王に振られた公爵令嬢は王の側近に拾われる

空田かや

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36 過ち

「愛人問題は片付いたとして…。
事の本質は、変わってはいない…スピナ…?」

王はいつの間にかスピナの座っているすぐ横に、片膝をついて座っていた。

そして、スピナの髪に触れた。

「愛人がいようがいまいが、もうそなたは
ルドンに、必要とはされていないのだろう?」

「そ…そうですが。でも……。」

スピナは王にそう言われても、レジーが
ルドンの愛人ではなかったと分かっただけで
心に、希望が生まれてしまった。

スピナは、心ここにあらずとばかりにそわそわし始める。

「スピナ…。」

スピナにはもう、王の声が耳に入ってこなかった。

王は、イラついた。

「……せめて、話している男の話は最後まで聞け…。」


それは王のいつもの癖だった。

女の機嫌を手っ取り早く取ったり
思い通りにいかない時にする方法…。

自分に注意を向けさせるように
顎を片手で掴み、ついでに口づけをする…。

王は口づけをした後、しまったと思った。

スピナは急な出来事に驚いて、目を見開き、王の青い目を見る…。

……わざとではなかった…。

その途端、スピナは夢中で王を求めキスし始める。

そもそも、学校で長い間、恋い焦がれていた相手である。
自然と、心の奥底にあった王を慕う気持ちが、湧いて出てくる…。


王は最初、反応していなかった。

むしろスピナから体を離そうと、スピナを軽く押していた。
王は、スピナがルドンの妻だと知っていた。

これから別れるとしても、まだ妻だと。

友人の女に手を出すほど、女には困っていなかった。
女が居すぎて、自分でも収拾がつかなくなるほどだ。

わざわざ面倒な肩書きの女に、同情以外で
心が揺さぶられるはずはなかった。
…けれど、ルドンの妻であるという
面倒な肩書きが、王の興味を
一番引いていた事も、事実だ。

いつも冷静なルドンが
爵位狙いとはいえ、毎日抱いた女…。
どうやって抱いたのだろう…。

いや…もしかしたら、スピナがまだ処女だという事もありえる。
形だけの妻ならば、ルドンは冷酷に放っておきそうな気もする…。
それは、抱いてみなければ分からない。

だが、最初からスピナを捨てる気など
ルドンになかった場合…。
抱いてしまえば、ややこしい事になる…。

王は、せわしく頭の中で考えながらも
キスをしていて、ある事に気がついた。

ルドンが言うほど、スピナのキスはつまらなくない…という事に。

いや……むしろ…。

長い黒茶色の髪の毛も、自分の欲情をあおる…。
そして、何よりスピナのような存在は王の心に沁みた。

スピナからは何の脅威も感じず、言う事は全てくだらない……。

日々、討伐などという殺伐とした世界に身を置き
時に、ぎすぎすした城の中にいる王にとって
スピナは新鮮だった。

この女は一人、王宮での駆け引きにも
巻き込まれず、淡々と日常を送っている…。
上流階級にいて、これ程見事に浮いているのは奇跡に近い。

……王はだんだんと、スピナを手に入れたくなってきた。

今まで欲しいと思ったものは、全て手に入れて来た。


以前ルドンが言っていた、何のへんてつもない女
というのは嘘だと知った。

……スピナを抱いたとするならば、ルドンは
この女を、抱きたくて毎日抱いていた…。

キスをしているうち、王はルドンの行動を理解し始めていた。


丹念に丹念に、ルドンはこの女を隠していた…。

自分の目に映らないように。

学生生活の長い間。

そして結婚してからも……。


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