15 / 52
15 フリード王
はやく、この場を立ち去らなければならないのは知っていた。
だが、足が動かなかった。
スピナはドアの横の廊下に座り込んでいた。
朝、ルドンと出発した時はこんな事が待ち受けているなんて思いもしなかった。
その時は、うきうきと髪飾りを選んでいた。
気がつけば、しっかり結ってもらったシニヨンのはずが、一筋の髪がみっともなく
横に垂れている。
真珠の髪飾りも取れかかっていた。
それを見て、余計に悲しくなる。
部屋の中からルドンの声が聞こえる。
「王、私は戻ります。もう茶会も始まっているから妻も会場に着いているはず…。
では。」
そう言うと、ルドンの気配が消えた。
おそらく瞬間移動を使い、会場に行ったのだろう。
スピナも魔力を持っていたが、日常生活を助ける位の微力な魔力しか
持っていない。
魔力を使ってもいない今、スピナの魔力から出ている波動だけを追って
ルドンが居場所を探すのは困難なはずだ。
ルドンが行ってしまった虚しさと、見つからなくてよかったという安心感が
スピナに広がる。
「…立ち聞きとは、ルドンの奥方もいい趣味をしている。」
よく通る、美しい声がスピナのすぐ上からした。
王だった。
王は部屋から身をのり出しスピナに語りかけていた。
スピナは手にしていた扇子をギュッと握りしめ、急いで立ち上がる。
そして狼狽を隠せない顔ですぐに二歩ほど下がる。
スピナはドレスの両端をつまみ、すっと広げ、無礼のないように頭を下げた。
王はそれを見てフンッと鼻を鳴らす。
「…今さら公爵夫人らしくしたって…。女性は盗み聞きがお好きだから…。
どうせ傷つく事になるのに…。」
王のあけすけな言葉に、スピナはこらえきれなくなって
「うっ…。」
と泣き始める。
王はそれを見て、少し言い過ぎたかと反省する。
「そなた、私と同級生だっただろう。…だから、かしこまらなくてよい。」
王はそう言うと魔力を使い、自分の身に着けていたマントを浮かせスピナの肩に
ふわりとかぶせる。
「ここの廊下は寒々しいから、いつまでもそんなドレス姿で、つっ立っていたら
体が冷える…。」
王のマントからは、スピナが嗅いだことのない
かぐわしい香のような匂いがする。
スピナは、思いもよらなかった王の優しさに触れ、王のマントに顔をうずめて
より激しく泣く…。
「…おっと鼻水…。まぁいいか…。」
だが、足が動かなかった。
スピナはドアの横の廊下に座り込んでいた。
朝、ルドンと出発した時はこんな事が待ち受けているなんて思いもしなかった。
その時は、うきうきと髪飾りを選んでいた。
気がつけば、しっかり結ってもらったシニヨンのはずが、一筋の髪がみっともなく
横に垂れている。
真珠の髪飾りも取れかかっていた。
それを見て、余計に悲しくなる。
部屋の中からルドンの声が聞こえる。
「王、私は戻ります。もう茶会も始まっているから妻も会場に着いているはず…。
では。」
そう言うと、ルドンの気配が消えた。
おそらく瞬間移動を使い、会場に行ったのだろう。
スピナも魔力を持っていたが、日常生活を助ける位の微力な魔力しか
持っていない。
魔力を使ってもいない今、スピナの魔力から出ている波動だけを追って
ルドンが居場所を探すのは困難なはずだ。
ルドンが行ってしまった虚しさと、見つからなくてよかったという安心感が
スピナに広がる。
「…立ち聞きとは、ルドンの奥方もいい趣味をしている。」
よく通る、美しい声がスピナのすぐ上からした。
王だった。
王は部屋から身をのり出しスピナに語りかけていた。
スピナは手にしていた扇子をギュッと握りしめ、急いで立ち上がる。
そして狼狽を隠せない顔ですぐに二歩ほど下がる。
スピナはドレスの両端をつまみ、すっと広げ、無礼のないように頭を下げた。
王はそれを見てフンッと鼻を鳴らす。
「…今さら公爵夫人らしくしたって…。女性は盗み聞きがお好きだから…。
どうせ傷つく事になるのに…。」
王のあけすけな言葉に、スピナはこらえきれなくなって
「うっ…。」
と泣き始める。
王はそれを見て、少し言い過ぎたかと反省する。
「そなた、私と同級生だっただろう。…だから、かしこまらなくてよい。」
王はそう言うと魔力を使い、自分の身に着けていたマントを浮かせスピナの肩に
ふわりとかぶせる。
「ここの廊下は寒々しいから、いつまでもそんなドレス姿で、つっ立っていたら
体が冷える…。」
王のマントからは、スピナが嗅いだことのない
かぐわしい香のような匂いがする。
スピナは、思いもよらなかった王の優しさに触れ、王のマントに顔をうずめて
より激しく泣く…。
「…おっと鼻水…。まぁいいか…。」
あなたにおすすめの小説
その眼差しは凍てつく刃*冷たい婚約者にウンザリしてます*
音爽(ネソウ)
恋愛
義妹に優しく、婚約者の令嬢には極寒対応。
塩対応より下があるなんて……。
この婚約は間違っている?
