
「つまらない女といるのは人生の無駄。好きでもないなら
慰謝料を払って離縁すればいいのではないか?それぐらいの余裕はあるだろう。
―─そもそも、少し待てば優秀なお前に爵位を与えようと考えていた。
なぜ待てなかった?
そうすれば私が捨て置いた女など拾わなくてすんだだろうに…。」
「…そうですね。爵位の件はもっと前にしていただれば話が早く
こんな回り道をしなくてもよかったと思います。」
「回り道も時には栄養になる…と言っていたのは、じぃ先生だったか…。
そうそうじぃ先生と言えば…」
話は続いたがスピナの頭には何も入ってこなかった。
さっき王も言っていた爵位譲渡証明書。
スピナ側から取り消しを申し出なければ、正式にルドンが公爵として認められる。
毎晩、スピナが申し出ないように抱いた。
もうスピナは処女ではない…。
もう騙す必要がなくなった女を、今後ルドンはどう扱うのか…。
足に力が入らなくなったスピナは、もたれかかっていた壁に背中をつけたまま
ずるずるとしゃがみこんだ。
聞き覚えのある人の声を聞いたのは偶然だった。
立ち聞きは見苦しい。
そんな事は公爵夫人でなくても人として当たり前だ。
がっ、その声の主が自分の一番愛しい人の声で
自分の事を話しているとなれば話は別だ。
すすすっと近づくと、ドア越しに耳を澄ます。
「王がご存知の通り、あの娘は結婚相手がおらず憐れで目に余りましたので
私が拾いました。」
ズキン…。自分の事だ。
その言葉は間違っていない。
おそらくそうだろうと思っていたから、驚きはさしてなかった。
同情があったに違いない。
ともあれ、ルドンの情が少しは動いたという事。
スピナは
自分を落ち着かせる為、胸の前で手を組む。
何に祈っているというのか。
「ふっ、食えない奴め。…で、どうだ。」
「…と申しますと?」
眉一つ動かさず、ルドンは聞き返す。
「皆まで言わせるのか?そうだな。結婚してからお前はどんな仕事の時も
討伐の時も、すぐに帰る。しかもかなり早く…。以前はそうではなかった。
だからみんな噂している。相手は相当な床上手に違いないとな!ハハハッ…」
下品な質問だが、王特有の嫌みのない笑いでカラカラとしている。
男性同士、結婚したての者によく交わされる会話なのだろうか…?
ドキドキしながら次の答えを待つ。
昨夜も愛していると言って何度もスピナを抱いたのだ。
…もしかしてこちらが赤面するような返事を…。
「つまらない…と答えれば正しいのか…。何のへんてつもない…。」
ルドンの冷徹な言葉に、スピナは冷水を浴びせられたような気がした。
「ハハハッ…!これはこれは予想外に手厳しい。そうは言ってもお前が以前
討伐の帰りに抱いた女達よりは相当いいんだろう?」
「…いえ、どの女もさして違いはありません…。しいて言うならスピナが
処女だった事だけが興奮材料ではありましたが…。
散々私が抱きましたので、もうその辺の女性と変わりありません。」
「お前、それを奥方のスピナに聞かれたら離縁ものだぞ…。」
先ほどまでは面白がっていたのに、さすがの王もたしなめるように言う。
「だが解せん。私が、鼻もひっかけなかった女のどこがよくて
今も一緒にいるのか?
公爵の位を手に入れたかったのは解るが、結婚から三ヶ月、もうじき仮ではなく
正式な爵位譲渡書も手にするだろう。もう、奥方がさわいでも爵位はお前のもの。
ご機嫌うかがいは大概にしたらいいんじゃないか?」
黙って聞いているルドンに王は続ける。
「つまらない女といるのは人生の無駄。好きでもないなら
慰謝料を払って離縁すればいいのではないか?それぐらいの余裕はあるだろう。
―─そもそも、少し待てば優秀なお前に爵位を与えようと考えていた。
なぜ待てなかった?
そうすれば私が捨て置いた女など拾わなくてすんだだろうに…。」
「…そうですね。爵位の件はもっと前にしていただれば話が早く
こんな回り道をしなくてもよかったと思います。」
「回り道も時には栄養になる…と言っていたのは、じぃ先生だったか…。
そうそうじぃ先生と言えば…」
話は続いたがスピナの頭には何も入ってこなかった。
さっき王も言っていた爵位譲渡証明書。
スピナ側から取り消しを申し出なければ、正式にルドンが公爵として認められる。
毎晩、スピナが申し出ないように抱いた。
もうスピナは処女ではない…。
もう騙す必要がなくなった女を、今後ルドンはどう扱うのか…。
足に力が入らなくなったスピナは、もたれかかっていた壁に背中をつけたまま
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