*2021年7月完結
これって政略結婚じゃないんですか? ー彼が指輪をしている理由ー
小田恒子
恋愛
この度、幼馴染とお見合いを経て政略結婚する事になりました。
でも、その彼の左手薬指には、指輪が輝いてます。
もしかして、これは本当に形だけの結婚でしょうか……?
表紙はぱくたそ様のフリー素材、フォントは簡単表紙メーカー様のものを使用しております。
全年齢作品です。
ベリーズカフェ公開日 2022/09/21
アルファポリス公開日 2025/06/19
作品の無断転載はご遠慮ください。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます
おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」
そう書き残してエアリーはいなくなった……
緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。
そう思っていたのに。
エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて……
※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。
【完結】妖精姫と忘れられた恋~好きな人が結婚するみたいなので解放してあげようと思います~
塩羽間つづり
恋愛
お気に入り登録やエールいつもありがとうございます!
2.23完結しました!
ファルメリア王国の姫、メルティア・P・ファルメリアは、幼いころから恋をしていた。
相手は幼馴染ジーク・フォン・ランスト。
ローズの称号を賜る名門一族の次男だった。
幼いころの約束を信じ、いつかジークと結ばれると思っていたメルティアだが、ジークが結婚すると知り、メルティアの生活は一変する。
好きになってもらえるように慣れないお化粧をしたり、着飾ったりしてみたけれど反応はいまいち。
そしてだんだんと、メルティアは恋の邪魔をしているのは自分なのではないかと思いあたる。
それに気づいてから、メルティアはジークの幸せのためにジーク離れをはじめるのだが、思っていたようにはいかなくて……?
妖精が見えるお姫様と近衛騎士のすれ違う恋のお話
切なめ恋愛ファンタジー
悪女は愛より老後を望む
きゃる
恋愛
――悪女の夢は、縁側でひなたぼっこをしながらお茶をすすること!
もう何度目だろう? いろんな国や時代に転生を繰り返す私は、今は伯爵令嬢のミレディアとして生きている。でも、どの世界にいてもいつも若いうちに亡くなってしまって、老後がおくれない。その理由は、一番初めの人生のせいだ。貧乏だった私は、言葉巧みに何人もの男性を騙していた。たぶんその中の一人……もしくは全員の恨みを買ったため、転生を続けているんだと思う。生まれ変わっても心からの愛を告げられると、その夜に心臓が止まってしまうのがお約束。
だから私は今度こそ、恋愛とは縁のない生活をしようと心に決めていた。行き遅れまであと一年! 領地の片隅で、隠居生活をするのもいいわね?
そう考えて屋敷に引きこもっていたのに、ある日双子の王子の誕生を祝う舞踏会の招待状が届く。参加が義務付けられているけれど、地味な姿で壁に貼り付いているから……大丈夫よね?
*小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<2人の仲を応援するので、どうか私を嫌わないでください>
私には子供のころから決められた許嫁がいた。ある日、久しぶりに再会した親友を紹介した私は次第に2人がお互いを好きになっていく様子に気が付いた。どちらも私にとっては大切な存在。2人から邪魔者と思われ、嫌われたくはないので、私は全力で許嫁と親友の仲を取り持つ事を心に決めた。すると彼の評判が悪くなっていき、それまで冷たかった彼の態度が軟化してきて話は意外な展開に・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
片想い婚〜今日、姉の婚約者と結婚します〜
橘しづき
恋愛
姉には幼い頃から婚約者がいた。両家が決めた相手だった。お互いの家の繁栄のための結婚だという。
私はその彼に、幼い頃からずっと恋心を抱いていた。叶わぬ恋に辟易し、秘めた想いは誰に言わず、二人の結婚式にのぞんだ。
だが当日、姉は結婚式に来なかった。 パニックに陥る両親たち、悲しげな愛しい人。そこで自分の口から声が出た。
「私が……蒼一さんと結婚します」
姉の身代わりに結婚した咲良。好きな人と夫婦になれるも、心も体も通じ合えない片想い。